パンの構成成分としての水の役割

水はドウ形成に不可欠な成分である;他成分を溶かし、タンパク質、炭水化物を水和し

、さらにグルテンネットワーク形成にとって必要である。水は複雑な機能をもち、生化学的ポリマーの立体構造を決め、仕込み中のいろいろな成分間の相互作用の性質に影響を与え、ドウの構造形成に寄与する。フラワードウのレオロジー的性質には不可欠のものである。粉に水を加えると粘度は低下し、ドウの伸展性は増加する。一方、もし水の比率があまりに低いと、ドウはぼろぼろになり、連続性はなく、はっきりと表面の素早い脱水による"クラスト"効果を示す。一般にドウのかたさの変化は5-15%の間で起こり、そのときの水分含量は粉の体積の1%で変化する。いろいろな成分がドウ中で吸水する間、変化ないデンプンだけはドウ中で水分含量を正確に測定できる。水で平衡化した時、天然デンプンはほぼ乾物重量kg当たり約0.45kgの水を吸収する。水分含量とその分布は、クラムのソフト感、クラストのかたさ、シェルフライフと言ったテクスチュアの性質を支配する。水分は製パン時生じる大きな変化(例えばデンプンの糊化)とその焼かれたパンの構造と食感に対しても重要な役割を演じる。

粉を水に加えると、粉粒の外側の層は吸水し、ネバネバした塊が見られる。撹拌を続けると水和された外側表面層が代わり、新しい粉粒子層があらわれ、水にさらされ、そして水和される。この連続で全ての粒子が水和され消える。幾つかの物理的、化学的変化が粉と水のミキシング、ニーデングの間に起こる。使われた引裂,押しのばしの力でグルテンタンパク質は水を吸収し,グルテンの一部はほどける。一部ほどけないタンパク質分子は、疎水相互作用とSH-SS交換反応を容易にすすめ、糸のようなポリマーを形成する。これらの直線ポリマーは次々と、簡単に多のものと互いに相互作用すると思われ、多分それは水素結合、疎水結合であり、S-S結合であり、ガスをトラップ出来るようなシート状のフィルムを作る。

デンプン構造の変化、例えば可溶性、糊化、あるいはフラグメンターションは、水/デンプン比、温度、加熱程度、アミロース/アミロペクチン比、引裂力、粒子サイズ分布、添加砂糖、塩、タンパク質、脂質、あるいは他要因によって影響を受ける。ドウの調製中、デンプンは約46%まで水を吸収する。水中で加熱するとデンプン粒は糊化し、粒中で分子配列の混乱が起こる。糊化中アミロースが粒からしみ出す。全糊化が一般にある温度域で生じる。過剰の水にあるところでデンプン粒の連続加熱をするとさらに粒は膨潤し、可溶化成分のしみだしがさらにつづく(プライマリーアミロース),そしてついには粒の全体が崩壊する。この現象はデンプンのペースト形成に到る。水は糊化の間、可塑剤として働く。水の移動-強め効果が初めにアモロフォス域で起こり、ガラスの性質である。デンプン粒は、十分に水のあるところ(少なくとも60%)で加熱し、特異的温度(ガラス転移温度)に達すると、粒のプラスチックアモロフォス域は相転移をおこし、ガラス相からゴム相に変わる。上述のプロセスの間、水分子は鎖間に入り込み、鎖相互間の結合をやぶり、分離した分子間に水和層を作る。これは、鎖をゆるめもっと完全に分離し可溶化する。

