セルロース粒を炭化すると、そこにエリソルシン(赤色色素)が吸着します。吸着は2つのメカニズムですすむことをこれまで説明しました。

そのうちの一つの吸着メカニズムとして、疎水結合でエリソルシンがセルロース粒に吸着することを述べました。その時の決め手になったのが、セルロース粒へのエリソルシンの吸着が、ショ糖脂肪酸エステル(SFAE) で阻害されるという事でした。SFAEの脂肪酸部位が、セルロース粒の疎水性部位に結合したのです。

実はこのショ糖脂肪酸エステル(SFAE) の吸着は思いがけぬところで大切な発見に至りました。

それは、SFAEによる小麦デンプン粒表面の疎水性の定量です。


小麦粉の乾熱処理(120℃、2時間)で小麦デンプン粒表面が強い疎水化を示す事は以前にもお話しいたしました。それが原因となってパンケーキの弾力性(springiness) が強くなったり、カステラの比容積が増加したりしました。

これまで小麦デンプン粒表面の疎水性が親油性を示す事から、水中でデンプン粒を菜種油などの油と激しく撹拌するとデンプン粒表面に油が吸着し、その吸着量を測定して疎水性を定量してきました。この方法でデンプン粒表面の疎水性を定量する事が出来ました。

オイルを使わずにこの疎水性を測定できるといいのだがとづっと考えてきました。


今回、SFAEが炭化セルロース粒表面に吸着し、これをエチルエーテルで外し、そのSFAE分子中のシュクロースを比色定量するという方法ですが、これを小麦デンプン粒に応用するというアイデアです。

これはうまく行きました。その方法で小麦デンプン粒表面の疎水性が定量できました。

乾熱処理小麦デンプン粒の疎水性の正確な定量が可能性となりました。小麦以外のデンプン粒でも可能でした。目下論文投稿中です。

この方法は物質表面の疎水性を測定する共通の方法にしたいものと思ってます。


つづく