イントロダクション

グルテンアレルギー/グルテン耐性への関心とセリアック病発見の優れた治療法要望の高まりにともなって、グルテンフリー食品への要求が世界的に、特に発展途上国に広がっている。しかしながら、グルテンフリー食品の仕込みは一般にグルテン含有食品のそれより難題であるのは、大部分の構造形成成分であるグルテンが欠如のためである。更にグルテンフリー食品の栄養プロフィールもまた難題であり、例えばその栄養上必要な食物繊維の低含量である。最近ではグルテンフリーのビスケット、ケーキ、パスタ、ピザはセリアック病患者の食事に含まれ、市販され利用できる。しかしながらそれらはしばしば精製デンプンが主体のため、乾燥した砂のような口腔内感覚で、全体的に貧弱な食感である。この章ではこれらの食品の進歩に見られる異なった接近法をレビューする。

ビスケット、菓子、パスタ

ビスケット、クッキーは世界中で人気のある食べ物であり、それらの多くのテクスチュアと味覚のコンビネーションはそれらを世界中にアピールしている。新しいビスケットの革新と進歩は、食品技術者の創造力によって作られる。本質的には技巧がベースで有ると信じられていたが、ビスケットの製造は科学に向かって進み、テクスチュア、フレーバーのいろいろなコンビネーションとともに、各地域好みの味や市場に合うようにつくられた。仕込み、加工、最後の出来上がった物の属性の違いは、全てビスケットドウの粘弾性の機能、あるいはドウのレオロジーによるものである。ビスケットに多くのタイプが有る;しかしながらそれらの属するカテゴリーにもかかわらず、全てのビスケットにとりあるレオロジ--的必要性がある、例えばドウはモールデング/フォーミングに対する十分な凝集性がなければならず、過剰の粘弾性は不用で、更にドウはショートで切れやすいテクスチュアが必要である。ドウのグルテンデベロップメントの程度も、ビスケットタイプのあるものにとり極めて重要なことである。薄力小麦粉、砂糖、脂質はビスケット産業にとり基本的な成分であり、このチャプターではグルテンフリービスケットやクッキーの仕込みに小麦粉を他のものに置き換えるアプローチについてレビューする。

   ケーキは化学的に膨らませたバッターベースの食品である。そのケーキ製品の品種と多様性は大きく、本質的には仕込みの違いは地球上至る所にある。ケーキの定義もいろいろだが、本質的にはその言葉の意味するところは、小麦粉、砂糖、全卵、他の溶液が基本の仕込みで、そこに油脂が加えられ特徴とする食品である。加えられる液体レベルは、ドウではなく低粘度バッターの形成されるようなレベルである。ケーキバッター中では何ら顕著なグルテン形成はなく、ケーキ形成技術はグルテンネットワーク形成阻止するためのステップを利用する、それによってバッターは複雑なエマルジョンを作る。鍵になるケーキの構造形成成分はデンプンであり、それは小麦粉中にあり、その糊化の性質は砂糖、及び溶液の添加で変更される。

   パスタ食品は多世紀に渡り、地中海文化の人々に知られた。現在のパスタと呼ばれる食品の範囲は広く(例えばマカロニ、スパゲッテイ、ラザニア、バーミセリ、ヌードル)あり、そして形状、色、成分、貯蔵要求性、利用に関しても広くいろいろである。"パスタ"という言葉はイタリア語で"ドウ"を意味し、前述のような押し出し食品のイタリアンスタイルに合う食品を述べるのに一般に使う。パスタ生産用の生材料にはデューラム小麦のセモリナ粉が選択される。デューラムは強力小麦で、製粉したセモリナは粗粒子サイズでパスタを作るのには理想的である。パスタ消費者がその品質要求性に洞察力を持つようになり、更に食品の変化をいやがるようになると、パスタ生産者はパスタに加工するのに好ましい特徴を持つ正確な生材料を用いねばならない。粒中のタンパク質はパスタ加工上の特徴に顕著に影響する。ドウ撹拌及びパスタのエクストルージョンの間、形成されるタンパク質マトリックスの連続性、強さは、パスタのテクスチュアの特徴を決めるのに重要である。同一のタンパク質レベルの弱いグルテンと比較すると、強いグルテンの小麦は粘りの少ないドウで伸展性はよく良好な料理後のテクスチュアの性質を示す。インスタントパスタは、薄い壁を持ち、加工中にはより強い力を必要とする、一方新鮮なパスタはより伸展性あるドウと、シートの性質を変えるためのより弱いグルテンを要求する。グルテンマトリックスはこうして極めて重要なパラメーターであり、パスタの品質に影響する。

