「脂質異常の改善策」
脂質異常症の食事としてコレステロールに対する食事指導は、
糖尿病食に次いで依頼の多い食事です。
コレステロールは卵(見落とされやすい魚卵も含めて)や肉類の脂肪、
特にレバーなどの内臓に多く含まれるため摂取を控えるよう指導します。
ただ、コレステロールは、食事の減量だけではなかなか減らすことができません。
必ず運動もすること。
又、肥満があれば体重を減量することで、
コレステロール値が改善されることも少なくありません。
体重を減量することで改善した例をご紹介しましょう。
48歳・男性。会社員(営業) 身長:178cm。
趣味:絵画制作。
退社後や休日はアトリエに籠ることが多く、食事も不規則となる。
空腹に任せ、間食にチョコレートやスナック菓子を食べ、
時にはカップ麺を食事の代用とする。
運動量はほとんどなし。
<初回診察時>
体 重:93.8kg(BMI:29.6)
総コレステロール(T-cho):272mg/dl
HDL-コレステロール(HDL-cho):45.0mg/dl
栄養指導により、間食の減量を本人より提案。
併せて3食を規則正しく摂取することと、
ウォーキングの時間を作ることを栄養士より提案。
1か月毎の体重チェックと、血液検査を約束しました。
【 守れたこと 】間食を止めた。食事を規則正しく摂る努力をした。
【守れなかったこと】運動が出来なかった。
以下が体重の変化と検査結果です。
<1ヶ月>体重 :89.5kg(BMI:28.2)
T-cho :270mg/dl
HDL-cho:53.9mg/dl
<2ヶ月>体重 :88.0kg(BMI:27.8)
T-cho :235mg/dl
HDL-cho:46.6mg/dl
<3ヶ月>体重 :86.8kg(BMI:27.4)
T-cho :240mg/dl
HDL-cho:52.3mg/dl
<4ヶ月>体重 :86.4kg(BMI:27.3)
T-cho :215mg/dl
HDL-cho:44.8mg/dl
<5ヶ月>体重 :86.1kg(BMI:27.2)
T-cho :194mg/dl
HDL-cho:43.4mg/dl
3か月目以降大きな体重減少がなくなり、
努力の成果が出ない焦りも若干見られた時期もありましたが、
血液検査値が明らかに改善することで、頑張り続けられた症例です。
現在体重は大きく変わらず(時には増えることも...)、
検査値は正常値を維持しています。
この症例の場合、運動量に変化がなかったため、
体重減少の限界が早く来てしまったようです。
またHDL-コレステロール値の増加が見られないのも
運動不足に大きく関わっていると考えています。
コレステロールというと、いかにも「悪者」というイメージですが、
体の中では隅々に存在する脂質で、
細胞膜の材料として・各種ホルモンの原料として・胆汁酸の材料として
重要な働きをしています。
又コレステロールを多く含む食品には、
たんぱく質やミネラルに期待の大きい食品が多く有ります。
ただコレステロールの摂取を減らすだけの指導ではなく、
植物油や魚に含まれる不飽和脂肪酸の摂取や、
野菜やきのこ・海草に含まれる食物繊維などを多く摂ることで、
卵や肉も必要量は積極的に摂れる指導を心がけています。