3月27-30日に、2014年度農芸化学会大会が明治大学で行われるというアナウンスメントがありました。当方の研究で目下興味を持っているテーマを行う予定です。1題は、冷凍ドウの製パン性の研究であり、1題はアルギン酸エステルによる製パン性改良効果の研究です。
冷凍、解凍ドウの製パン性の低下は、そのドウに新たにイースト、砂糖を添加し、re-mix、再発酵すると、パンは元の状態に回復することが明らかになり,冷凍ドウ中の水の分布の変化が原因と判断されました。
従って、ドウ中の水が冷凍にされてもマトリックス中で動かなければいいわけで、そのため保水性の高い多糖類(キサンタンガム、タマリンドシードガム,グアガム等)を冷凍ドウに入れて解凍後製パンすると、かなり製パン性のよくなる事がわかりました。
この中でも特にキサンタンガムの添加効果が面白かったです。
220℃のオーブン中で、イーストは10分以内に死滅するでしょう。イーストのガス発生は止まり、水蒸気の力で膨化はつづくでしょう。しかし、オーブンから 5、10、20、30分後にパンを取り出すと、キサンタンガムを含まないコントロールのパン高、比容積は10分後にはほぼ一定となり、それ以上の増加は認められませんでした。グルテンの熱変性、デンプンのα化でパン組織が固化して、気体は穴から抜けたためでしょう。
しかしキサンタンガム添加パンは、10分を超えて, 30分でもなお膨張を続けました。ドウは裕に100℃に達しています。もともとの加水量が違います。
加水量はブラベンダーファリノグラフから求めた量で、製パン性の最も良くなる加水量(BU=500)です。これ以上の水量にするとドウに緊張感が消えて行きます。500BUの値は、小麦粉の結合水(Bound water) に近い水量と言えるでしょう。それ以上の自由水(Free water) はドウの粘性を落とします。
キサンタンガム添加でドウ中の結合水を上昇させます。この事はドウ中の結合水をふやし、コントロールと同一加熱下でも多少でも水量はキサンタンガム添加の方が多いです。温度が100℃になってもこの水の量はドウに粘性を与え続け、気化した水蒸気の力でなお伸び続けるのでしょう。
この事は、もう一題の発表、アルギン酸エステルによる製パン性増加についても言える事です。アルギン酸エステルを1.5%添加したパンドウは吸水率が上昇し、製パン時の加水量はふえ、コントロールと同一の温度下で、その水はドウに粘性を与え続けるでしょう。その温度でコントロールは膨化を止めても、アルギン酸エステル添加ドウは水蒸気の示すガス圧で膨化し続けるでしょう。その結果、アルギン酸エステルの添加効果で大きなパンになりました。