カステラは前述のように、強い卵白の起泡性を利用した食品(菓子)です。

この卵白のアワの性質は調理でよく使われるから、一般によく知られているところです。小麦粉に卵を入れてよくホイッピングしてつくるスポンジ、パウンド、あるいはハイレシオケーキなども同じことで、この卵白アルブミンのアワ(起泡性)を利用した食品です。


カステラの場合、ケーキなどと違って卵の量が比較的多いのが特徴でしょうか。ホットケーキなどは膨剤(ふくらし粉)を使って、そこからのガスを小麦タンパク質などでキャッチアップして膨化させます。

カステラの場合には、十分のホイッピングで起こした卵白の気泡のバッター中に小麦粉を加えて、更に撹拌してよく小麦粉と馴染ませたカステラバッターを作り、これをオーブンで焼くのです。


オーブンでは強力な熱エネルギーがかかるために、卵白だけだとそのアワは全て破壊され、ゴムの板状になってしまいます。

小麦粉をカステラバッターに加えるということは、この卵の気泡を小麦粉がオーブン中でも安定化し、カステラの組織をつくる点でしょう。

この時アワの疎水的表面に疎水的な小麦デンプン粒あるいは小麦粉が付着してこのアワを安定化し、カステラ組織形成に貢献するのでしょう。


オーブン中で加熱され、卵白膜中の水分は小麦粉、特にデンプン粒に吸収され、デンプン粒の糊化は進み、ゾルはゲルに変ります。

この時の卵による気泡の安定化がカステラ組織をつくり、あるいは最終的なカステラのふくらみ、食感に大きく貢献してくるのです。


製粉会社は新しい小麦を挽彩して、その小麦粉をすぐにカステラ職人のところへ持っていっても"この粉では駄目だ"と追い返されるそうです。"古い粉をもってこい"と言われ、なぜかわからないところです。カステラ職人はその小麦粉の善し悪しがすぐに分かるようです。


カステラ職人の求める良質の膨らみ、食感と言うものは、新しい小麦粉では得られない、古い、枯らした小麦粉でないと出来ないと言うのです。

その枯らした小麦粉の良さのメカニズムが永く不明でした。しかし長い小麦粉の歴史(パンの歴史は6千年以上)の中で経験的には知られていたのです。即ち小麦粉のねかし(エージング)です。小麦粉を挽いてすぐにカステラベーキングには用いないという点です。



製粉会社は新しい小麦粉を紙袋の中に入れ、これを風通しのよい場所で約1年間ねかし(エージング)、枯らしてからカステラ職人のところへもってゆきます。


この枯らした小麦粉が、カステラベーキングには必要なのだそうです。

それは何が原因なのかと言うことです。

つづく。

tomato

  さん

卵白膜中の水分が小麦粉のデンプン粒に吸収される時に、古い小麦粉の方が、吸収の点で利点があるのでしょうね。寝かせる事で、どんな変化が現れるのか、気になります。
カステラの美味しさも、奥が深いですね。

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mottei

  さん

お菓子作りのポイントは、新鮮な牛乳や卵と聞いていましたが
カステラは例外なのですね。
パウンドケーキなどは、1日寝かせた方がしっとりして美味しい(私は焼き立てが好き)という方もいらっしゃるので
そういったものなのでしょうか

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ダンボ

  さん

経験的にしか知られていなかった枯らした小麦粉の良
さのメカニズムを、ひとつひとつ解明し、食生活向上
に導いて行ってらいたいものです。

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ちび太

  さん

小麦粉を寝かす、びっくりです。
何もかも新しいものがいいというわけではないのですね。

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ノンノ

  さん

新しい小麦粉ではダメ。
カステラを作り続けていた職人さんだからこその目利きでしょうか?
でもそこにはダメだという理由が必ずあるはず。
それが本当に美味しいカステラを作るコツなのかと興味深く感じました。

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まっきー

  さん

カステラの膨らみ、食感には枯れた小麦が必要とは驚きです。
ブログを拝見する度に奥が深いのだなと感じます。

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ゆん

  さん

何でも新しければよいというわけではないのですね。
敢えて枯らした小麦粉を使う理由、
続きがとても気になります。

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匿名

  さん

材料1つ1つに役割があるんですね!
とても興味深く感じました。

最初に作った人はすごいなと思います。

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りっちゅ

  さん

良質なカステラのふくらみが新しい小麦粉ではでないというのは驚きでした。やはり熟成というのはどのような食材にもあるのですかね…。化学のなかにも心あたたまる現象だと感じます。

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zoyu

  さん

最近は「半熟カステラ」というのをよく目にします。私は食べたことがないのですがカステラと呼べるのかどうか…疑問です。

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ぽん

  さん

職人さんって凄いんですね。それにしても、アンチエージングが叫ばれる中で、エージングが求められているなんて面白いですね。料理の世界では寝かすことも多いようですし、つづきが気になりますね。

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偽PT

  さん

カステラ職人の小麦粉をみる目はすごいですね。自分には全くわかりません。
次回もお願いします。

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ジョー

  さん

カステラはしばらく食べていないような気がします。

すごく甘いというイメージがありますが、元来甘い食べ物だったのでしょうか。

気になりました。

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オサム

  さん

寝かす時間と熱処理温度の関係は
基本ホットケーキのお話と同じなのでしょうね。
なぜ寝かしただけで
熱処理した時と同じ変化が起こるのでしょうか?

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shin

  さん

カステラの膨らみや食感に、小麦粉の新旧が関わっているとは、初めて知りました。おうちで作るときにも意識してみようと思います。今後、そのメカニズムが明らかにされていくのが、楽しみです。難しい化学反応のお話についていけるか少々不安ですが・・・

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まな

  さん

おばあちゃんの知恵袋のように、
昔からの感覚や言い伝えの様なものが
お菓子作りにもたくさんあるんですね。

そのひとつひとつが科学で証明されていくって
おもしろいですね。

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Azzzuu

  さん

昔、ケーキ屋さんで新米パティシエの人が納品の時に新小麦をたくさん買ってしまって怒られたというお話を聞いた事があります!
「新米」と言う語源もこれに由来するのでしょうか?まだまだ使い物にならないという意味!?

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りんご

  さん

カステラ職人さんの目利き力!
すごいですね!
粉だけをみてわかるとは、
どんな基準でみているのか!
次回のブログ楽しみにしています

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ぴー

  さん

新しい方が良いと、感覚的に思ってしまっていました。
しかし、「枯らす」ことの良さもあるのですね。
カステラ、大好きですが、大人な食べ物のような気がしてきました。

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ふたちゃん

  さん

古い小麦粉がいいんですね。

熟成した方がいいということなのでしょうか…

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トーテム

  さん

熟成させた方がよいってことなんでしょうか?
次回を期待してます。

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ちろ

  さん

古い小麦粉の方が良いというのは初めて知りました!!
食材は何でも新鮮なものが良いと思っていました!

次回のブログ楽しみにしています♪

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Pig。

  さん

野菜を使う料理は新鮮野菜の方が美味しいイメージですが、
古いほうが美味しい場合もあるんですね。
カステラ作りのコツを聞いた気分です♪

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ミー

  さん

古い小麦粉の方がいいなんて驚きです。理由が気になります。
「枯らした」と表現されているので、古い小麦粉の方が卵白膜中の水分をより吸収するのでしょうか?

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