   加熱、水分、時間のベーキングの組み合わせの結果、デンプン粒は糊化し、膨潤し、少量のデンプン(主にアミロース)が内部粒相中に漏れ出る。製パン中のデンプンの膨潤と水の可塑的効果の重要性も強く述べられた。冷却する間、可溶化したアミロースは連続的ネットワークを形成し、そこで膨潤した変形したデンプン粒は落ち着き、他のものと連携する。素早い老化のために、アミロースはパンの不可欠構造要因であり、初期のパン容積の決定要因である。水分含量はデンプンの老化のレベルとスピードをコントロールする。パンクラム中、老化デンプンの可溶化エネルギーの最大量が35-45%水分含量範囲で観察された。分析データーは、クラムの粘弾性性質が合成ポリマーのそれに類似しており、クラムのかたさは水分含量が増えるとともに低下する。水は食品中、最も大切な可塑剤である。ベーキング中吸水の増加は、パンの初期の柔らかさを強め、さらにパンのかたさを低下させた。

   貯蔵中、パンは次第にその新鮮さを失い老化する。老化のプロセスには幾つかの面がある;クラストはしだいにかみきりにくくなり、クラムは次第にかたくなるり、弾性を失い、可溶性デンプンは低下し、水分とフレーバーは損失する。貯蔵中の水分含量がパンのかたくなるスピードに影響し、デンプン老化に影響すると報告された。小麦パンがかたくなるスピードは、水分含量が高い時遅れる。一般に結論されるのは、デンプン区分中の水の移動と変化は老化プロセスで重要な要因である。

   すでに討論したように、ハイドロコロイドは小麦パン、グルテンフリーパンに広く利用され,これらの食品の構造、口腔内感覚、消費者了解、シェルフライフを改良した。

少量の利用(<1%、w/w)で、パン容積をふやし、かたさを低下した。水分吸収はハイドロコロイド添加で増加し、この増加の程度は添加ハイドロコロイドの構造にもとづく。ハイドロコロイドの存在は、デンプンの可溶化,糊化,フラグメンテーション,老化に影響する。これらの効果は糊化の性質、ドウレオロジーの性質とパン老化)に影響する。

   製パン研究の結果から、パンサンプルの水分含量はハイドロコロイドを含むとコントロールよりも極めて大きく増加する。クラムのかたさがハイドロコロイドを含むと低下することは、また小麦パン、グルテンフリーパンで報告された。水(10あるいは20%)をグルテンフリー粉に加えるとパン容積がより高くなり、クラスト、クラムテクスチュアのずっと柔らかくなることが観察された。グルテンフリーパンの水分含量の増加がクラムのかたさを顕著に低下させる事が観察された。HPMCと水は、クラムグレイン構造で顕著な相互作用を示し、2.2%HPMC79%水分のレベルが最も良好なグルテンフリーパン品質を与えた。

   小麦パンでHPMCの存在がかたさスピードを低下させ、アミロペクチンの老化を遅らせることが観察され、アミロペクチン老化の低下、パン老化の遅れがHPMCを含むパンの水分含量によるためだろうと結論された。示差走査熱量測定を用いて、ドウ中の水とHPMCレベルがガラス転移温度(例えばガラス状態からゴム状態への)に大きく影響することを、さらにHPMC-水相互作用がデンプンの糊化開始温度を主にコントロールすることが観察された。ハイドロコロイドはパン中でパンクラムから水分の拡散と損失両方を制限することで,老化レベルに影響した。こうして水分含量とその水移動をコントロールすることが、パン容積とクラムかたさのコントロールにとってキー要因であろう。

グルテンフリーパンの栄養価の改善

穀物は食物繊維の重要な源であり、西欧諸国では含まれる繊維の約50%がこれである。食物繊維の役割は線維素であり、大部分はずっと健康予防に貢献するものとされて来た。適当量の穀物、果物、野菜を入れた食事は、十分な繊維を与えるだろう。グルテンフリー食品には一般に強化されてなく、入っている量も十分ではないというために、あるいは精製した粉やデンプンで作られているために、それらは置き換えようとしたグルテン含有のものと同一の栄養価レベルにはないであろう。そこでセリアック病患者にとって、生きてゆくために必要なグルテンフリー食事が果たして栄養的バランスのとれた食事かどうかを確かめると、特に食物繊維の取り込みについてはまだ不確実性が残る。

