食品加工学研究室では小麦粉を用いた膨化食品の研究をすすめています。
その中では小麦粉の化学的なこと、生化学的なこと、栄養的なこと等多くの面から研究を進めています。
製パンに必要なブロメート(パン改良材)使用禁止の問題から、ブロメートに変わる小麦粉の研究、とくに新たな食品素材の開発から端を発した研究を進めてきました。
卒論生にはいろいろスクリーニング研究をしてもらい、大学院博士前期課程(マスター)ではそのスクリーニングで引っかかってきた問題をテーマにして2年間研究をすすめています。さらにその問題が新たな問題へと膨らんできたら後期課程(ドクター)へと進みます。
例えば、こんな例がありました。
旭化成(株)から移動してこられた山根教授が、セルロース粒という新食品素材を持ち込まれました。これが製パンにどんな影響を与えるだろうか。セルロース粒の種類ごとに卒論生のチームを作り、製パン試験を行いました。
製パン(パン高、比容積)のデーターはバラバラでした。そのころ田原さんが大学院博士前期課程に入ってきて、彼女にこのバラバラのデーターを整理してもらいました。製パン性のよいものは、セルロース粒が大きく、悪いものは粒子が小さいことを彼女は見い出し、Journal Food Scienceに投稿し論文にしました。
社会に出た田原さんは、再び大学院博士後期課程に入学し、3年間研究を続けました。このときの研究テーマは前期のテーマをさらに深めたもので、セルロース粒表面を活性化し、そこに危険な食品合成色素を結合して、食後にセルロースとともに体外に輩出しようというものでした。この研究で食物栄養学博士となりました。
彼女の仕事は、一言で言うと以下のように進められました。
食物栄養学専攻で行った研究は、その成果を広く世の中に知ってもらわなければ意味がありません。このためには英文で論文を書き、国内外の学会で発表する必要があります。研究に対する評価は、博士前期課程では学内の論文審査で事足りますが、博士後期課程ではそうではなく、国内外専門雑誌への発表が必須です。雑誌に投稿したその成果を審査してもらうわけですが、それは海外あるいは国内の専門審査員(3名)により厳しく行われます。その審査の受け答えの中で学生は多くを学ぶことができます。この審査員とのやり取りは真剣勝負です。その討議が学生の成長につながり、そこから社会とのつながりが生じるのです。これが一人前になるのに必要なのです。