【奈良県立医科大学附属病院 山口 千影】

「自己選択、自己管理、自己実現」
 
当院は病床数978床、22診療科を抱える特定機能病院で、
外来患者数は1日あたり約2,600人を数え、病床稼働率約92%、
平均在院日数約16日の大規模急性期病院です。

一方、脂質異常症は、様々な慢性疾患を引きおこしたり悪化させたりしますが、
本質的に生活習慣病であり、その治療のためだけに
当院のような大学病院に通う方はあまり多くありません。

 

hospital.jpgのサムネール画像のサムネール画像そのため、私たちがお話しさせていただく患者さんも
糖尿病や腎疾患、肝疾患、外傷など、
治療の中心となる疾患が別にある場合がほとんどです。

脂質異常症の食事療法の基本は他の医療機関の方々が述べておられるとおり、
管理栄養士側から見ればあまりむずかしいものではありません。
単純な場合はもちろん、他の疾病と重複している場合でも、
家族性の一部を除き、改善すべき事項はおおむね共通しています。

 しかし、患者さんの側から見ればどうでしょう?
患者さんの多くは、栄養相談中の会話から何らかの要改善点をご自分で発見されますが...。


『コレステロールが多い食品って言われても、明太子もいくらもめったに食べないし、
レバーなんて大嫌い...バターなんて使わないし(マーガリンは使うけど...)、
バラ肉やベーコンだってたまに使うだけ。
動物性の脂肪が身体に悪いことはテレビでよく聞くし、そんなこと、私だって分かってるわよ!』


さて、こんな声が聞こえてきました。


 たとえば閉経後の女性は、ホルモンの関係で血中脂質が異常値を示すことが多くなります。
本人にとってみれば日々健康的な食事を心がけ、今まで特に何もなくきたのに、
閉経を機に急に検査値が悪くなり、食生活を見直すように言われるわけです。
理不尽な気もしますよね。
ということで、ここで栄養相談です。

① 閉経は仕方ないので、更に健康的な食生活をめざす。
② 閉経後の脂質異常症が心血管疾患の原因になることはあまり多くないと聞いているので、
  厳しい指導はイヤ。

さて、あなたなら①と②、どちらが好ましいと思われますか?

 

room.jpg栄養相談では、知識の伝達だけでなく、
患者さん個々の食事を含む生活全般についてお聞きし、問題点を探ります。
そして具体的な改善策を患者さんと、一緒に見つけていくことを目的としています。
ですから①か②か、どちらかが正解というわけではなく、
どちらがいいのか患者さんご本人に選んでいただく、ということになります。
私たち管理栄養士はその選択のお手伝いをし、選択に基づく食事療法をともに考えます。

①を選択される場合は、食事だけでなく
運動を含む生活習慣全般の改善が必要になるかもしれません。
また、②を選択される場合は、背の青い魚を積極的に食べましょう、
という目標だけになるかもしれません。

 大切なのは、食事療法をするのは自分自身だという気持ちをお持ちいただくことです。
 
 一般的に、生活習慣病とは、
中長期的な経過をたどってゆるやかに改善もしくは悪化していくもので、
食事療法の効果が劇的にあらわれることは少ないものです。
しかも、血液検査の結果がよくなったからといって、そこでやめられないのが食事療法。
長期にわたって継続できるかどうかが大きなポイントになります。
そのためには、コレステロールを含まないマヨネーズなどを使うほうが楽な場合もあり、
正確で適切な特殊食品の情報が役立つ場合もあります。
制限したり、我慢することだけが食事療法ではないのです

最後に、栄養相談の際、患者さんによくおたずねすることがあります。
「今から5年後10年後、どのような自分でありたいと思われますか?
そのために今、何をすべきか考えてみられたことはありますか?」

みなさんも、こうでありたいと望む自分自身になるための方法を、
管理栄養士と一緒にさがしてみませんか?

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氏名 管理栄養士 山口千影
勤務先 公立大学法人 奈良県立医科大学附属病院
経歴 大阪市立大学生活科学部 卒業
生年月日 1968年9月10日
血液型 O型
趣味 ヨガ 旅行 映画鑑賞
好きな言葉 多様性の尊重
モットー 行雲流水