前述の森元さんは、更にこの時のこと(一度冷凍したパンドウを解凍して焼いた時、その膨らみ等が大きく劣化するが、その解凍したドウを再度イースト、砂糖を加えて撹拌、醗酵すると製パン性が元に戻るということ)を、確認するために以下のような実験を行ないました。
即ち、彼女は冷凍、解凍によっても小麦粉成分には大きな変化の無いことを証明するために、この解凍したパンドウの粘弾性の変化を以下のように調べました。
ガラス容器の中にパンドウを入れて、これをガラス容器ごとアスピレーター(減圧装置)で減圧にしたのです。パンドウはさらにプラスチックの筒の中に入っています。筒はガラス容器中に立っていて外部からパンドウを観察できます。
減圧にすればパンドウ中の気体が膨張して、引きのばされて筒の中を上に上にと伸びてゆきました。パンドウの気室の膜が伸びてゆくわけです。これを外部から写真にとり、その伸張(mm)スピードを測定したのです。
コントロールドウの伸びに比べて、冷凍、解凍したドウはその伸びが悪く、コントロールドウの約6?7割ぐらいの伸びでした。
冷凍、解凍したドウにイースト、砂糖を加えて、撹拌、醗酵させ、製パン性の回復するパンドウを作りました。そのパンドウは、このやりかたでコントロールとほぼ同一の伸びを示しました。
このことは、やはり小麦粉成分の冷凍、解凍による変化は少なく、まさに水の遊離によってドウの粘弾性低下が生じ、しかし一度冷凍、解凍しても再度そこに以前のような水の存在があれば、同一の粘弾性を示すのだということが示されたのです。
彼女は、真空状態でドウを引っぱり、ドウの粘弾性を調べたわけで、製パン時のようにイーストガスによる内部からドウを押す圧力ではなく、ドウを外部からひっぱってこの粘弾性を調べたわけです。
更にドウから冷凍、解凍で染み出た水のことが気になりました。
みなさんはお麩の作り方は知ってますか?
グルテンに多少のデンプンと小麦粉を加え、水で良く捏ねてそのまま高温度オーブンの中でお麩は調製されます。その膨化のメカニズムは、ドウの中にたっぷり含まれた水を強引に強熱で蒸発させドウを膨化させるのです。そして熱で固めたのがお麩ですね。
冷凍ドウでパンベーキングするとパン表面に梨肌が生じ、これもトラブルです。
パンの表面には梨肌をもっと大きくしたおでき状の組織もたくさん出来ます。これらは解凍時、ドウ表面部に生じる水がお麩同調、オーブンの高温下で蒸発し、表面の薄い皮を押しあげけて膨らむのでしょう。ドウから冷凍、解凍時、遊離した水が蒸発してドウを膨らませ、それがお麩状になって梨肌となるものと考えました。
森元さんは、解凍パンドウでお麩を作りながら、冷凍、解凍時に本当にドウ中に水が遊離することの証明をしようというのです。
次に。
トーテム
さんいかに水分を操るかが重要なのですね。
よりおいしい冷凍パンを作ったり、新しい食感のパンを作ったりと色々と実験ができそうですね。
Pig。
さん麩の作り方を初めて知りました。
途中まではパンと麩はいっしょということでしょうか。。
tomato
さんこの結果があれば、最近売られている冷凍パンは、冷凍前の状態と、特に成分が変わらないという事なのでしょうか。細かな事は良く分かりませんが、水分を元に戻すために、砂糖やイーストを使っていますが、ただ単に水を戻すのはダメなのでしょうか。こういった技術を次に活かして、どんな事が出来るのか楽しみです。
偽PT
さんお麩の作り方は初めて知りました。普段、どうやって作られているか考えず食べているので、勉強になりました。
ジョー
さんパンの奥深さが伝わります。
麩の入った味噌汁が飲みたくなりました。
玲
さん麩ってそんな風にできてたんですね!
初めて知りました。
どうやってできてるか知らないのに
食べてるものって結構あるなーと思いました。
勉強になりました。
ありがとうございました。
鳳 賢治
さんパンの膨張には水分の移動がかかわっている。
パンドウの粘性には水分の保水性がかかわっている。
食品には少なからず含まれているものであるが、
本当に水分が与える影響の大きさはすごいものだと感じました。
これ以外にも、温度や湿度、圧力にもまた異なった変化を表すのでしょう。
そんな中で、現代までに沢山の製法を伝えてきた人の知恵が素晴らしいと感じました。
ダンボ
さん人間社会でも、一旦別れますと元に戻りにくいというのは、パンドウの水と同じです。しかし、人間社会では、これが元に戻ると、その結びつきは従来より強固になる例を身近に見かけます。
人間の心は、物ではありませんから解りにくいのですが、心が入れ替わった(変化した)状態で仲直りしているのであって、単純に元にもだったのではないと思います。
パンドウにおける水の遊離も、どちらかが何らかの変化があれば、基に戻るというか、新しい結合があるのではないでしょうか。
科学音痴の独り言・・・。
ミカン
さんお麩ってそうやって作られるのですね~。
まさか、パンの話の中でお麩の話しが
出てくるとは思いませんでした。
オサム
さん冷凍により成分に変化が出ない事は
良くわかりましたが、
このままではせっかく冷凍しても
また、イーストと砂糖を加える手間に戻るのですね。
ミー
さん梨肌って言葉を初めて知りました。
言葉の通り、梨のようなツブツブ肌…
ということでしょうか。
ううむ、また話が深くなってきましたね。
最後まで理解できるかな(汗)