   ピザはナポリに原型があると広く信じられ、平らに膨らませたパンに幅広いバラエテイーのトッピングをのせるものと定義される。ベース(生地)とソースの品質がピザの全体的な品質に重要な役割を演じる。ピザ産業は成長しつづけ、最近数十年に予期せぬモニュメントを作った,そしてその要望は食品会社にピザドウの工業生産に関心を持たせるまでになった。ピザクラストあるいはそのベースは強力小麦粉で仕込まれ、食品全体の顕著な部分を構成する。その様相、味、テクスチュアは、消費者にとり同定と受け入れに重要なファクターである。しかしながら他のベーキング食品に比べ、ピザクラストの品質、特にグルテンフリーピザクラストの品質は研究分野がまだ残っている。

ビスケットとクッキー

ビスケット、クッキーの分類

ビスケットという言葉はラテン語のbis coctus で、それは2回焼くという意味である。元々の加工はホットオーブン中でビスケットを焼き、続いて冷却したオーブンで乾燥することである。この技術はこれらの時代、極めてまれだった。"クッキー"は元々はドイツ語のKoekjeからくるが、それは"小さいケーキ"という意味で、食べる時の音が最もその名前に合致したのであろう。ビスケットとクッキーは、それらの製造上の仕込みと方法から分類させる。ビスケットドウ、及びベーキングの特徴は大きくドウのグルテンデベロップメントの程度で影響される。ショートドウビスケット

世界中で消費されている殆どのビスケットとクッキーは、ショートドウから作られる。ショートドウ仕込みは脂質と砂糖が高比率であり、それらは各粉重量の100%--200%までの範囲である。このようなドウ中の脂質の高レベルは、ドウに凝集性、可塑性を与え、しかしグルテンネットワークの進展性が限定されるため伸展性、弾力性に欠ける。ショートドウ中の粉に非常に僅かのミキシングを与える;これはまたタンパク質ネットワークが最小の形状につながる。ショートドウビスケットは普通ロータリーモールデング、エクストルージングとカッテング、あるいはミキシングとカッテングで作られる。できたドウピースはベーキングするまではその形状をそのまま保持しようと形成するが、しかしそれらは伸びたり、あるいは流れたりで薄くなる。このタイプのビスケットは簡単に壊れ、その例にはダイジェステイブ、ショートブレッド、カスタードクリームがある。

ハードスウィート、セミスウィートビスケット

これらのビスケットはかたい粘弾性とよりグルテンネットワークが進んだドウによって特徴づけられる。仕込み中、脂質と砂糖のレベルは粉に対して低く、ドウには弾力、伸展性が有り、更に強い撹拌が要求される。ハードドウは砂糖、脂質含量がそれの粘弾性を変える以外、パンドウに似ている。これらのドウでは、カット、打ち抜きの前に普通はラミネートしシートとする。形を作った一片は普通グルテンの弾力性の性質によって収縮する。このタイプのビスケットにリッチテイーとプチベールを含む。

クラッカー

クラッカーは一般的に低砂糖、脂肪含量と記述された食品である。ソーダクラッカーとクリームクラッカーの様に発酵するもの、あるいはスナッククラッカーのような化学膨剤によるものがある。クラッカードウはグルテンネットワークを進め、タンパク質含量がドウ加工にとって重要である。発酵/膨化の間、タンパク質のネットワークは変化する。発酵/膨化の後、ドウはラミネートされ、カットされ、シートにされる。タンパク質変化とラミネートのコンビネーションでクラッカーの特徴的な薄片と火ぶくれしたものを作る。

ビスケット、クッキーの主要成分

ビスケット製造で用いられる中心成分は粉、脂肪/油脂、砂糖である。

ビスケット粉は薄力ウィンター小麦を挽き、低損傷デンプン含有の小麦粉である。粉の力はタンパク質含量の機能である。ビスケット、クッキー用には比較的低タンパク質含量の粉が用いられる。

   薄力小麦は強力小麦と穀粒の硬さで異なり、基本的には遺伝子で、直接の受け継いだ特徴が異なる。砕くか挽いた時、薄力小麦は普通強力小麦より顕著に小さな粒子にバラバラになる。均一なもの一定のものを作ろうとして、しっかりした特異仕様が製粉業者、ベーカリーによって採用されていて、それらは企業によって僅かずつ違っている。それらの名前が示すように、強力小麦はよりかたい。こうして小麦をより細かなサイズに小さくするのにより多くの仕事が必要になる。この仕事の1つの結果として、製粉の間にデンプンの大きな%が損傷を受ける。より大きな損傷デンプン値は、マイナスの要因と見られ、特にクッキー粉ではそうである。クッキーを強力小麦粉で作るとテクスチュアは好ましくなくかたい。ここでは低損傷デンプン含有の薄力小麦粉は、ビスケット・クッキー産業に適している。

