これまでのホットケーキの話を続けてきました。その結果ホットケーキのおいしさを示す弾力性(ホットケーキの)や膨らみ等の改良について考えてきました。特にその弾力性、口腔内での咀嚼時のスポンジ性が何と言ってもケーキの命であります。

小麦デンプン大粒表面の疎水化とクロリネーション、乾熱処理、エージング、そしてホットケーキの弾力性との関連について長々とお話ししてきました。

その中でいろいろな新しい知見もえられ、逐次国際誌(Cereal Chem., J.Food Sci., Starke, FSTR等)に発表してきたが、国内ではこれらの論文に付いては殆ど評価されなかったことが印象的でした。


丁度そのころ、本学からそう離れてはいない製菓用小麦粉を作っておられる製粉会社から小生の方に関心が向けられました。「昔から製粉したての小麦粉をカステラ製造メーカーに持っていっても、すぐに返品されてしまう。理屈は分からないがこれまでの経験から、引き立ての小麦粉を袋に入れて暗所で1年間ほど寝かせると、彼らに満足を与える小麦粉が得られるのだ」と言われる。

しかしながら長時間小麦粉をエージングしておくことは商品の回転効率がよくないかもしれない。

なぜこうして寝かせておくことが必要なのか、もっと短時間で同一効果のものは得られないだろうかとのお問い合わせでした。

当方丁度そのごろホットケーキのエージング、乾熱処理の実験を進めていたころでした。これは良く似た話で、ホットケーキがカステラに置き換わっただけではないかということです。

共通の問題解決ができよう、ということで直ちにカステラ用小麦粉を数種類いただき、研究に入りました。


神戸女子短期大学の中村 智英子助手がこの問題に着手しました。彼女は小麦粉を約2年間、室温でエージングしてサンプル調製しました。

彼女はそれらの小麦粉を用いて、片っ端からカステラベーキングを進めました。カステラの焼き方はデリケートなところがありましたが、精密な中村氏の集中的な実験で、再現性良くデーターを得てゆきました。小麦粉はこれまで通りエージングで疎水性を示すようになり、彼女はこれをミキソグラフ装置を用いてデーター化してゆきました。更にこの小麦粉を次々に酢酸分画し、得られたPS, WS, G, T区分の各比率の違いとエージング時間の関係を検討してゆきました(Food Science and Technology Research 13, 351-355, 2007) 。



カステラという菓子は、卵が勝負であり、小麦粉はある程度その副成分ぐらいのものと影の薄いきらいありましたが、しかしその小麦粉のカステラにおける役割り、重要性も確認できました。これもホットケーキの時と同様でした。

続く

R.T

  さん

たとえば料理番組で

料理をしている人の隣で
「このホットケーキの弾力性はですね…」
等々、科学的な知識も一緒に提供しちゃうというのはいかがでしょうか。

なかなかおもしろそうだと思うんですが(^^)

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tomato

  さん

カステラに関しては、ひきたての小麦粉はダメなんですね。寝かせる事で、どんな効果が得られるのでしょうか。弾力性などにも大きな違いが出るのでしょうか。続きが気になります。

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オサム

  さん

カステラはずいぶん古くからあるお菓子ですが
小麦粉の製粉制度による違いはあまり関係ないのでしょうか?

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shin

  さん

ホットケーキに引き続き、カステラの奥深さが明かされていくのですね。楽しみにしています。

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偽PT

  さん

難しくて私には、理解できませんが、カステラとスポンジも小麦粉が大事なんですね。

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ぴー

  さん

カステラもホットケーキも、小麦粉に支えられていたのですね。
小麦粉を寝かせる。。。家ではなかなか大量に使えないので普通のことですが、重要なことだったのですね。

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