冷凍ドウで製パンを行なうと、製パン性(パン高、比容積)の低下とともにパンの表面(クラスト)に梨肌の出現が認められることはお話しいたしました。

梨肌とは果物の梨の表面にみられるつぶつぶ状の組織で、普通の製パンでは認められません。冷凍ドウで焼いたパンに出現するのです。

更に解凍時間をのばすとこの梨肌のつぶつぶは発達して大きなふくらみになり、何か火傷でもしたかのようなの袋になります。

パン表面に薄い膜で出来た袋状のものが多数生じるということです。

この原因は何か?ということがやはり問題になります。これまでの実験でパンドウを冷凍して解凍すると、ドウ表面に遊離水の溜まること、そしてそれを遠心分離で集めることが出来ることをお話ししました。

コントロール(未冷凍)ドウでは遊離水が僅かなでしたが、冷凍ドウではその量が増加すること、そしてその液量と製パン性低下との間に相関にのあることを話しました。

この遊離水が冷凍ドウによる製パンに劣化の大きな原因と考えて良さそうです。


この遊離水がパンドウの表面ににじみ出てきて、梨肌を引き起こすのでしょう。


前回示したように、お麩は膨化食品の一つでありますが、これは小麦グルテン中の水の膨張によるものであることは話した通りです。

これと同様のことがパンドウの表面で、遊離水が水蒸気に気化、その水蒸気によって膨らんだものと考えられます。


森元さんは、この梨肌やら、おでき状に膨らんだものを数値化が出来ないかと考慮しました。

"表面あらさ計"という装置があります。これは精密機器表面の凹凸を上からある装置でなどって、その表面のでこぼこを測定するものです。しかしこれは小さな範囲のものを測定するもので、しかも顕微鏡を使っています。

兵庫県工業試験場の先生らのご指導で、パンの表面部の、しかも一面積の表面のあらさをなどってみて、コントロールのスムースさに比べ、どのぐらいにでこぼこになっているのかを測定しました。冷凍ドウによるパン表面の梨肌を数値化できました。梨肌によるでこぼこを機械的に測定することが出来ました。

彼女はもっと広範囲のパン表面を、さらにもっとスケールの大きな"表面あらさ計"で測定しようと計画しています。

次に。

mas

  さん

遊離水による梨肌、大変興味深く拝読いたしました。
海外のInstagramでサワードゥブレッドがボコボコの梨肌で仕上がっているのは、どうやっているんだろう?と考えていました。
色々な環境が重なり合っての現象なんだと思いますが、この遊離水の理屈、つまりオートリーズ後に加水していく事で遊離水を意図的に作り生地に入れ込んで、焼く事で蒸発させて表面近くが梨肌になるのでは、と予想致します。
今度試してみようと思います。ありがとうございます。

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azuuuu

  さん

サメ肌は聞いた事がありますが、梨肌とは良く言ったものですね。パンになったらつるつるするのでしょうか?

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ダンボ

  さん

梨肌やら、おでき状に膨らんだものを数値化して、そのあと森元さんは何をなさるのでしょう。

森元さんのロードマップ上、どの段階なのか、さらに、どう展開していくのか楽しみです。

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zoyu

  さん

「梨肌」初めて伺いました。味や食感にどのように影響するのか気になります。
この梨肌が合うパンの種類等もあるのでしょうか。

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ふたちゃん

  さん

特許取得おめでとうございます。


冷凍ドウの梨肌パンは、やはり味や食感に掛けるものがあるのでしょうか?

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りんご

  さん

表面のあらさ計というと
食べた時の口当たりに影響をしてきますか?
次回の更新楽しみにしています

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匿名

  さん

梨肌は良くないのでしょうか?
ツブツブの食感が大きさにより変わりそうです
冷凍の違った良さになるのでは?

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たぴ

  さん

"表面あらさ計"というものがあるのですね
梨肌の出現によって味や香りにも
影響があるのでしょうか?

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ぴー

  さん

特許取得、おめでとうございます。
冷凍すると、食感など変わるのでしょうか。
気になります。ますます奥が深いです。

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shin

  さん

研究が進むことによって、解明され、梨肌によるでこぼこがない冷凍ドウからのパンが作られることになるのでしょうか。次回が楽しみです。

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ぽん

  さん

表面あらさ計、初めて耳にしました。
勝手に姿形を想像して、随分な大きなマシンをイメージしてしまっていますが、パンの表面を測定するためだけに作られたものではないんでしょうね、きっと。

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ひぽぽ

  さん

はかりにはあらさ計などというものも
あるんですね。
やはり水分は生地の出来上がりの良し悪し、
生地の状態にとても重要な影響をもつのだと
改めて感じました。

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ちび太

  さん

梨肌が現れると、食感にどのように影響するのでしょうか。
やはりあるものの方が美味しいと感じにくくなるのでしょうか。

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りっちゅ

  さん

私もパンフレット拝見しました!いつもブログで拝見させて頂く先生がのっていて感動でした!

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ゆう

  さん

あらさ計りというものがあることにびっくりです。
よくTVで人の肌をアップで写しているようなものを
想像してしまいました。
今回の使用例以外ではどのようなときに
使われているのか気になります…。

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オサム

  さん

なるほどあらさ計というのは
面白いですね。
何のために調べるのかが
いまいちよくわかりませんが
美容器具に応用できそうですね。

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ミー

  さん

梨肌の説明ありがとうございます。
その名の通り、果物のナシに由来するのですね。

よく膨らまない&表面がデコボコしていると
食感、舌触りが悪くなり美味しさが減ってしまうのでしょうか。。。

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ちろ

  さん

大学生の時に、パン屋でバイトをしていました。
その時に、冷凍生地のパンも作っていましたが、
冷凍ドウだと表面につぶつぶができるということは知りませんでした。

先日、先生が特許を取ったという神戸女子大のパンフレットを
見ました!
おめでとうございます!!

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