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北海道のワイン醸造が熱い!

 水の硬度が高いヨーロッパにあって、ワインは水代わりに渇きをいやす身近な飲みものであり、子どもも食事の時には親の許可のもとで、水で割って飲んでいた。有名ワイナリーとは別に、我が町、我が村には自慢のワインがあって日常的な飲みものとして愛されてきた。ワインの産地と言えばイタリア、フランス、ドイツが連想されるが、ヨーロッパの酒づくりを見ると、気候に合った作物としてブドウがある種、特別な存在だと感じる。より温かいところでは赤ワインの産地(イタリアなど)、幾分気候が低めの白ワインの産地(ドイツなど)と、気候によって見事に製造されるワインの種類が分けられている。そして、気候的にブドウがつくれない地域になるとビールとなり、さらに北ではウイスキーになる。ワインはブドウと、酵母だけでつくられるため、ブドウの状態と発酵技術がポイントだ。熟成されたものも素晴らしいが、フレッシュなワイン、無濾過のワインも素晴らしい。その土地ならではのおつまみがあればもう最高だ。

紀元前から飲まれてきたワインの今日のひとり当たりの消費量の国別統計を探すと、1位はフランスでは無く、なんとポルトガルなのだ。サルダード(哀愁)の国ポルトガルのワインは、甕で醸す小規模醸造で、自家生産自家消費が多いことから、統計の数値に現れにくいと思っていたが、本当においしいワインがつくられて、生活に溶け込んでいる。かの壇一雄が放浪の果てに暮らしたのがポルトガルのナザレだ。以前、スペインからポルトガルへバスで旅をした折、休憩の度にバルで地元のワインを飲んだが、今ならより味わえたと思い、密かに再訪を計画している。そんなワインの話となると、夜を徹するほどに盛り上がる。

ワインは、近年味覚に鋭敏な日本人に食事と共に楽しむ酒として好まれ、消費量も増えている。それに伴い、国内でワイナリーが増えている。そうした動きが顕著なのが北海道だ。

北海道は酪農王国として知られ、近年では米の収穫量が国内第3位で、食味で特Aが出るほどになった。まさしく営々と続けられてきた稲の品種改良の成果だが、気候が温暖化していることも米の増産に関わっている。

北海道で、りんご、さくらんぼ、ぶどうなどの産地は、明治維新後に関西の入植者によって拓かれた、ウイスキーで知られる余市、隣の仁木町である。ここでつくられているブドウから北海道のワインがつくられている。果樹園の周りにはワイナリーも多い。

 北海道はワイン醸造において、あまり知られてはいないが「世界で最北のワイン醸造地」である。地球的規模で見ると、同じ緯度の他の地域と比べユーラシア大陸の端に位置し、その間に大きく水をたたえた日本海があるため、結果として驚くほど積雪量が多いことと、3月の気候がきわめて寒い(殆ど気候的には冬の延長)ことが特徴だ。北海道で最大の都市である札幌では、10月10日を過ぎるといつ雪が降っても不思議ではない。この頃は本州では1年で最も快適な時期だが、秋が短く、ある日突然冬になるのが北の大地だ。そのため、ブドウだけではなく、北海道の農産物は、極めて短い期間に急いで育つ必要がある。そこに朝夕の気温差が入ることで果物は糖度が増すのだ。

 私が仕事をしている大学では、酒類の試験醸造免許を取得し、学内にブドウを植え、ワインづくりに着手している。学内の応援を受け、OG・OBに大きく支えられ、北海道ならではのワインをつくりたいと願い、目下100%大学産の、ワインを北海道産の木樽での製造を目指している。ワインに合ったチーズ、ハム、ソーセージの製造にも夢は拡大中だ。

  
  
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