   セリアック病の治療し、グルテンフリー食事をしている49人の大人に、栄養価と食品の取り込みの調査をした。正常の食事のコントロールグループの人々と比較した時、繊維取り込みの低いことを見出した。同時に平均繊維消費量がSwedenのセリアック病患者に推薦されるものより低いことを見出した。セリアック病青年期の研究で、きっちりしたグルテンフリー食事を守ることは、既に青春期の栄養的なアンバランス食事(栄養と繊維の食物レベルは低いとわかった)をさらに悪くすると結論した。同様の発見も示された。

   グルテンフリーパンに食物繊維を強化したものは、技術者達のチームで研究の話題となった。研究は高繊維成分の添加がテクスチュア、ゲル化、厚み、乳化、安定化の性質をグルテンフリー食品に与えることを示した。イヌリンは食物繊維含量をグルテンフリ--食品に増加させる成分の1つである。イヌリンはβ(2è1-結合するフラクトースユニット鎖の貯蔵多糖類であり、末端にグルコース分子が来る。30 000以上の野菜製品に存在する。特にチコリルート()Cichorium intybus)は産業に使うのに適している。イヌリンは小腸で分解されず吸収されないが、そのかわり大腸で有用バクテリアで発酵される。イヌリンのいろいろな植物から抽出されたものの違いは、重合度の違いによるものであった。

   機能的性質でイヌリンは加工食品中広範囲に用いられ、そこではプレバイオテックスの性質に使われている。また、脂肪代謝物として広く食品に用いられている。例えばイヌリンと、あるハイドロコロイド間の相互作用に関し報告されている。イヌリンとハイドロコロイドはシナージスト効果を示し、システムに顕著な粘度増加を与える。イヌリンを水溶液と混ぜた時、イヌリン粒はゲル状のネットワークを作り、その結果食品中ではクリーム状のテクスチュアとスプレッド状の性質を示す。混合物は食品中簡単に応用でき、脂肪100%にまで置き換ええる。

   非常に僅かだが2−3の研究が、イヌリンのベーカリー食品への品質と栄養的性質に関するものがある。最近、グルテンフリーパンの品質へのプレバイオテックス範囲(イヌリン、オリゴ糖シロップ、にがみフリーチコリ粉)の影響が決められた。さらに358%添加レベルを用い、パンを48時間貯蔵した。パン中に5%イヌリン添加が最も良い食感をえている。58%イヌリン、オリゴ糖シロップ、チコリ粉は3日間の貯蔵期間中、老化スピードを低下した。全体的に著者らの結論していることは、プレバイオテックス供給で品質の良いグルテンフリーパンを作る事が出来たことだ。使った添加物の中で、パン品質に与える最も意味ある効果は5%イヌリン添加であり、これがパンのふくらみを増加し、クラムのかたくなるスピードをおとし、官能レベルを改良した。

   異なったレベルのイヌリンによるグルテンフリーパンの栄養的価値同様、品質へのインパクトの研究をした。これらの著者らはイヌリン添加がグルテンフリーパン品質を改良するだけでなく、パンの食物繊維が顕著に増える事も述べた。限られた研究から、グルテンフリー食品に存在する栄養的分析に関すること同様、グルテンフリー食品の食物繊維増加に不可欠であることを調べた。イヌリンは良好な候補であるが、しかしさらなる研究が必要で、グルテンフリー食品中に他の食物繊維源の適当なものの評価が必要である。

