「生活に寄り添った指導を」
私の勤める医療法人仁寿会中村病院は、東京都墨田区に位置します。
診療科目は、外科、内科、整形外科、循環器科、胃腸科、
肛門科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、リハビリテーション科、神経内科、
及び麻酔科があり、理念に基づき『誠実』な医療の実行に日々努めております。
病院からは、建設中の『スカイツリー』を一望する事が出来、
現在は地域の患者さんと共にその完成を心待ちにしているところです。
入院患者さんの栄養管理については『病棟担当栄養士制』となっており、
入院から退院までを担当の管理栄養士が一貫して受けもっています。
栄養指導時以外でも担当の栄養士が毎日病棟を訪れ、
お食事の様子を観察したり、直接いろいろなお話を伺ったりしているので、
患者さんとの間には自然に信頼関係が生まれ、結果として、効果的な栄養指導を行うことができます。
また、当院では給食を直営で行っており、利用する食材の多くを地元の商店から購入しています。
地元の患者さんと同じお店を利用しているので、
栄養指導の際にも、『どこそこのお店のおかずは塩分控えめ』とか、
『あそこのお魚屋さんの切り身だとどのくらい』などと、共通の会話をすることができます。
患者さんに栄養指導を行う際には、生活環境に寄り添った会話が効果を発揮する場合も多いです。
病院の窓から見たスカイツリー
動脈硬化の栄養指導では、患者さんが今まで好んで食べてきた
食品や味付けを制限されるケースが多くみられます。
そのような場合でも、『食べてはダメ』という表現は使わず、
『食べるならこのくらいの量』とか、『月に1回ならOK』など、
その患者さんが楽しめる部分を残しておくようにしています。
『お食事を楽しむ』ということは、人生にとってかけがえのない喜びだからです。
私は、患者さんが健康を回復し、食の楽しみを感じながら
食事療法を続けることが出来るようサポートしていくのが、栄養士の役割だと考えています。
当院で動脈硬化の栄養指導を受ける患者さんの中には、
高齢の方や独居の方も少なくありません。
自炊や買い物を毎日行うのが難しい場合には、
食生活の中に上手に治療用食品を取り入れることもお勧めしています。
例えば、毎日ではなくても週に3回治療用宅配食を利用することで、
その3日間はカロリーや塩分のことを気にせず食べる事ができますし、
メニューを見ることで食事療法を学ぶこともできます。
毎日自分で計算をし、調理をするということで、負担が大きくなってしまう患者さんもいるため、
週に半分は自分で頑張る、というようにメリハリをつけてもらいます。
治療用宅配食を上手に利用しながら食事療法を行い、
コレステロール値が改善した例を、実際に多く経験しています。
最近では、週に2~3回宅配食を利用しながら食事療法を行い、
4か月間で約10kgの減量と、コレステロール値の改善がみられた患者さんを担当しました。
届いた宅配食を、ご自分で料理する際の参考にしている方もいらっしゃいます。
また、間食習慣のある患者さんには、食事療法がストレスにならないよう、
時々は低カロリーのお菓子などを利用していただくのも一つです。
最近では、コレステロールやカロリーを抑えた食品が多く発売されているので、
患者さんの選択肢も増えています。
栄養指導の際には、患者さんと一緒にカタログを見ながら、
どの商品をどんな時に利用するのか計画を立てます。
食事療法を続けて頂くためにも、食べ方のルールは、
なるべく患者さんご本人に決めていただくようにしています。
【左】集団教室で治療用食品を紹介しています。
【右】当院でCTスキャンにより撮影した内臓脂肪画像。
栄養指導の際にも利用しています。
食事療法は、継続することが何より重要です。
長い治療期間の間には、時には上手くいかなかったり、嫌になってしまうこともあります。
そんな時、一緒に悩んだり励ましたりしながら、
常に患者さんに寄り添った栄養指導を行う事ができるよう、
これからも心がけ取り組んでゆきたいと思います。