ガゴメ昆布パンについて

 

昆布の粘りをグルテンフリーパンに用いました。特に粘りの大きいガゴメ昆布に注目しました。

 

ガゴメ昆布とは北海道函館地方の昆布で、その存在が余り広く知られていませんでした。明治35年に宮部金吾氏により発見された昆布で、その表面に凹凸のある形態で、真昆布と明らかに違っています。

 

他の昆布より粘りの強いこと、さらに健康面からも関心がもたれるようになりました。その粘り成分はアルギン酸20-30%、ラミナリン4-4.5%、フコイダン4-5%であると言われています。

 

数年前からグルテンフリーパンの食材としてこの強い粘りに関心を抱いていました。学部の学生に実験やらせていましたが、なかなかうまくゆかず、パンは膨化せずに難渋していました。

 

非常に粘るため、これまでのバナナパン、ジネンジョパン(各パンでは、パン1個にバナナ30g、ジネンジョ10gを用いた)と同じようにパン1個に数十グラムというわけにゆきませんでした。大学院生の井関さんがこのテーマに取り組みました。

 

井関さんは、1個のパンに用いるガゴメ昆布量をどんどん減らしたのです。300mgの少量のガゴメ昆布を用いることにより製パンに成功しました。ガゴメ昆布300mg、小麦デンプン30.2g, 砂糖8.81g、コンプレストイースト10g、水22.mLの配合でした。

 

これまでのバナナパンは、パン1個に対しバナナ30g, 小麦デンプン30g、砂糖8.86g、コンプレストイースト10gと水50mLの配合で製パンはできました。ジネンジョパンは、ジネンジョ10 g, 小麦デンプン30 g, 砂糖8.86 g, コンプレストイースト10 g, 20 mLの配合で製パンが可能でした。

 

ガゴメ昆布の使用量は非常に少なくてよく、パンの香り、クラム色等への影響はきわめて少なく、粘性素材としては極めて有効な物と思われました。

 

このガゴメ昆布を水とともに撹拌後、遠心分離して上清区分と沈殿区分に分けると、この製パン性は上清区分(3000rpm)にあり、沈殿区分にはありませんでした。前述の多糖類が水溶性であることから、これらの多糖類との関連性がうかがわれました。

 

この上清液は水に対して透析してHMW(高分子区分)区分とLMW(低分子区分)区分に分けることができます。夫々を凍結乾燥後、製パン試験を行うと、HMW区分のみが製パン性を示しました。

 

上清液は色、粘性等から2層に分離しました。その上部は黄色がかった透明の層で、その下にダークの粘性ある層がきます。明らかに分離できるのでこれら2つの層に分け、夫々凍結乾燥後、製パン試験を行うと、下層の方が多少製パン性は劣りましたが、何れもよく膨化しました。

 

この上清区分は120, 90分間熱処理すると、これらの多糖類を含むガゴメ昆布は粘性を失いました。普通この程度の加熱(湿性)で多糖類は粘性を失うでしょうか。ガゴメ昆布によるグルテンフリー膨化食品の可能性をお伝えしました。