グルテンフリーパンの生産

グルテンフリーパンの生産方法は標準の小麦パンの生産方法にくらべ、顕著に異なるものである。伝統的には小麦ドウをまぜ、発酵し、分割/成型、丸め、最後に焙焼する。殆どのグルテンフリーパンはより高いレベルの加水、そしてより流動に近い構造である。さらにそれらは撹拌、発酵、ベーキング時間は小麦の物より反対に短い。新しいグルテンフリーパンで高品質のものの作り方が示され、撹拌、発酵、ベーキングからなるものである。この方法はグルテンフリーパンをさらにうまく研究し応用している。グルテンフリーパンに乳成分を入れた時、入れない時をつくり、小麦パンや小麦デンプンをベースにした市販ミックスのグルテンフリーパンと比較検討している。非乳成分グルテンフリーパンには、トウモロコシデンプン、玄米粉、大豆、そば粉、キサンタンガムが使われている。乳成分の入ったグルテンフリーパンは、玄米粉、スキンミルク粉、全卵、ポテトデンプン、トウモロコシデンプン、大豆粉、キサンタンガム、コンニャクガムからなる。市販の非乳パンは高体積であったが、その結果、早い老化のパンであった。全粒穀物のコンビネーションで、水レベルを増やしても特にその老化を遅らせることは出来なかった。しかしながらタンパク質十分量の添加で品質の保持を改良し、連続相の形成とフィルム様構造を示した。この連続相、フィルム様構造は、デンプン老化による変化をマスクすることができ、そこでグルテンフリーパン品質を決める鍵となる。

   RSM(応答局面法)という技術は有用な技術であり、新しい食品、例えばグルテンフリーパンのようなものを製造するときには有用な技術である。RSMでは、成分レベルのコンビネーションの設定あるいはプロセスパラメーター(例えば時間、温度)の組み合わせとその設定ができ、適当な結果(例えば色調、体積、受け入れ可否)を求めるためにテストされる。それはモデルを作るのにも用いられ、これらのデーターは各部分の最大、最小を求めるのに用いられた(例えば加工時の最大条件の選出とか)。RMSは、ある方法で同時にいろいろな多くのパラメーターを変え、しかしながらトライアルの最小数で製造業者に信用できるデーターを与える(最小のコストと時間でインプットする)。成功したRSMの応用はいろいろな異なるタイプの小麦パンの生産で報告されている。

   グルテンフリーパンにRSMを使い、3種の米粉を用い、(いろいろな粒サイズと米くだき方の調査)目的を持って生産とその測定を行った。中間の粒、微細に粉砕した白色米粉、低レベルのHPMC、低レベルのCMCを用いてパンは最も小麦パンに近いものができた。同じ3種の米粉が第2番目のトライアルに用いられ、グルテンフリーイーストパンが米粉(80%)、ポテトデンプン (20%)を基本として作られた。訓練したパネリストによる官能試験を使い、RSMにより至適CMCHPMCと水レベルを見出し、これらの成分と各異なった米粉とのコンビネーションをに見出すのに使われた。湿っぽさ、凝集性、フレーバー、色、セル構造に関しては、グルテンフリーパンを中間粒米粉で作ると長粒米粉で作ったものより高度のスタンダードであることがわかった。

   RSMを応用してメチルセルロース、アラビアガム、卵アルブミンのグルテンフリーフラットパンの官能的性質への影響を調べたが、そのパンは未糊化コーンデンプンとコーン粉をベースにした仕込みで焼いたものである。メチルセルロースと卵アルブミンは、パンの官能要因を改良する大部分の成分であるとわかった。3%アラビアガム、2−4%メチルセルロース,卵アルブミンを用いた時,小麦パンに相当するグルテンフリーパンが作られた。しかしながらパンはレギュラーの小麦パンに比べ2日間以上早く老化した。RSMはキャッサバデンプンのグルテンフリーパン、ビスケット仕込みにも用いられた。RSMを用いて、コーンデンプン、キャッサバデンプン、米粉、0~0.5%大豆粉添加でグルテンフリーパンの改良テクスチュアもうまく調べられている。RSMを用いてソールガムベースグルテンフリーパンへのソールガム雑種の影響は調べられた。各ソルガム雑種はグルテンフリーパンの品質に相違を示し、RSMは最も良い仕込み中、ある品種の最もいいパーフォーマンスを示した。

   結論すると、これまでの研究は明らかに数学的なモデル化はグルテンフリー食品の最も良いものをつくりのには上等な道具であり、RSMは最低のトライアル量で、至上の加工食品の仕込みづくりができた。