   低水分吸収能の小麦粉もまた好ましい。クッキースプレッドの研究で、Millan and Hoseney (1997)は、ベーキングで低水分保持能の粉の優れている事を見出した。Malick and Sheikh(1976)が指摘するのは、粉成分間で強い水の競争どりが顕著に影響するのはクッキーのベーキング性質である;しかし水含量は13%を超えないのが最も適当である。ビスケット粉産業界で用いられた最も適した小麦は、英国、北ヨーロッパのもので、さらにその温度域は秋深くから翌年の秋の初めである。

油脂

ビスケット産業で脂質は非常に重要な成分である。それらは植物の広い範囲から採られ(例えばパーム、菜種、サンフラワー、ココナッツ、植物性油脂、大豆油)と動物起原のものである。ビスケット製造用脂質で有用なものは室温で半固体であり、そのため他の成分とスムースに混合できる。脂質の第1番目の機能は、より柔らかい食品を作り、更にショートな(サクサク)ドウを作る。脂質はミキシングの間ドウに分散することで、滑らかな構造を作り、デンプンとタンパク質が連続ネットワークを作るのを阻止するのに役立つ。最近、Anon.(1997)は、クッキードウ中の脂質の役割をのべ、脂質と水相は撹拌の間粉粒子の表面に対して競合する事を指摘した。脂質は粉が水和する前に粉をコートするかどうかで、グルテンネットワークの形成が阻止される。ベーキングの後、これらの食品の好ましい食感は;かたさが小さい、サクサク間が小さく、口溶けの傾向が大きい。そこでドウの好ましい粘度は、脂質含量増加によって達することができる一方、水量を低下させる事でもできる。

砂糖

ビスケット中の砂糖は、甘いフレーバー、大きさ、色、堅さ、表面の出来上がりに影響する。砂糖はドウ撹拌中、粉との水への競合によってグルテンデベロップメントを阻止できる。シュクロースは砂糖の主体でありビスケット産業で利用される。クッキーが冷却される時、結晶化によってかたくする材料として働き、パリパリ感を与える。しかしVenkateswar and Indrani (1989)は、砂糖の適当量はクッキーでは砂糖の水保持能によるソフトニング剤として機能することを見つけた。一般に砂糖の結晶サイズが増加するのに伴って、ビスケットのサイズ、対称性は減り、一方つまり具合は増加する。

ビスケットドウ

ビスケットドウは凝集体であり、しかしパンドウの伸展性、弾力性の特徴には欠ける。最少のグルテンネットワーク形成のため、焼いたビスケットのテクスチュアはタンパク質/デンプンのネットワークよりもデンプンの糊化と砂糖の過冷却に関係し、グルテンのデベロップメントは小さくなり僅かにハンドリング、形成に粘りを与えるのみである。ビスケットドウは簡単に十分なシートになるような伸展性はある、しかしカッテング後収縮することからビスケットを保持するような弾力性はない;これはビスケットのパッケージ時の可能性を目的としている。Contamine et al., (1995)はミキシング中に注入されるエネルギーとその結果のドウレオロジーとビスケットの性質との間の関係を研究し、その結果ビスケットドウは僅かに弾力性有りだが、十分にエネルギーを与えると伸展性が出て簡単にビスケットの安定的形状を示すと結論した。さらに彼らは、グルテンネットワークがドウに僅かにでき、あまり弾力性はないが凝集性はあると結論している。ドウの粘度とビスケットの品質にとり重要なことは、粉のタンパク質、即ちグリアジンとグルテニン区分である。Gaines (1990)は、薄力小麦粉のタンパク質がクッキードウに機能性を与えると考えるのは誤りであると指摘した。クッキーを焼く時、ドウ粘度は低下し全ての方向に広がり、伸びる原因となった。このベーキングの段階で、薄力小麦粉タンパク質の重要な機能が作用する(例えばドウのスプレッドの低下により)。Doescher et al., (1987)は、粉タンパク質がガラス転移温度に達した時膨潤するーその時連続相あるいはネットワークは形成され、水移動は低下、ビスケットドウ粘度は増え、ドウの膨張は止まるという考えを前に進めた。Weegels and Hamer (1989)は、薄力小麦粉タンパク質が重要な品質のパラメーターを与え、そこにはドウの粘度が含まれるとこの考えをバックアップした。

グルテンフリービスケットの仕込み

グルテンフリービスケット産業では、小麦粉は他の成分に置き換える必要がある。これらの成分は単に普通の小麦粉から来るデンプンだけではなく、タンパク質区分でもよい。次のセクションレビューでは、グルテンフリービスケットやクッキー仕込み中に置き換えるものにアプローチする。

