ホットケーキを焼く時に、まず小麦粉、副原料へ水を加え、そしてミキサー中で撹拌という事になりますが、この撹拌中に水を嫌う(疎水的)小麦粉は強制的に水と馴染ませられて、バッターを形成して次のステップにむかいます。


この撹拌の操作は、小麦粉中の各成分間に色々な関係を作らせてゆくと思われます。特にクロリネーションによって、小麦粉酢酸分画4区分(水溶性(W) 区分、グルテン(G) 区分, プライムスターチ(PS) 区分、テーリングス(T) 区分)間は、その未処理のものに比べ大きな変化が起こされているはずです。

小生の研究では、クロリネーション小麦粉中の変化をみることでクロリネーションによるホットケーキ改良効果の原因の切り口を見出してきました。小麦粉を酢酸分画法によって、W, G, PS, T区分にわけて、特にPS区分の疎水化がホットケーキの弾力性改良に大きく結び付く事を見てきたわけです。

クロリネーションによって小麦粉中に起っている変化がバッター調製時にどのような変化として出てくるのか?クロリネーションによるPS区分の疎水化がどのようにバッターに影響しているのかが興味あるところでした。

 Sollarsの酢酸分画法(Cereal Chem 35,85-99, 1958)を用いて、分画実験をやってきましたが、かなり強く小麦粉をクロリネーションするとPS,T区分の分離しなくなる事が観察されました(聖母女学院短期大学「研究紀要」12, 63-70, 1983)。


Sollarsの分画法には、ワーリングブレンダーを用いた 極めて激しい撹拌方法が用いられていました。これは小麦粉/水懸濁液を強くモーターで撹拌し、泡のかなりたつやり方です。この方法で強引に小麦粉を分画してしまうと、小麦粉各成分間に生じている弱い相互関係の力は見えなくなってしまいます。それでも強くクロリネーションするとPS,T区分が遠心分離しても離れなくなったという事です。


従って、この方法ではわずかのクロリネーションで生じた疎水化による小麦粉成分間の弱い相互作用は見えにくくなっているはずです。そこでワーリングブレンダーのような激しい撹拌ではなく、バッター中に生じる弱い相互作用を壊さないで、酢酸分画できる方法はないかとさがしました。


いろいろ検討した結果、自動乳鉢を使ってうまくゆきました(Cereal Chem 75, 37-42,1998)。

この自動乳鉢を用いた方法とは、乳鉢中の小麦粉/水懸濁液を電気的にゆっくりした回転で一定時間乳棒で撹拌する方法です。

これでやると、泡もたてずに手で乳鉢中のものを潰すように、撹拌する事が出来ました。こうしてWS, G, PS, T区分を均一に再現性よく分画することができました。これはホットケーキバッター調製時の撹拌と同じ状態で小麦粉成分間の相互作用を見る事が出来ました。


クロリネーションで小麦粉PS区分の疎水化の力が大きくなり、T区分との相互作用が強くなり、遠心分離操作しても分離しなくなったのです。この力はホットケーキベーキング時にもバッター中に生じ、ベーキング後もホットケーキの組織弾力性に大きな働きをしているものと推察されました。

RYU

  さん

専門用語がたくさんなので、、理解がなかなか出来ていないですが・・(涙)ホットケーキを作るにも、こんなに専門的に研究されているんだなと感じました。

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オサム

  さん

あんまり激しく撹拌すると
膨らむホットケーキも膨らまなくなるということですか?
まあ、ワーリングブレンダーというと
調理用のミキサーのプロ仕様みたいなもののようなので
あまりホットケーキに使う人はいないと思いますが・・

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ダンボ

  さん

私にも少し、先生が記述されている内容が、頭に浮かんできたと思ったのですが、やはり難しかったです。“バッター”なる用語が出てきて何の関係があるのかと想いましたが、これも料理の専門用語でした。

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