ヤマイモのうちジネンジョは日本独自のものです。このジネンジョが鹿児島の名物であった事から、カステラが安土桃山時代にポルトガルから日本に入ってきた時、これを模して、島津のお殿様は自分のところの和菓子職人に命じてジネンジョでカステラを焼かせたという伝えがあります。これが今日のかるかんと言われています。

我々の所ではグルテンフリーのパンの研究を進めています。小生のところの卒論生の志村さんは、この仕事を集中的にやってくれた。ジネンジョ、小麦デンプン、イースト、砂糖を混ぜ、水を加えて製パンプロセスをふませると、膨化してパンのようなものに変る事がわかりました。


彼女はこのジネンジョの成分がどのようにパンの構造に関わりを持っているのかについて興味を持ちました。まずジネンジョ粉に加水し、これを自動乳鉢で十分に懸濁し、遠心分離後、沈殿と上清に分け乾燥しました。それぞれを用いてパンベーキングしてもパンの膨らみは得られませんでした。

ドウにねばりが生じないのです。ところがそれらを合一するとねばりが生じ、パンは良く膨化するようになりました。ジネンジョのねばりの本質を見ているようでした。

すなわちヤマイモのねばりは高分子量区分(複合タンパク質とかーーー)と低分子量物質が必要であり、それらがお互いに絡み合ってあのねばりが生じるのです。

更に志村さんは、この低分子量物質をペーパークロマトグラフィー(PPC) に供し、ピリジンーブタノールー水(4:6:3)の系で展開し、AHP発色、ニンヒドリン発色を行ってスポットの糖区分とペプチド区分を確認しました。PPCの上部の方にくるのは糖質区分、下部にくるのはニンヒドリン発色部が集まりました。厚手濾紙を用いてペーパークロマトグラフィーに供し、沢山の低分子量物質をクロマトして、切り出し、両区分を分離し、水で紙から溶出し、それらをジネンジョの高分子量区分とブレンドしてパンベーキングを行いました。

その結果、ペプチド区分の方にねばりを出す物があり、パンは膨化しました。

ジネンジョのねばりから生じるグルテンフリーのパンの膨化は、ジネンジョの高分子量区分とペプチド区分とのインターアクションで生じる事が推察されました。

それら分子の絡まるメカニズムなど興味深いですね。一般にねばるというメカニズムはなにか?こんな解析から本質が見えてくるかもしれないと思ってます。パンを使ってジネンジョの粘性の本質が掴めそうです。

高分子量物質と低分子量物質のからみがねばりを発する事は十分にあり得ます。低分子量物質がブリッジの様なものを作っているのでしょうか?

小麦グルテンのねばりなども、このように低分子量部分のからみなどとともに研究してみるのも何か面白い発見に繋がるような感じもしています。

ノンノ

  さん

こんにちは。
はじめまして、ノンノと申します。

以前から瀬口先生のブログを楽しく拝見させていただいておりました。
その中でも特に、ヤマイモの持つ粘りをを利用し、グルテンフリーのパン作りによるCeliac 病への研究にとても関心を持っております。
そして、勝手ながらCeliac 病はもちろん、現在日本で増え続けている小麦アレルギーも子供たちへの安心・安全なパン作りにも繋がるのではないかと、大きな期待も感じています。

私自身、パン好きということもあり、家でパンを作るという楽しみも持っております。
最近では健康ブームと共に、家庭で気軽にパンが作れる機械も話題となったせいか、ネットでさまざまなレシピもたくさん検索できるようになりました。
ブログにもありました小麦ふすまや、ブームとなったおから、米粉パンもよく見ますし、
また、最近ではでんぷんを主体とするイモ類とは異なり、その主成分が「イヌリン」という難消化性多糖質の一種を用いた糖質制限の方向けのパンも登場していることに大変驚きました。

瀬口先生のブログを拝見させていただきながら、さまざまなパン作りへの研究の奥深さを、さらに実感しております。
まだまだ専門的な知識にはついていけない私ですが、瀬口先生のブログと共に、勉強していきたいと思っております。

返信

平成9年度卒生です。

  さん

瀬口先生 おなつかしいです!!
先生の授業はとても楽しくてよく覚えています。
新しいパン作りを通して、学生時代に
養ったチャレンジ精神をもとに
病者用食品販売店ドクターミールに勤めて
低たんぱくパン(葉酸入り)をコーディネイトして
商品化しました。

ドクターミールは小売業が主なのですが、
いろいろとアイディアを出してみたところ
採用してもらえたのです。

今度は売らなくちゃいけないので
超えなくちゃいけないハードルはたくさん
あるのですががんばっています。

返信

ダンボ

  さん

先生が以前述べておられたおられたCeliac disease
に対する研究進んでいるようですね。

日本は西欧化が進んでいますので、日本でもグルテンが
係る、小腸粘膜に障害を起こす病気対策として、研究が
進めば嬉しいです。

返信

aZuuuuuuu

  さん

パンの生地を山芋由来にした場合、同じ大きさのパンを作る為に小麦粉よりも山芋の使用量は多くなるのでしょうか?それとも少なくなるのでしょうか?
ヘルシーなパンになったら嬉しいですねー♪

返信

オサム

  さん

なるほど、お好み焼きに山芋を入れて
ふんわりするというのも
多少関係しますかね?

しかし自然薯の
高分子量区分自体はグルテンフリーなのでしょうか?
タンパク質としては別物なのでしょうか?

返信