パプリカの成熟した果肉を凍結乾燥し、小麦粉に7%ほどブレンドして製パン試験を行なうと、パン高、比容積などの製パン性が著しく増加する事をこれまで話してきました。

このパプリカの水懸濁液を透析チューブに入れ、これを多量の水に対し透析を行い、透析される低分子量区分と透析チューブ中に残る高分子量区分に分画し、各々を60℃以下でシロップ状に濃縮したもの、凍結乾燥したものにしました。夫々を小麦粉にブレンドして製パン試験を行ったところ、高分子量区分(たんぱく質、多糖類などからなる)には製パン性を増加する性質は無く、透析外液区分のシロップ状のものに製パン性を増加させるもののあることがわかりました。

この中には糖、オリゴ糖、アミノ酸、ペプチド類等の低分子量のものが入っています。
これらのうちの何が製パン性の増加に効果があったのだろうかという事です。

この物質が何かを知りたいのです。

まずは、この透析外液区分のシロップを糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分とに分けたいのです。これらを分画するのにはカラムクロマト法等もありますが、すべてのものが回収できるかどうかを目で確認したい、学生に確認させたいと考えました。


そのためペーパークロマトグラフィーなら、糖ならばAHP (Anilin hydrogen phthalate ) 発色で黄色に確認できるし、アミノ酸、ペプチド類ならばニンヒドリン試薬で紫色の発色で確認できます。

しかし分画されたサンプル量には、パンを焼くほどの多量のものが必要です。薄い紙でのクロマトグラフィーは、分離確認の定性は可能ですが、定量的に夫々をごっそり集める事は困難です。

そこで厚手のペーパークロマトグラフィーでやる事を考えました。
厚手とは厚紙濾紙の事です。厚紙のペーパークロマト用のものが市販されているのです。

何枚かの厚手濾紙に数十?数百mgの透析外液のシロップをスポットして、チェンバー中で展開する事が出来ます。


ペーパークロマトグラフィーの展開後、濾紙全面を発色しては何もならないので、その一部、濾紙の両サイドをガイドストリップとして切リ離し、そこだけを発色して、その発色の具合から、糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分を判別して、残った未発色の濾紙を切断して、糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分とに分画しました。


それらを夫々水で濾紙から溶出して、糖区分、アミノ酸、ペプチド類区分を集め、濃縮してシロップ状にして、夫々小麦粉に添加してベーキング試験を行いました。

そのベーキング試験の結果、糖区分の方に製パン性増加を示すもののあることがわかりました。この糖区分の中にどんな糖が入っているのかが次の問題です。

その中にはショ糖もあるでしょうが、もしショ糖が製パン性に効果のあるものだったならば、単にベーキング時のイーストの餌が不足だったのだという事になり面白さは半減します。

コントロールの製パン時に、ショ糖添加量をもっと増やしてベーキングしたが、従来入れてあるショ糖量で製パンは十分である事も確認されました。

なればそれ以外のものが、製パンの増加と効果があるとなると面白いのですがね。目下、更に検討中です。



次に。

りんご

  さん

パンの話はとても奥が深く難しいですね。
もっと自分の生活との共通点や
結び付く部分があると
もっと理解が深まりそうです

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tomato

  さん

糖分で製パン性が増加するのですね。それは人と一緒ですね。実験は、事前の予測を反する結果が出ることも、楽しみの一つですね。色々な仮説を立てて、結果を次に活かせると良いですね。

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さば男

  さん

不勉強な私で恐縮ですが、実験装置の写真などがあるとより理解を深められます。

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ちろ

  さん

糖といえば砂糖のイメージで、
細かくブドウ糖などで違いが出るなど
考えたことはありませんでした.

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mottei

  さん

いちがいに糖といっても、色々と製パン性が異なってくるのですね。配合によって食感など変わっていったら面白いですね

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ふたちゃん

  さん

いつも大変勉強になります。

次回更新が楽しみです(*^_^*)

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ひぽぽ

  さん

うむ~。
どんどん深くなっていきますね!
やはり、私には難しく感じますが、
面白い結果が生まれることに期待しています。

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shin

  さん

少しずつ解明されていく過程が興味部会です。
研究は時間がかかりますが、新しい事実を発見できた時の感動は素晴らしいことと存じます。

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ぽん

  さん

私は文系で実験という経験が小中学校の理科レベルなのですが、実験に期待する結果と、予想していたけど残念な結果とを考えながら取り組んでいらっしゃる光景が浮かんで面白いなと感じました。

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偽PT

  さん

難しいですが、少しづつ理解できるようになってきました。
次回も楽しみにしています。

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ゆっちゅ

  さん

先生のブログを読み進めていくうちに本当に自分の知識が少しずつですが増えている実感があります。当初わからなかった内容がわかるようになり楽しませていただいております。

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ゆぅ

  さん

少しずつわかっていく過程が面白いです!
研究はなかなか結果が出ないものかもしれませんが、辿り着いた時は感動ですね。

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Pig。

  さん

難しそうですが、楽しそうです。
次々に調べたい事・研究したい事が出てくることは面白そうです。
先生が研究している色々なパンを食べてみたいです。

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zoyu

  さん

クロマトグラフィー学生時代ちょっとかじりました。
糖は何が入っているのでしょうか…結果楽しみです!

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ジョー

  さん

ん~、やはり難しいですね。

昔の理科の授業を思い出しました・・・。

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Jr

  さん

知りたいという気持ちと
そのために動ける行動力は本当にすごいと思います。

探究心っていくつになっても
大事ですよね!

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ココ

  さん

アミノ酸、ペプチド類等も気になっていましたが
製パン性を高めるのは糖だったのですね。
実験には手間がかかりますが、、
ショ糖以外にも製パン性があることが発見出来たら
とても面白いですね。

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ダンボ

  さん

ただ甘いだけでは満足しない!!!
イースト菌も、最近のご婦人方と同じ、
何か、アクセントがいるのでしょうか。

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トーテム

  さん

確かに、実は糖が製パン性の主因でしたとなったらちょっとつまらないですね。

さて、実際はどうなのか、続きを期待しています。

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オサム

  さん

糖類ですか・・・
カプシカム属野菜なんで
なにか辛い成分のどれかだったり
するのかと思っていました。

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ミー

  さん

やはり実験は、一歩一歩。
どんどん深~くなってきますね。
糖というとブドウ糖、オリゴ糖、果糖くらいしか
知らないのですが、どんな糖が出てくるのでしょう?
面白い結果になるのでしょうか??

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