さらに小麦デンプン粒の構造についてお話いたします。
SDS ( Sodium dodecyl sulfate=ドデシル硫酸ナトリウム)は、難溶性タンパク質を可溶化抽出するのに都合のいい試薬です。SDSは、我々の歯磨きチューブの中にも入っていて、歯磨きした時、我々の口腔内にへばりついた脂質、タンパク質残さなどをきれいに清掃してくれ、口の中をさっぱりしてくれるものです。
この試薬にさらにタンパク質のSS結合を外すため、少々還元剤も入れ、それでデンプン粒表面を洗浄しました。そうするとタンパク質は外れ、共に脂質や粒表面の可溶性デンプンを含めた炭水化物なども外れてきます。しかしデンプン粒自体は加熱しない限り粒形を保っています。
この条件でほぼ1日ぐらい室温で撹拌すると、これらのものはデンプン粒本体からはずれ、さらに新鮮な洗液に切り替えて洗浄すると、2日目からはデンプン粒から炭水化物のみが抽出されてきました。
こうして続けると、4日目には粒は顕微鏡下で新しい形を示すようになりました。これを偏光顕微鏡で見ると、扁平な形のデンプン粒が見え、その内部が透けて見えるようになりました。内部には2重構造が見えてきました。円形の中にさらに中心部に小型の円形のものが見え、外側の周縁部には放射状のスカート状のラインが多く見えてきました (Cereal Chem, 66:193-196 1989)。
はじめこれは、粒表面のものが、刷毛のようなもので取り去られ、表面の模様が見えていると思いましたが、電顕(SEM)ではこの模様がみえなかったので、デンプン粒内部が光で透けて見えたのだと思いました。
SDSでデンプン粒を洗浄することでまずタンパク質、脂質が外れ、それとともに表面部のソフトなデンプン部が溶け出たのでしょう。
さらに続いて内部のデンプン部の弱いところから溶け出て、粒骨格構造がはっきり浮き出て見えるようになったのです。
それは、例えばビルデイングのセメント部が外れ、抜け落ち、残った骨格の鉄骨などの強固部分が残って、それが外側から見えたのです。
こうなると、こうして外部から弱い構造を外して外からみるのではなくて、何とかしてデンプン粒の内部を開いてみたいと思いました。
そのものズバリ、デンプン粒を開けてみたいと思うようになりました。
次回です。
ダンボ
さん昔、料理人の世界、とくに和食の料理人は、調理法をその弟子であっても教えるはことは稀でした。
従って、見様見真似でいろいろな食材の扱い方、調理法をその修業中に覚えていったものです。
新しい料理を提供するときは、食材の構造・特性が科学的に解明されていなかったので、試行錯誤の連続でした。
今は、それぞれの食材の構造等の研究が進み、料理人も腕だけではだめな時代になったようです。
オサム
さんクロリネーションから
少し離れていく感じですが
これはこれで興味の沸くお話ですね。
内部構造と言うと
とりあえず見ておきたいものです。
RYU
さん突き詰めていくと、、1つのものでも、、終わりがないのですね。。
突き詰めれば、突き詰める程新しい発見があるから、研究は終わりがないのですね。
ぴー
さん「でんぷん」というだけでかなり小さな世界なのに、さらにそれをひも解いていくと、全く知らない世界が広がっているのですね。
面白いです。
やきりんご
さんとても興味深いです。
デンプン粒を透かしてみたことも、もちろん、その中を開いてみたこともありません。
どうなっているのか、気になります。
興味を持ってその謎を解明しようと取り組む事が研究には必要不可欠ですね。