   Schober et al., (2003)は、グルテンフリーショートドウタイプのビスケットをグルテンフリー粉の範囲で作った。コーン、大豆、ミレット、ソバ、米、あるいはポテトからのデンプンをいろいろなタイプの脂質(パーム油、クリームパウダー、microencapsulated 高脂質粉, low-fat 牛乳粉)と混合した。ドウの特徴、ビスケットテクスチュア、色調、水分、大きさ、官能機能(属性)を評価した。米、コーン、ポテト、大豆と高脂質粉のコンビネーションでシートになるビスケットドウを作ることができ、そして焼いたビスケットは小麦粉ビスケットに比較的良く似た性質のビスケットであることが判った。最近多くの研究者は小麦粉に代わりビスケット、菓子、パスタ食品中に偽穀物を用いた。Marcilio et al., (2005)は、精製したアマランス粉含量と脂質含量のグルテンフリービスケットへの効果を研究するため要因設計を用いた。ビスケットの全体的な様相は精製した粉の入れた量によって影響され、一方用いた脂質レベルはポジテブにビスケットのフレーバーに影響した。39人の官能パネルの結果より、アマランスンス粉はグルテンフリービスケットの製造に効果あると結論された。アマランスの重要な栄養的性質、例えばメチオニン、システイン、リジン、ビタミン、ミネラルを考慮に入れながら、 アマランス粉に小麦粉を置き換えた時、グルテンフリー食品の製造に好ましかったのは高タンパク質、高エネルギー値であった。Hozova et al., (1997)は、完全な栄養、官能、微生物的評価、好まれる成果をもとにアマランスを含むクラッカー、ビスケット製造に着手した。しかしながら彼らは、4ヶ月以上トライアル期間を行い、ビスケットの全バクテリアカウントは103CFU/gという受け入れ限界以上の値であることが判った。例えば不適当なパッケージ、あるいは粉中のスポアの存在が微生物的損傷を引き起こすと指摘された。にもかかわらず、著者らは保存安定なアマランス食品はグルテンフリー食品に薦めるべきと結論した。Tosi et al., (1996)はグルテンフリービスケットに全粒アマランス粉を用い、脂質に0.1%ブチルハイドロキシトルエンを添加するとフレーバーに影響することなくシェルフライフを伸張することを見出した。これらのビスケットのタンパク質含量(5.7%)は非アマランス含有グルテンフリービスケットの平均値よりも高かった。Schoenlechner et al., (2006)はアマランス、ソバ、キノアを255075100%レベルでグルテンフリービスケットを作った。ビスケットのパリパリ感はソバ>キノア>アマランスの順序であり、ビスケットにソバ、アマランスを入れると官能試験で好まれた。

   ソルガム粉はグルテンフリー焼きもの食品で一般性を強くしており、殆どは小麦の栄養価に似ているのが原因で、色は軽く、フレーバーに風味がない。Dahlberg et al., (2004)は、いかにソルガムがそのユニークなフェノール成分とデンプンの性質のため、パンやビスケットの様な健康的で栄養的グルテンフリー食品に適しているかを述べた。さらにTaylor et al.,2006)は、ソルガムのフェノール成分、抗酸化活性レベルの高いことを強調した。100%ソルガムあるいはパールミレットのクッキーが作られたが、 "かたい、ハード、砂のようなざらざら感、粉っぽい"と述べられた。いろいろな添加物(小麦粉脂質、未精製大豆レシチン、粉の水和、ドウpH増加)を通じて改良された。そして著者らは、ソルガムの極性脂質の欠如が小麦に比べクッキーの品質低下に一部関与していると結論した。しかしながらこの問題は抽出程度の変更、ソルガム粉の粒子サイズの変更、あるいはまた仕込みの変更によって乗り越えることができるだろう。

結論

ビスケット、クッキー製品の広範囲の利用が今日マーケットで行われている。ビスケットはその仕込みによって分離され、メインのタイプは一般にショートドウ仕込み(脂質、砂糖の高比率を含む)、あるいはハードスイート、セミスイート仕込み(ショートドウ仕込みより低レベルの脂質、砂糖)である。ビスケット粉は、ソフト冬小麦で挽かれ低損傷デンプン含有で、低水分吸収能である。グルテンフリービスケットを作る時、小麦粉とその成分(デンプン、タンパク質等)を他の成分に置き換えねばならぬ。今日では、広い種類の成分、そこにはデンプン、偽穀物、ソルガム、ミレットが研究され、いろいろなレベルで成功を納めている。研究はまた、グルテンフリービスケットの栄養的価値を高めるためにアマランスのような成分を利用することに焦点を絞っている。