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(3)ソバと米物語 

                                   池田 清和

今回はソバと米物語をお話します。米は、私達日本人にとっては、大変重要な食糧です。弥生時代に端を発し、米を中心とした一汁三菜、五菜などの食事の形態が我が国の永い歴史の中で形成されて来ました。我が国は、現在平均寿命世界一のレベルの長寿国ですが、このような長寿を支えている要因としては、米を中心としたバランスのとれた食事形態が挙げられ、これに欧米風の良質タンパク質などの摂取増大が関係しています。我が国では、脱穀した玄米を搗精して精白米として食しますが、これを多食すると、ビタミンB不足となり脚気を生じます。江戸煩(えどやみ)(脚気の意)に徳川家将軍など多くの人達が跳梁され、また「私『B足らん』やねん」(谷崎潤一郎著細雪)」など、日本人は永い間この病気に悩まされて来ました。他方、インドやバングラデッシュなどの国々では、我が国とは異なり、籾を水に浸漬後、蒸煮、乾燥、搗精してできるパーボイルドライス(PR)の形で米を食します。この加工法ですと、糠層に含まれるビタミンなどが白米部に移行するために、PRを食する民族には脚気が少ないのです。前々回のソバととうもろこし物語の中で、ちょっとした加工調理法の違いで大きな栄養問題が生じることを書きましたが、米も同様です。ここでソバに話を移しましょう。ソバは世界各地で多彩な形態で利用されますが、ソバ米の形でも利用されています。我が国では、徳島県(そば米)や山形県(むきそば)など一部の地方で見られますが、それほどポピュラーではありません。一方、ロシアや欧州では広くソバ米(カーシャと呼ばれる、元来はロシア語)料理が見られます。そば米のつくり方は、パーボイルドライスと似ていて、ソバの実をそのまま加熱し、乾燥後、脱稃機(だっぷき)で皮をとり作ります。欧州でも多くはこの製法ですが、加熱しないで皮を取る処(オーストリアなど)もあります。ソバ米のビタミン含量は、ソバ全層粉に匹敵します私達の研究では、ソバ米にはポリフェノールの多く含まれることや、ソバ米は米飯や押し大麦などとは異なる食感(物性)を示すことなどを明らかすることができました。また別の研究では、ソバ米にはレジスタントスターチと呼ばれる有益成分のできることも報告されています。ソバ米汁(徳島)は、かまぼこや豆腐、海藻類など様々な具とともに食し栄養バランスが優れています。また、米にそば米を混ぜて炊いたりします。一方、欧州では、牛乳やチーズを入れて料理をします。時にはそば米に色々な食材を混ぜたそば米料理もお試し下さい。

  
  
  
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