卒論の締め切り日近くなっても、さっぱり卒論実験に出てこず、これからどう指導しようかと苦慮する学生がいた。がごめ昆布からアルギン酸、フコイダンを抽出して、グルテンフリーパンを調製しようというのが学生に与えた研究テーマであった。興味が持てなかったか、あるいはアルバイトに多忙だったのか、とにかく実験しにこなかった。卒論実験終了間際になって、やっとやってきた。

「次年度の卒論生のテーマとしたい。次にこの実験をやるヒトのスピードアップために、昆布からアルギン酸、フコイダンの抽出方法を調べた論文があるからこれを翻訳してみよう。」とアドバイスし、英文論文を2報手渡し、翻訳を指示した。この仕事なら自宅でできるだろう、学生がある程度、翻訳論文の形を整えれば、多少手を入れて完成することができるだろうと高をくくっていた。

数日後、コンピューターできれいに打ち込んだ用紙をもってきた。しかし文章間につながりがない、その文章自体よく見てみると文章になっていない。単なる言葉の羅列で、脈絡がない。コンピューターに翻訳させたものであった。難しい言葉自体の翻訳はできているが、バラバラに言葉が繋がっていて、意味が全く不明の文面であった。翌日、「これは、コンピューターが書いたもので、君はどこにいるのですか。」と意見した。本人は神妙に下を向いて聞いていた。こちらで修正し、その原稿を打ち直させた。こんな時代になったかとあきれてしまった。コンピューターの人工知能などしれたもので、まだまだ翻訳など遠いことの典型ダナと思っていた。ヒトの知力とは言葉を一列に並べて、そこにいいたいことを盛り込み他人に正確に伝える力ですね。ヒトの知力がそこに入らないと言葉も死んでしまう。

今年度のAACCIAmerican Association of Cereal Chemists, International)大会のシンポジウム内容を伝えるためにAACCIから流れてきたメール上のシンポジウム内容をコピーした。15項目にわたり詳細にかかれてある。その英文はコンピューター上で和文に翻訳された。

オリジナルの英文とコンピューター上の翻訳日本文を比較しながら、その内容の検討を行った。言葉のつながりがバラバラであり、文章は英文を見ながら修正しないと本意が伝わってこない。

しかし人工知能が経験を重ね、進化してくるとコンピューターによる翻訳はかなり正確になるであろう。コンピューターによる経験とは単なる言葉の羅列が正確な羅列になるということだ。さらに人が介入してその精度を上げ、そのうち人不要の時代が来る。翻訳料のコストはグーグルマップ同様フリーである。

会話なども人はコンピューター付属イヤホーンをつけ、日本人は日本語をしゃべり、相手は英語に翻訳した物を同時に聞き取り英語で答え、そのやり取りする時代がすぐ来る。英文面も同時に日本語ですぐ読み取れる時代がすぐくる。グーグルがすべてただでやる時代である。

英語がわからないという日本人のコンプレックスは、コンピューターにより間もなく解消され、日本の鎖国は解消されるだろう。ここで初めて国際化される可能性がある。

学生が私に教えてくれたことである。