「コレステロールが高い患者様の食事指導について」
コレステロールにも種類があります。
現在では、脂質異常症といわれており、以下が診断基準となっています。
■高LDLコレステロール血症 140mg/dL以上
■低HDLコレステロール血症 40mg/dL未満
■高中性脂肪血症 150mg/dL以上
症例呈示
51歳 男性 公務員
体格:身長 178cm 体重65kg BMI20.5
家族構成:妻・娘2人
現病歴: 脂質異常症 高尿酸血症
検査値:総Cho 247mg/dl LDL-Cho175mg/dl HDL-Cho35mg/dl中性脂肪225mg/dl
食生活
朝食: 6枚切りパン1枚 マーガリン コーヒー
昼食: 妻の手弁当 米飯300g・梅干し 卵焼き2切れ 冷凍フライ・ウインナ-・
夕食: 米飯300g~400g 魚<肉料理 豆腐など大豆製品 味噌汁 ビール500ml
間食: 缶コーヒー6本 ・和菓子1個(甘党)
調理習慣:揚げ物などは週2~3回 野菜は嫌い
その他: タバコ20本/日
摂取栄養量
熱量 3115kcal
たんぱく 質85g
脂質 67.7g
炭水化物 489g
飽和脂肪酸 20.4
一価不飽和脂肪酸 25.0g
多価不飽和脂肪酸 15.0g
コレステロール 332mg
水溶性食物繊維 1.5g
不溶性食物繊維 8.1g
食物繊維総量 9.6g
食塩相当量 9.4g
患者さんの病型把握:
脂質異常症診断基準(空腹時採血)において、すべてがあてはまる。
患者さんの設定栄養量
① 指示エネルギー 標準体重あたり30kcal 2100kcal
② 糖質、特に単純糖質の制限
③ 脂肪制限 :20~25%/エネルギー 47g~58g
脂肪の質の考慮:
飽和脂肪酸/一価不飽和脂肪酸/多価飽和脂肪酸の摂取比率:3/4/3程度
(獣鳥性脂肪を少なくし、植物性・魚類性脂肪を多くする)
④ コレステロール量の制限:一日300mg以下 1回の食事でとる量を140mg以下
患者さんの問題点
① 野菜の摂取が少ない(繊維)
② 缶コーヒーなどの単純糖質が多く、エネルギー過剰(エネルギー)
③ 脂質量が多く、飽和脂肪酸が多い(脂質)
などが挙げられた。
こちらの患者さんは、肥満や、コレステロールの摂取量332mgと、
極端に多いわけではなかった。
むしろ、脂質の質と量、単純糖質の摂りすぎ、
食物線維について重点的に指導することにした。
①については、もともと野菜嫌いということであったが、
コレステロールを吸着して、外に出す役割がありと説明し、
昼食に何か一つでも野菜料理をいれてもらうこと、
夕食に、野菜入り具だくさんの味噌汁にすることについて提案し、
これについては現在も改善され、なんとか意識付けされている状態。
②缶コーヒーについては、無糖をすすめるが、断念。
人工甘味料入りのものも進めるが、味の違いなどで受け入れできず、
結局1缶17kcalの微糖缶コーヒーに落ち着いているが、本数は減らせないでいる。
③脂質の全体量については、昼食の揚げ物の頻度を1週間に1回に減らす、
ウインナ-より、赤身の肉を使用するなどを指導、
夕食は魚料理を中心にとり入れることなど、奥様を中心に指導をおこなった。
昼食の弁当はやはり手軽な料理となるため、すべてを変更することは難しかったが、
冷凍フライの使用回数は減少した。
★まとめ
こちらの患者さんは、1年後にHDL-C 37 (mg/dl) L ・T-CHO 198 (mg/dl)
LDL-C 136 (mg/dl)と段階を経て、良好な経過をたどっています。
しかし、禁煙はなかなかできない様子であり、
タバコとコーヒーというライフ・スタイルの組み合わせに関しては、
なかなか是正の難しさを感じました。
ただし、奥様が比較的協力的で、本人も検査値が下がってくるのを自覚しながら、
継続した栄養指導、食習慣の継続ができたものと思われました。
このように、脂質異常症の患者さんは、
摂取エネルギー、栄養素の配分の変更を加えることで、
LDLコレステロールが下がることが期待できます。
ただ、脂質異常症には食事からのコレステロールのとり過ぎだけでなく、
遺伝によって受け継いだ脂質異常症になりやすい体質や、運動不足、肥満なども
関係しているため、食事の他に生活習慣にも注意しないといけません。
また、体内のコレステロールのうち、食物から吸収される量は、
体内で作られるコレステロール量の1/3 程度ですが食事内容に気を付けることによって、
よりコレステロール値を低くし、治療薬の量を減らすことも期待できます。