神戸から京都までのJR車中、たまたま4人掛けの座席に座ったところ、真正面に座って新聞を読んでおられた男性は、神戸学院大学の池田 清和先生でした。池田先生は"食の専門家ブログ"の中で、そばのことを書いておられますね。小生とは旧知でした。久しぶりにいろいろとお話しできました。その中で大西近江先生の話が出ました。以前大西先生のそばの野生植物の御講演を聞いたことがあり大変に印象的だったことを思い出したのでここに記述します。

2007年の日本穀物科学研究会(第131回例会)が京都大学栽培植物起源施設で行なわれた時の大西近江先生の御講演でした。

大西近江先生は木原均先生((1893-1986)コムギの祖先を発見した細胞遺伝学者)のお弟子さんでした。木原氏は野生小麦を発見したことで有名な方です。野生小麦は中近東地域であることを発見されました。御弟子さんの大西氏は野生そばの発見者です。繋がってます。

その研究のスケールは大きく、当日大西先生の生の話をわくわくしながら伺ったことが記憶によみがえりました。本物の話は魅力的ですね。


栽培そばの起源地(野生そばのこと)は、1883年のドカンドル(Aide Candolle) の説、シベリア・アムール河流域とされていました。たがその説は疑問でした。

大西先生はこの疑問を解くため、単身野生そばを求めて中国の奥地の奥地に調査探検旅行に入って行かれました。小柄な白髪のこの男(失礼ながら)に、ものすごい馬力を感じました。

1990年に、そば野生祖生種を求めて中国雲南省の千〜二千五百メートルの高さの山野を這いつくばって命がけで探して歩かれたようです。そしてついにその年1990年 10 月 20 日午前10時にそばの野生祖生種を雲南省の五郎河の谷間に発見されました。世界的発見ですね。

そのときの様子を以下のように言われました。"発見したとき、見てすぐわかった"と。"人の入ったことのないような谷に、100kmにわたりづっと野生そばがはえていた。他の植物は生えないような岩のごつごつした山の斜面に、木もはえない岩のごつごつしたところに生えていた。土もないようなところに生えていた。"と言われた。先生にはそれが野生種であるとすぐにわかったようです。

その他、雲南省、四川省、東チベットでも見つけ、野生祖生種のアロザイム、RAPD,AFLP分析により中国で三河地域と呼ばれる金紗江、蘭倉江、怒江が平行して流れる東チベット、四川省、雲南省の境界領域に自生している野生祖先種が栽培そばに最も近縁とわかりました。10万年のオーダーのはなしです。その後何千年間の歴史の中で広く人によって伝播して行きました。ある村の女性が他の村に嫁ぐと自然に広がっていったのでしょう。野生そばは10種類あり、現在19種とわかっていますが、その内人気のある種が残っていきました。15世紀にはシルクロードを通ってヨーロッパへ伝わりました。こうしてそばは、ヒトが伝え、ヒトが広げました。

大西近江先生の野生そばの発見は大きな発見だと思いました。


りんご

  さん

そばは日本特有というイメージが強いのですが、
日本に近い気候の中国でも育てられていたんですね。
どのようなそばが気になります。
話は変わりますが、先日小麦について
インターネットを調べていたら
瀬口先生の研究に行き着きました。

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chaw

  さん

電車の中での池田先生との偶然の出会いに驚きました。
お二人の研究されていることや野生そばの話で尽きなかった事が想像されます。
野生そばの発見、素晴らしいですね。人気のない谷に入っていかれ、一目見てそれだとわかるとは大西先生が見つけるべくして出会ったのでしょうか。
「知りたい」という想いはいくつになっても持っていたいものですね。

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ミー

  さん

すごい偶然ですね!!思わず「ええっ!」と
声をあげてしまいました。

大西先生の単身で野生そばを求めて中国まで
行かれたその情熱と行動力は素晴らしいですね!

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ダンボ

  さん

「そこに山があるから」の名言があります。大西先生は、まさに「そこにそばがあるから」行かれた。凄いですね。

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トーテム

  さん

野生のそばを求めてなんて、ロマンですね。

いつまでも、冒険心を持ってやっていきたいです。

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蟹玉餃子

  さん

電車の座席でばったり、
久しぶりに会った友人との話は
とても盛り上がったのでしょうね。
大西近江先生の野生そばの発見もすごいです!
座って考えるよりもまずは行動、ですね

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Shozzy

  さん

大西先生の行動力に驚きです。気になるものがあるとどこへでも見に行きたくはなりますが、実際に行動に移すのはなかなか大変です。
何事も想いが大切なのだなと思います。僕も頑張ろうと思いました!

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tomato

  さん

凄い偶然ですね!電車の中でのお二人の話の内容も、
きっと盛り上がったでしょうね。
野生そばがそんなに種類がある事に驚きました。
そういった発見も先生方が、大変な想いをして発見して下さったお陰です。野生というくらいなので、普段私達が見ている畑で育てている現在のそばは、人工的なものなのでしょうか?

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Pig。

  さん

すごい行動力ですね。他の植物が生えないような所に生えているとは、野生そばの生命力はすごいですね。何故かタンポポを思い描いてしまいました。

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ふたちゃん

  さん

大西先生は、おいくつのころに調査探検旅行に行かれたのでしょうか。白髪とあるのでそれなりのお歳だったと考えると、その野心は素晴らしいですね。
また野生そばの種類の多さにも驚きました。

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偽PT

  さん

中国の奥地まで野生そばを探しにいくとは、ものすごい行動力と探究心ですね。このような執念と情熱には頭が下がります。

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ふー

  さん

命がけで野生そばを探しだした
大西様にはものすごい執念と
情熱があることがとても伝わってまいりました。
こういった方々の活躍によって
世の中に知られていないものが
普及することを改めて感じることが出来ました。

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オサム

  さん

専門家ブログを書かれている先生が
たまたま同じ電車の向かいの席に
乗り合わせる事があるというのは
偶然にしてもすごい事ですね。
発見や発明もそのような偶然からの事もあれば
大西先生のお話のような
発見しようとして執念で発見することもあります。
偶然を見つける眼力もすごいですが
執念による発見は人の想いのすごさを感じますね。

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ぺぺろんちーの

  さん

野生のそばを求めて中国の奥地まで行ってしまうなんて本当にすごい探求心ですね。野生のそばはいつも見ているそばとはどう違うのか気になりました。

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cureia

  さん

そばはその様なところでも群生することができるんですね。
現在身近であるそばにこんな歴史があったことは初めて知りました。
大変貴重な体験をされておりますね。
楽しく拝見いたしました。

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