グルテンフリーパン品質の改良

殆どの市販グルテンフリーパン品質が良くないのは老化の素早い開始、乾いたクラムテクスチュアと、ひどいオフフレーバーによるためである。グルテンフリーパンの老化の早いのは、主には高含量の分離デンプンによるためである(粉基本の約100%)。さらにグルテンが無いため多くの水が使われ、それがクラム硬化傾向とクラストのソフト化の原因である。幾つかの研究が進められ、それによるとグルテンフリー穀物の範囲と酵素、タンパク質、ハイドロコロイド,あるいは又,乳酸バクテリアとのコンビネーションで進められ,グルテンフリーパンの品質向上に向けられた。

酵素

酵素機能の利用はベーキング産業に大きく広がっていて、例えばドウの脱色(漂白)、ドウの容積、テクスチュアあるいはシェルフライフの改良である。酵素は本来の材料中に存在するか、あるいは別の酵素源から添加することもできる。アミラーゼ、プロテアーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、オキシダーゼは、ベーキング製品の品質同様、全てのベーキングプロセス面に影響すると報告されている。

   今日まで、グルテンフリー食品へのアミラーゼの利用とそのインパクトについては殆どない。米パンの老化を遅らせるのにBacillus (中間温度域安定のα--amylaseとサイクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ(CGTase)からの2つのデンプン分解酵素の効果について研究された。CGTaseの存在は、特にアミロペクチン老化の低下と顕著な抗老化効果を示した。酵素添加による好ましいパン比容積の増加も記録された。そこでこの研究から、アミロース分解酵素はグルテンフリーパンの老化を抑えるのに効果のあることを示した。

   トランスグルタミナーゼはベークト産業において比較的新しいツールとして登場した。アミンの取り込み、クロスリンク,あるいはデアミネーションによってタンパク質を修飾することができる。クロスリンクは、リジン残基のε--アミノ基がタンパク質中でアシルレセプターとして機能しε-(γ-Glu)lys結合(isopeptide bonds)は分子間、分子内で起こる。反応系にプライマリーアミンの無い時、水分子はアクリルアクセプターとして働き、グルタミン残基の脱アミノ反応に進む。トランスグルタミナーゼもタンパク質中にプライマリーアミンの取り込みを触媒できる。トランスグルタミナーゼは、いろいろのタンパク質をリンクする力がある;牛乳カゼインとアルブミン、卵、肉動物性タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質である。酵素はいろいろなものから得る事ができ、例えば動物組織、魚、植物、あるいは微生物である。ベーキング用のトランスグルタミナーゼは微生物培養で得られる。酵素は小麦グルテンを活性化し小麦ベースのクロワッサンの比容積にプラスの効果を示した。

   トランスグルタミナーゼ(レベルを変えて)による大豆、スキムミルク、あるいは卵タンパク質のグルテンフリーパンへのインパクトの大きいことが述べられた。最も目立った効果はネットワーク形成による容積の低下であった。スキムミルク粉と10unitsの酵素の入ったパンは、最もコンパクトな構造であり、著者らはグルテンフリーパンのネットワーク形成はトランスグルタミナーゼレベルと用いたタンパク質のタイプによるもので有ると結論した。グルテンフリー穀物の広さへのトランスグルタミナーゼのインパクトの大きさについて評価された。顕著な増加が10ユニットのトランスグルタミナーゼが用いられたときに偽穀物のソバの性質や玄米粉バッターで観察された。出来たソバや玄米粉パンは、全体的な肉眼で見た様相と同様ベーキング特性の改良を示した。3次元CLSM(共焦点走査型レーザー顕微鏡)画像精緻図は、トランスグルタミナーゼ作用でタンパク質複合体形成が起こっていることを確定した。しかしながらトランスグルタミナーゼはトウモロコシ粉にはネガテイブの効果を示し、様相はバッターの弾力性の性質を悪くなる。にもかかわらず、結果としてのパンははっきりした改良効果を示し比容積の増加、クラムかたさとチューイング性の低下を示した。トランスグルタミナーゼの効果はオート,ソールガム、あるいはテフのパンでは認められなかった。著者らはグルタミナーゼがグルテンフリー粉に働いて、ネットワーク形成を進め、製パン性を改良する事ができたと結論した。しかしながらタンパク質源が酵素によるインパクトを決める鍵である。

