「検査値が高くて食事の相談に行くようにいわれたんだけど、
なにを食べたらいいの?何を食べたらだめなの?」

 相談に来られた患者さんからよく聞かれる言葉です。
残念ながら、それにお答えすることはできません。
そのかわり、患者さんの食生活を一緒に見直して問題点を探しだし、
改善に向けてのお手伝いをしていきます。
 今回、ご自身で食習慣を見直し、食事量を把握することで
検査値の改善につながった方をご紹介します。


 55歳の女性。
健診にて脂質異常を指摘され受診されました。
主治医から「まずは食事の見直しをしてみて改善がなければ内服開始」
といわれ、栄養相談にお見えになりました。

 その時持参された健診データ
  TG309mg/dl LDL144mg/dl   要精査
  BS109mg/dl HbA1c5.8%      要観察 
  身長158cm 体重54㎏ BMI21.6 肥満なし

 主治医からの管理目標
  LDL<120mg/dl (加齢、耐糖能異常、低HDLと危険因子を3つ有しているため)
  HDL>40mg/dl
  TG<150mg/dl  


生活習慣・食生活の聞き取りから開始しました。
 専業主婦
 夫と2人暮らし。
 週2回バドミントンのサークルに参加、2時間程度の運動をする。
 それ以外はほとんど動かず家事も最低限。

「主人に腎機能低下があり、主人の食事に合わせて
 油を使った料理や甘いものを摂ることが多くなった。
 前は主食がもっと少なかったけど、
 主人と同じくらいの量を食べるようになった。
 おかずは蛋白質を取り過ぎないようにと、
 野菜のおかずを多く準備するように心がけている」

と言われ、前日の食事は以下の内容で約1500kcalでした。

朝食 食パン(6枚切)1枚+はちみつ
    野菜ジュース
    果物
    牛乳
    コーヒー(ブラック)
昼食 そうめん(乾麺100g)
夕食 ご飯 200~250g程度
   肉野菜炒め
   サラダ(生野菜にドレッシング)

 ご本人は、ご主人の食事に合わせていることに、
問題があると考えられていたようでした。
たしかに、食量が多いことや昼食を主食のみですませていること、
「少ない蛋白源だからおいしいお肉を」と霜降り部分をよく食べるなど、
偏りが見られます。
それ以外にも、お話しているうちにほぼ毎日間食があることがわかりました。
「そういわれれば健診の前あたりから、食後に『ちょこっと』甘いものを食べるのが癖になってる。
毎食後食べてるかも。」
ということですが、
『ちょこっと』がどのくらいなのか、いつ食べているのかは
ご自身も把握できていないようでした。
また、バドミントンのない日は「ほとんど動かない」というのも気になります。
おそらく、家にいる日のほうが間食は多いのではないでしょうか。 
 
 以上の点を指摘し、
  ① ごはんは1食160g(以前の量)に減らす。
  ② 昼食に野菜を追加する。
  ③ 肉料理を減らして、魚や大豆料理を増やす。
  ④ 間食の「ちょこっと」がどのくらいか把握する。
  ⑤ バドミントンの無い日はウォーキングをする。
というプランを一緒に考えました。

 2回目の指導時には5項目ほとんど実行できていました。
間食についても、「ちょこっと」という表現がなくなり、
「チョコ2粒」「クッキー3枚」など具体的な数値を教えてくれ、
ご自身で把握できたことがわかりました。
 
 1年後には、
  LDL 116mg/dl 、HDL 44.5mg/dl 、TG 132mg/dl 、HbA1c5.2%
  となり、目標値をクリアして、2年後の今も維持することができています。

 「間食はやめられない」と言われますが、
回数は毎食後から昼食後のみの1日1回に減り、
量もきちんとご自分なりの「適量」を守られています。
毎月きちんと受診され検査値を見て反省もされています。

 今回の患者さんは、ご自分が口にしているものを把握することで改善につながりました。
無意識に口にしているものや、体にいいからと特定の食品ばかりを取っていたり、
自分では気付けない食習慣が原因で検査値の改善が見られないことがあります。
栄養士を上手に利用して、食生活の振り返り、見直しをしてみませんか?

 

IMG_3623.JPG最後に、簡単な食生活チェック項目をいくつか挙げておきます。
参考にしてください。


*****一緒に食生活を振り返ってみましょう*****

① エネルギーはとり過ぎていませんか?
   自分の適正体重を知っていますか。
   標準体重を超えている方は減量を心がけましょう。
② 肉料理に偏っていませんか?
   霜降りや脂身を取り除くといった脂肪をとらない工夫をするだけでもちがいます。
   特にウインナーやベーコンなどの加工品は脂肪だけでなく塩分も多いので注意しましょう。
③ 魚を食べていますか?
   魚の脂肪には抗動脈硬化作用があります。
   1日1切れを目安にとりましょう。
④ 大豆製品は取れていますか?
   大豆には抗酸化物質や食物繊維が含まれています。できれば豆の形で。
⑤ 食物繊維が不足していませんか?
   食物繊維はコレステロールが腸管から吸収されるのを抑えてくれます。
   生なら両手に山盛り1杯、加熱したものなら片手に1杯が1食の目安です。
⑥ 乳製品を取りすぎてはいませんか?
   骨粗鬆症が心配だからと牛乳やヨーグルトをとり過ぎていることがあります。
   1日にどちらかコップ1杯程度に。
⑦ 砂糖の入ったお菓子、果物をとり過ぎていませんか?
   これらは消化吸収が早く中性脂肪を上げやすいので注意が必要です。

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氏名 管理栄養士 廣田優子
勤務先 大分大学医学部附属病院
経歴 徳島大学医学部栄養学科 卒業
生年月日 1974年7月9日
血液型 O型
趣味 琴演奏
好きな言葉 ありがとう
モットー 感謝の気持ちを忘れずに

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