小麦粉クロリネーションのかわり、食の衛生上安全な、しかもおいしいホットケーキを得るための別の小麦粉処理方法はないだろうかと次に考えました。

ハロゲン元素がこのような形で体に入ることは心配だからです。

イギリスの古い論文(J. Food Technol. 5:363.1970) で、小麦粉クロリネーションのかわり、熱処理の論文がありました。大変に興味がありました。しかし論文を読むと、単にロースターで小麦粉に熱をかけ、ケーキの容積変化を見ているだけの論文でした。

当方のホットケーキの場合、これまでお話ししたように、容積変化よりケーキ組織の弾力性が問題でした。観点が異なります。

クロリネーションで生じたデンプン粒表面の疎水化がホットケーキ組織弾力性に大いに関係するのです。この論文ではこの観点から全く調べられていません。この論文は、果たして当方に何かメリットがあるだろうかどうだろうかと思いました。


当方の結論は、クロリネーション小麦粉を用いたホットケーキ組織には弾力性が生じ、その原因が小麦粉のPS (プライムスターチ)区分の疎水化(親油化)に結びつく、というものでした。

小麦粉のPS区分とは小麦デンプン大粒のことです。

その粒表面タンパク質のクロリネーションによる疎水化が、ホットケーキバッター中の気泡の安定化を引き起こすこと、さらにPS区分(40%)とT(テーリングス=小麦デンプン小粒、ふすま、水不溶性タンパク質、多糖類等のゴミ集合体のようなところ)区分(40%)の間で凝集のおこること、がホットケーキ組織弾力性強化の原因と述べてきました。

同じことがこの熱処理小麦粉でも得られるものなのかどうか、全く情報はありません。クロリネーションのような小麦粉の化学処理とは違い、この熱処理は物理的処理です。多分違うだろうというのが私の予想でした。

もし小麦粉の熱処理でホットケーキ組織弾力性が得られるならば、その際にはその小麦粉中のPS区分に疎水性が表れないと話が合いません。

もし表れないとなると、これまでの研究結果はすべてチョンボになります。

ホットケーキベーキング試験の前に、まず小麦粉を乾熱処理(電気乾燥機中で乾熱処理する)して、PS区分に疎水化(親油化)が生じるかどうかのチェックが必要です。

鉄板トレー上に小麦粉厚さ1cmほどにセットし、120℃を中心にいろいろな温度で一定時間乾熱処理しました。そこから小麦粉を酢酸分画してPS区分(デンプン大粒区分です)を得ました。

そしてこれまで通り疎水性を調べるため、親油性試験を行いました。

試験管中にデンプン大粒を入れ、水を入れ、液状油を入れ、激しく撹拌したのです。

すると何とクロリネーション同様に強い親油性を示したのです。

これには驚きました。

さらに未処理小麦粉から得たPS区分を、直接に加熱処理(120℃、2時間)しました。やはり同様に強く親油性を示しました。もちろん未処理のデンプン粒には油は全く結合しません。


更につづく。

ダンボ

  さん

塩素元素に係る心配をしなくてもよい方法が
あるのですか?
また、急展開するかもしれませんので、ぬか
喜びはできませんが!

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shin

  さん

強い親油性を示すことを発見したときの驚きは相当なものだったと察します。奥が深いです。

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ぴー

  さん

ホットケーキで本が書けるくらいに、奥が深いのですね。
今度家族にも伝えたいです。

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RYU

  さん

昨日テレビでやっていましたが、炊飯器でホットケーキってつくれるんですね。。

かなりふわふわにできてました。。

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sai

  さん

乾熱処理でも、塩素処理同様にデンプン粒へ疎水性を与えるとは驚きました。また、全く異なる処理で同じ効果を及ぼしたことがとても不思議です。

この2つの処理がデンプン粒にどのような影響を及ぼし、疎水性を与えたのかが気になります。

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