サワードウとグルテンフリーパン品質改良へのその役割

ここではサワードウ利用が、グルテンフリーパンの品質をあげる興味深い変法であることを示す。サワードウ添加は,グルテン含有パンの品質改良を十分進めた方法である。パン容積改良、クラム構造改良、 フレーバー、栄養価、 及びモールドフリー(カビなし)シェルフライフをふくむポジテイブな効果に関してかなりのコンセンサス(同意)がある。サワードウの添加でグルテンフリーパン製造のフレーバー改良に,特に興味深い。パンフレーバーは、スターター培養のタイプによって影響を受け,特異的なフレーバーは発酵中に生じる有機酸、アミノ酸によって得られる。ガス保持能は主に粉の膨潤力に影響されるが、しかしデンプン粒は相対的に水に不溶で、冷水ではほんの僅かに水と水和するだけである。サワードウ発酵で粉の酸性化が起こり、ある方法でグルテン機能に置き換わり、そして多糖類(ライ麦中のペントザン)の膨潤の性質を強める。この性質はグルテンフリーパン構造に意味のあるものであろう。

   サワードウのグルテンフリーパン品質への影響は、近年研究された。発酵の間、タンパク質の分解が起こるが、このプロセスはグルテン含有サワードウよりずっとはっきりしない。20%サワードウの取り込みは、グルテン含有パンの最終品質への顕著な効果を示した。しかしながらグルテンフリーサワードウでは、20%レベルでグルテンフリーバッターに取り込まれても、構造には全く顕著な違いは認められなかった。だが老化の開始は遅れた。サワードウの添加はグルテンフリーパンの腐敗菌の成長を効果的に遅らせることができ、それによってこれらのシェルフライフを増加させたと最近報告された。

   高品質グルテンフリーパンの製造にサワードウを用いる研究はまだ未熟の段階であるが、これまでの利用できるデーターはサワードウがグルテンフリーパンの品質(例えばフレーバー、シェルフライフ)をあげる魅力的な道具であることを示している。

結論

セリアック病患者用のくさび石となるその治療は、長寿食事としてグルテン入り食品を除去した食事である。しかしながらグルテンはパン構造をつくるタンパク質として不可欠で、多くのベーキング食品の外観、クラム構造、消費者の納得には必要なものである。そこでグルテンフリー食品の分野で食品科学者、及びベーカリーにとり最大の挑戦は、高品質のグルテンフリーパンを作ることであろう。大きなマーケットリサーチの示すところは、最近のマーケットの大部分のパンは非常に貧弱な品質であるということである。小麦パンでは、グルテンはこのような広い範囲の機能を示すため、他の一成分だけで小麦粉を置き換えることはできない。もしグルテンの粘弾性性質を模倣できる、ある範囲の粉と重合化物質がグルテンフリー仕込み中に入るならば、良質のグルテンフリーパンを作ることができる。グルテンフリー粉の使用範囲は、丁度一種類よりもっと多くのグルテンフリー粉を混ぜる方が、良い官能性で良いテクスチュアのパンを作るのに推薦された。グルテンフリーパンの全体的な品質を改良するのには、グルテンフリー仕込み中、ある%のデンプン量の添加が確実に必要である。もともと米、ポテト、タピオカからとられたデンプンは、小麦デンプンよりグルテンフリーデンプンであり、この目的のために用いられるべきである。

