「コレステロールと食事」 

当院において、コレステロール値の高い患者様に対する指導のなかで、
改善した症例と、上手くいかなかった症例をご紹介させて頂きます。

改善した症例：　77歳女性　身長155cm、体重38kg
病名　　高脂血症（高トリグリセリド型）
検査値　TC　262、HDL　76、　TG　180、　LDL139(計算式により)
内服薬　エパデールS（イコサペント酸エチル）内服中

体重が少ないのにTC、TG、LDL共に高値であった患者さまです。
食事調査
①　朝食：豆乳、シリアル、プルーン、お茶が定番
②　昼食：菓子パン、サラダ(50ｇ程度)
③　夕食：外食が週に3回以上、
　　　　　お肉が好物で肉料理が主体
　　　　　自宅では魚の煮付けやひじきの煮物なども食べるが回数が少ない
④　仕事柄(飲食店経営)お菓子類を味見する機会が多い
　（クッキーや、菓子パン、果物の摂取が多い）
⑤　こってりした料理が好きである。

以上のことから総摂取量は多くはないが肉類が中心で菓子類が多い。
野菜の摂取も少ないためにTG、LDLが高いと思われる。

今後の食事計画として・・・

①　仕事柄おこなっている味見を「他の人にやってもらえないか？」提案
②　1日分の目安量を示し配分、バランスを考えた魚主体の食事をお勧め。
　　また、野菜も積極的に摂取するようお話。
③　運動も少しずつ取り入れる。

以上の栄養計画を説明し、ご本人様は原因を納得され、
「味見の件は難しいですが回数は減らすようやってみます」、
「魚の割合を増やします」とのことで指導を終えました。

その結果、半年後の検査値として、TC214、HDL72、TG76、LDL127と改善し､
その後も維持を続けておられます。(アルブミン値は指導前、半年後以降も4.2をキープ)

失敗例　59歳男性　身長167cm、体重　72.9kg(標準体重：61.4kg)
病名　　糖尿病、脂質異常症
検査値　TC277　TG303　LDL164　GLU163　HbA1ｃ7.8　γ－GTP72
内服薬　経口血糖降下薬使用

BMI25.8の患者さまです
食事調査より
①　朝食：牛乳1杯
②　昼食：サンドイッチ、コロッケなど
③　夕食：ご飯1杯(4単位程度)と主菜3品以上つまみとして
　　　　（とんかつや餃子など肉類主体）　　　
④　「野菜は嫌い」だと言うことでほとんど食べない
⑤　ビール850mlを毎日飲酒、足りないときはさらに飲む

　以上のことから、夕食偏重のバランスの悪い食事に飲酒、
つまみが重なり、血糖、コレステロールを上げる原因であることを説明し、
糖尿病の交換表を使い、一日の目安量をお話ししました。
　つまみの量を減らし、野菜や大豆製品などを取り入れることを提案し、
将来心配される合併症のお話を交えながら、アルコールについても
禁酒または節酒を勧めてみました。

　患者さまは、「やってみますが、アルコールをやめるのは難しいかな」
との苦笑いで指導室を出て行きました。

結果3ヶ月後。検査結果として、
TC256、TG256、LDL159、GLU211　 HbA1ｃ7.9、γ－GTP80と効果は出ず、
その後この患者さまは外来通院もされておりません。

　今回のケースのような単回の栄養指導ではその難しさを痛感しております。
飲酒量が増えてしまう患者さまこそ、食事療法を継続していただくための
動機づけが大切です。
　複数回の栄養指導をおこない、途中経過を見ながら繰り返し指導し、
患者さまに納得していただく必要があるようです。

　最後に、コレステロールを下げるための賢い方法をご紹介します。
始められるとことろから、意識して頂けると嬉しく思います。

①　肉類の脂身は避ける
②　魚や大豆製品主体の食生活を心掛ける
③　ＥＰＡを多く含む魚（鯖や秋刀魚など）を組み合わせる
（ただし、肥満や糖尿病があれば指示カロリーの範囲内で）
④　オリーブ油など、植物性の油を使う
⑤　野菜（350ｇ/日以上）と海藻・きのこ類を積極的に摂取
⑥　外食の上手な選び方について知る
　　１．焼く､煮る､蒸す、茹でる　の調理法を選ぶ
　　２．「もったいないと思わず」に残す
　　３．麺や丼物には副菜に野菜を組み入れる
⑦　夕食よりも朝食、昼食を充実させる
⑧　「ゆっくりとよく噛んで食べる」ことを心がける
⑨　HDL（善玉）コレステロールを増やすよう、運動を心がける
※ただし、心疾患、脳血管疾患、腎疾患などのある方は
運動が薦められない場合がありますので、
担当医師に必ず相談して運動の強さを設定してください

写真：七夕の際の行事食です。彩りが良いと食欲もそそられます。
視覚でも楽しめて嬉しい気分になれると患者様に好評です。