小麦粉で製パンを行う時、どのぐらい小麦粉に水を加えたらよいのか、これは大きな問題です。

いずれの料理本もその加水量は適当に書いてあります。適当に入れればパンはできます。しかし科学的データーはとれません。加水量によって、製パン性(パン高、比容積)は変わります。

パンの焼ける最適の加水量を求めるには、加水量をいろいろかえてパンを焼いて、最適の製パン性を求めることです。最も良く粘りのでた加水量が最もいいパンを与えます。

一般にはAACCI法があり、B. Farinographという装置でこれを決めます。

小麦粉(水分含量14%)390gをこの装置にいれ、これを一定スピードで撹拌しながらビユレットから蒸留水を入れます。そのときドウの示す粘度を測定します。水を入れてゆくに伴って、ドウは均一化して最も適当な粘度(500BU値)に達します。この粘度で最もよいパンが焼けるのです。

これを小麦粉の吸水率といいます。製パンの国際誌ではこの数値で焼いたパンのデーターでないと通じません。

小麦粉はある意味で生き物です。タンパク質、デンプン、灰分含量等、すべて同一の小麦粉ですら、挽いた後どの程度貯蔵したかによって小麦粉吸水率は変化するのです。小麦粉でも同一種類の場合でも製粉したての小麦粉と時間のたった小麦粉、あるいは冷蔵、冷凍庫に入れておいた小麦粉ではそれぞれ吸水率は違ってきます。

この装置 B. Farinograph は390g近い小麦粉を必要とするものです。小スケールの実験を行う場合、390gは大きすぎる量です。少なくとも10g程度で測定できないでしょうか。


小麦粉の性質を調べるのに同じようなミキサー(撹拌装置)があります。ミキソグラフという装置で、これもよく使います。一般に、これは小麦粉10gに蒸留水5.5mLを加えて、室温で撹拌して小麦粉ドウをピンに巻き付けるように測定するミキサーです。その際にかかる抵抗値を測定する装置です。


この装置は B.Farinographと違ってサンプル使用量が10gと少なくてすみます。


この関係を研究生の奥田さんは B.Farinograph からではなく、ミキソグラフで小麦粉の吸水率測定しようとしています。



まず小麦粉をB. Farinograph で吸水率をはかり、このときの水/小麦粉の比率でミキソグラフテストを行うのです。この時生じる撹拌抵抗力を求め、ほぼB.Farinographの粘度とミキソグラフの粘度とは相関することを確かめました。

この関係をいろいろな小麦粉でも求めてみると、高い相関でコンスタントに求めらる様でした。

今度は水/小麦粉の比率を数点かえてミキソグラフの撹拌抵抗力を求め、そこから外装して、B.Farinographで求めた500BUの粘度を予想するのです。


こうして少量の小麦粉を用いてその吸水率を測定しようというもので、このやり方は極めて今後の小麦粉研究に有効な方法です。

ポテト

  さん

計量一つで見た目、食感が全く異なります。
以前私も失敗しました。
小麦粉の貯蔵期間によって異なることにも
驚きました。

返信

ぺぺろんちーの

  さん

小麦粉を科学的に研究する視点が面白いですね。
自分でパンを作ってみたいと思いながらなかなか手を出せていなかったのですが、パンを作りながらいろんなことが見えてくるんだなぁと思いました。

返信

chaw

  さん

実際にパンを作ってみると、少しの水分量や小麦粉の配合で仕上がりが異なります。小麦粉が生き物というのを実感しますね。

返信

オサム

  さん

小麦粉を使った料理はパン以外にもたくさんありますが、
小麦粉の性質を一番良く引き出す水の量が決まっているとしたら
パン以外でも同様な事がいえるのでしょうか?

返信

偽PT

  さん

レシピに載っているのは、科学的根拠はあると思いました。作るのに慣れていない人は、適当や適量、少量の判断が難しいです。

返信

ふたちゃん

  さん

確かに実験で一度に390g程の小麦粉を使いのはもったいないですよね。少量の測定でいろんな小麦の吸水量がわかればパン作りに役立ちそうですね。

返信

tomato

  さん

パンを作る時に、その日の気温や湿度でも出来上がりが違うと教室の先生が仰っていました。微妙な水分量を吸収してしまうのですね。
まさに小麦粉は繊細な生き物のようです!
自宅でも保管方法や環境によっては、小麦粉の味が変わるくらいです。実験で色々と試されている場合には、変化が顕著に分かり面白いでしょうね!

返信

ダンボ

  さん

水はまさに、魔術師。天使の顔、ピエロの顔、そして時には悪魔の顔を
持っているように思います。
その水を、「適当」とは。しかし、考えてみると、状況・環境によって
変わる水の適量を表現するのが、難しいのでしょうね。

返信

トーテム

  さん

私も料理はど素人なのでレシピを見て、少々や適量、お好みで等の表記にはよく戸惑います。

明確に何g等と表示されるようになればありがたいです。

返信

りんご

  さん

パン屋さんによって
食感やきめ細かさが異なるように感じますが、
やはり使用している小麦の種類が違うんですね!
納得です!

返信

R.E

  さん

加水量がパンに与える重要性の高さを初めて知りました。
最適な加水量に限りなく近い量で作られたパンを
ぜひ食べてみたいと感じました。大変貴重なお話ありがとうございます。

返信

ふー

  さん

水ひとつで
パンのでき具合が変わるんですね
パンを作ることがこれほど奥深いとは
思いませんでした。

返信

ひいらぎ

  さん

”小麦粉はある意味で生き物”という表現から、小麦粉の奥深さ、ひいてはパン作りの奥深さがとても伝わってきました。
日々の研究や試行錯誤があって、おいしいパンが生み出されていくのですね。

返信

cureia

  さん

小麦粉の吸水率は細かな条件にも応じて変わるのですね。
同一種類の小麦粉でも製粉したてのものと時間の経ったもの、冷蔵、冷凍庫で保管しておいたものなどで違うが出るの面白いと思いました。

返信

Pig。

  さん

人の味の好みもあるからかもしれませんが、よくレシピでも“適量”“少々”という言葉がありますね。
学生の時に、栄養価計算で黒下覚えがあります。
ベストなパンを作るのに、季節や気温・天気によって、加水量は異なるイメージがありますが、小麦粉の質でもおいしさは変わるんですね。
吸収率でどれくらい味に差が出るか、食べ比べをしてみたいと思いました。

返信

ミー

  さん

よくレシピに書いてある適当や適量は
初心者には難しいです。
家庭で作るパンも小麦粉10gに対して
水5.5mLと考えれば良いのでしょうか?

返信