   ハイドロコロイドはある程度グルテンの粘弾性をまねすることが出来るから、グルテンフリーパン製造には不可欠な成分である。これまで行われてきた研究から、キサンタンガム、HPMCはグルテンフリーパン仕込みには最も都合のよいハイドロコロイドであろうが,グルテンフリーシステム中、これらあるいは他のハイドロコロイドの応用研究で最も良い物を探す研究がもっと必要である。タンパク質をベースにした成分もグルテンフリーパンの改良に不可欠であり,その最も顕著なものは恐らく乳基本成分であろう;しかしながらその中でも不可欠なことは唯一低ラクトースの乳成分であることである。最も大切な成分の1つは、どんなグルテンフリー仕込み中でもそれは水であり、最も良い結果を得るため、どんな仕込みにも最も適当な水--レベル量が必要不可欠である。

   最近、グルテンフリーパンのテクスチュア改良研究に、酵素の利用に焦点が注がれている。他の酵素の中でも、トランスグルタミナーゼはグルテンフリーパンのテクスチュア改良を示したが、原材料に対する依存性への考慮を示した。乳酸バクテリア/グルテンフリーサワードウもグルテンフリーパン品質の改良の一つの可能性であり,特にその官能性の改良である。たとえグルテンフリー食品開発研究が未だ未熟であっても、研究者達はいまのマーケットのものより優れたものをつくることができ、そしてセリアック病の患者はまもなくそれらを店で利用することが出来るであろう。

マリー

  さん

はじめまして 興味深く読ませていただきました。
こちらでお尋ねするのは失礼かとも思ったのですが、なかなか相談する人がいないので、グルテンフリーの研究をされている先生にお尋ねする次第です。

私はグルテンアレルギーで、もう何年も自宅では完全除去の食事を自分で作り、外食のときもお店の人に配慮していただいています。
来年ですが旅行でニューヨークに行く予定です。

食事のことが心配で、色々と調べており、一部のスーパーマーケットにはグルテンフリーのパンが売られているようです。レストランもグルテンフリーをしっかりと唱ったところは大丈夫ですが数は少ないようです。

そこでアメリカの一般的なサンドイッチ店などではグルテンフリーのパンで作ったサンドイッチを一般的に売られていたりするのでしょか?もしニューヨークでのグルテンフリー事情をご存知でしたら、教えてください。

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伊熊 司朗

  さん

はじめまして、よろしくお願いします。

読ませていただいたのですが私にはかなり難解で5分の1ほどしか理解してません。
しかし、他のページを見てもはっきりと説明したものがなかったので先生に質問させていただきます。

私は篠山でピザ屋を営んでいます。
まだ6年目ですが、2年前に海外からのボランティアさんがサワードウを教えてくれ、それ以来ずっと使っております。

先日に来られたお客様が、
君のピザ生地はサワードウで発酵させてるなら、私はグルテンアレルギーだけど食べても大丈夫なんかな?
パンは時々食べているが。

と言われました。
発酵時間が短いのでどうなんでしょうか?

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果物包丁

  さん

デンプンの老化だとか、保存期間は課題ですね
タンパク質なので限界はあると思いますが、日持ちはしてほしいです

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キュウリ

  さん

セリアック病自体の知名度もあんまりない気がします
なんとなくパンが体によくないことは知られている気はしますが

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ヒトカゲ

  さん

人工甘味料ぐらいポピュラーになれば、もっとメジャーになると思います
そのころには舌も慣れてるんじゃないでしょうか?

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クラブ

  さん

消費者がモチモチのパン以外も好むようになればいいのですが
それも時間がかかりそうです。個人的にはすぐくっついて離れるパンも好きです。

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イブキトラノオ

  さん

ノングルテンのパンの劣化の早さは課題ですね…。もっと保存技術が改良されればいんですけど、民間レベルでは難しそうです。
買ったものをすぐ食べる文化が根付けばいいんですけど……。

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スライサー

  さん

グルテンは粘り気のもとなので、おいしさを追求するのは大変ですよね…。
パサパサしていても個人的には気にならないのですが、まだメジャーではないのが悲しいです。

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かながわ

  さん

欧米出身の友だちがいるんですけど、グルテンやセリアック病に対する知識は日本人より遥かに高いです。日本でももっと知識が広まって欲しいです。

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