カプシカム属野菜の成熟したものは何れもきれいな色を示します。あじめ唐辛子なども真っ赤ですがあれもカプシカム属です。黄色のもの、赤色のもの、オレンジ色のもの、黒色に近いもの、何れのパプリカも成熟したカプシカム属野菜です。

これらをフリーズドライ後、8%ほど小麦粉にブレンドした後に製パン試験を行うと、パン高、比容積(cm3/g)ともに無添加のコントロールに比べて高い値を示しました。

この性質は、カプシカム属野菜独特の性質と思われました。


その原因はという事になるでしょう。

まずこれらの美しい色素(カロチノイド系色素)による製パン性への影響はどうかと調べました。

この赤色のカプシカム属野菜をオートクレーブ(120℃,100分)にかけると、色素は分解されて泥のような茶褐色になります。しかし色調は破壊されましたが、得られた製パン性向上には何らの影響は無かったのです。従って色素は製パン性には関係なしと思ってました。本研究結果はその後、Cereal Chemistryへ投稿され、アクセプトに到るまでレフェリー(レフェリーは通常3名つきます。1名が親、2名が子供のレフェリーです。)との間で何度かやりとりがありました。その際にレフェリーからは色素の事がチェックされました。カロチノイド(βーカロテン、クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン,カプサンチン)含量を経時的な色の変化に伴って定量しろと言ってきました。あまり必要性は感じませんでしたが、無視するわけにもゆかず定量もいたしました。


しかしこれらの色素は製パン性には関与しないのです。


色素はともかく、オートクレーブにかけて製パン性に関与しなかったという事は、エンザイムはこの製パン性向上には関与してないという事です。未熟のものに比べ, 成熟したものの製パン性向上にはプロテアーゼ、アミラーゼ等は関与しなかったのです。

ではなにか。


そこでこのオートクレーブ処理したパプリカ溶液でも製パン性向上が保持される事が分かった事から、この溶液を多量の水に対して透析して分子量の大きいもの、小さいものに分画いたしました。


即ち透析チューブにオートクレーブ処理したパプリカ抽出溶液を入れ、10Lの水に透析を一晩行ないました。10Lの透析外液は真黄色になりました。

一晩透析後、透析チューブ内液をフリーズドライ、外液を60℃以下の温度でシロップまで濃縮しました。

それら夫々を小麦粉にブレンドして製パン試験をすると、透析内液より外液の方が製パン性向上が認められました。


この結果はエキサイテングでした。

パプリカ属の野菜が製パン性向上効果があり、そのうち透析外液にその向上効果があったという事です。

透析内液には多糖類、たんぱく質等の高分子量物質が集まり、透析外液には分子量の小さい糖、オリゴ糖、アミノ酸、ペプチドなどの多くの低分子量物質がここに集まり、濃縮されてシロップ状(黄褐色)のものになりました。

この中に製パン向上効果を示すものがあるという訳です。


次に。

トーテム

  さん

パプリカであれば着色もでき製パン性の向上もみこまれるということでしょうか?

一体どの成分が原因なのか気になるところです。

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ちび太

  さん

前回のブログからずっと気になっていました!
分子量の小さいものの方が良いのですね!!
な、、、なるほど。
大変興味深いです。

どれが効果をもたらしているか、
自分で考えて、とてもわくわくしております。

次回も楽しみにしております!

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さば男

  さん

製パン性に影響する特定成分楽しみにしています。
メカニズムが知りたいです。

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mottei

  さん

エキサイティングな結果というのはすごいですね
パプリカ等野菜を混ぜてみようとなかなか
考えつかないです。色だけでなく、様々な栄養価も
高くなるのでしょうか

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ちろ

  さん

膨化を考えた際に、野菜を混ぜてみよう!
という発想がすごいと思います。

奥深いですね・・!

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ぴー

  さん

難しいです。
でも、知れば知るほどもっと知りたくなります。
先生すごいです。

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tomato

  さん

色々な可能性を試してみて、初めて1つの結果が
得られるのですね。
低分子量物質の働きが、どうに関わってくるのか、
気になります。パプリカ属の野菜等の色素を活かしていますが、その野菜の栄養成分はどうなるのでしょう。

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zoyu

  さん

カブシカム属の野菜には色素以外に栄養素にもなにか共通した特徴があるのか気になります。

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ふたちゃん

  さん

やはり、栄養価などもあがるのでしょうか?

なかなか複雑な仕組みなのですね…

とても勉強になります。

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ダンボ

  さん

イースト菌は、簡単にエネルギー変換できる、
分子量の小さいオリゴ糖などを好むのでしょ
うか?
そうだとしたら、ご婦人方と変わりませんね。

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りんご

  さん

私たちが食する際にとういった点に
違いがでてくるのでしょうか?
味や食感面でも違いはあるんですか?

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Pig。

  さん

深いですね。難しくて、何回か読まないと理解できないです。
パンをきれいな色にするのは難しいのですね。

返信

ひぽぽ

  さん

パプリカ属のもつ効果
どんな結果が出るのか気になります。

食べ物一つ一つ
本当に奥が深いのですね。

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rei

  さん

カプシカム属野菜という響きがなんだか
可愛らしくて好きです。

色素とパンと全く関係ないように思える
2つのものの間に
関係性を見つけていくのって
とてもすごいことですね!

どんな結果が待っているのか
とても楽しみにしています。

返信

ゆっちゅ

  さん

透析内液には多糖類、たんぱく質等の高分子量物質が集まり、濃縮されてシロップ状(黄褐色)のものになるというのが興味部会です!次回期待しています。

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小鳥

  さん

析外液のオリゴ糖、アミノ酸、ペプチドなどの
多くの低分子量物質が製パン性向上効果があるということですね。
今回はパプリカですが、他でも応用は聞くのでしょうか?
もっと詳しく知りたいですね。

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オサム

  さん

分子量の大きさが膨化促進に関わるのでしょうか?
それとも低分子の物質の性質が関わるのでしょうか?
次回に続くのですね・・

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ミー

  さん

また濃い内容になってきましたね。
む、難しい(汗)
オリゴ糖、アミノ酸などの低分子量物質の中の
何かが効果をもたらしていること、
次回はそれが何かを突き止める!ということですね。

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