冷凍によってイーストが破壊されるとか、グルテンタンパク質やデンプン粒等の小麦粉成分が化学的な変化をおこして製パン性が低下するというのではないというデーターが得られました。


パンドウを?20℃で冷凍してさらに解凍すると、パンの膨らみや高さ等の製パン性が低下するのは、イーストの破壊や小麦粉成分の化学的な変化によるものではないでしょう。


例えば冷凍でデンプンのグルコシド結合や多糖類等の結合が破壊されたり、グルテンタンパク質のペプチド結合等が破壊されたのではないでしょう。

テストに使用中のイーストの命も,この程度のフリーズでは死なないのでしょう。

ならば、すでに醗酵も終え、そのまま焼けば満足のゆく製パンの可能なパンドウを、その直前に冷凍するとなぜ駄目になってしまうのかという疑問です。


担当の森元さんの考えたアイデアは次のようなものでした。

パンドウ中のデンプンやグルテン等小麦粉成分とうまく馴染んだ水は、冷凍することによって氷結晶となります。その際水分子は自分の関与していたものと外れ、ひたすら水分子だけが集合して氷結晶になるのです。そしてタンパク質、デンプン等の馴染んでいた相手と一度水分子が離れると、解凍時にはこの引き離された水は元の状態にもどらないのだろうと。


彼女は、それならば解凍したパンドウをもう一度、染み出た水も除去しないで、もう一度一緒に撹拌操作してはどうか、そしてもう一度新たなイーストの力を使って、ガスをイーストドウ中にため、そのときにイーストの餌として砂糖も添加して膨化したパンドウを作り、これで製パン試験してはどうかと考えました。


こうして製パン試験を行ないました。

結果は思った通り、パンは良く膨らみ、満足のゆく製パン性を得ることができました。

このことは小麦粉成分には全く冷凍によるダメージはなく、単に水の遊離の問題だけであったということです。

彼女はこの時、イーストのみ入れ、砂糖を入れなかった場合もやりましたが、イーストが餌なしのためか膨れませんでした。

こうしてパンドウの冷凍の場合の、製パン性劣化のメカニズムが明らかになりました。


パンが膨れるために必要なドウ中の気室の壁から水分が抜け、本来の粘弾性が失われたのがこの原因でした。


冷凍によっても水をいかに小麦粉成分から簡単に外れないようにするのかが冷凍ドウの場合には問題となるようです。


次に。

らぁる

  さん

イーストアは餌がないと膨らまないのですね。

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まき

  さん

なるほど、水の遊離が問題だったんですね。
パンに関わらず冷凍とする際の水分は
なかなかやっかいなのだと感じます。

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ひぽぽ

  さん

パンに限らず
水分の量は食べ物の質などにも
大きく関係していますよね。

冷凍したときに、
いかに水分を小麦成分から外れないようにするか、
どのようにされるのか気になります。

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ジョー

  さん

ページのヘッダーにあるパンは何パンでしょうか?
とてもおいしそうです。

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ミカン

  さん

解凍してから、また再度作り直すという
考えがすごいですね。そうきたか!って感じです。
実験って面白いですね。

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りっちゅ

  さん

よく食パンは冷凍して保存しますが風味とかは劣りますよね。
イーストが関係しているのでしょうか???気になりますね

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ふたちゃん

  さん

パンを冷凍するという行為は、単純に冷凍するだけではなかったんですね!
とても奥が深いです。

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tomato

  さん

最近スーパーでも冷凍パンの販売があります。
こういった研究のお陰で、冷凍パンも完成しているのですね。
イーストや、小麦粉成分は、-20℃より更に寒い環境下でも変化しないのでしょうか?

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オサム

  さん

やはり冷凍食品のドリップが出るのと
同じような事なのですね。
ただ、一旦出た水をもう一度練り込んでも
同じように再生できるのは、すごいような気がします。
練って凍らせただけであれば
細胞内の水と言うわけではないですからね。
CAS冷凍のような方法を使えば
うまく水が出ないで冷凍解凍が出来るのでしょうか。

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ミー

  さん

なるほど!納得です。

前回のブログ内容から
予測したこととは異なりましたが
意外とイイ線いってました(笑)

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