日本では大学での授業のやり方は、全て各人に任せてあるが、アメリカでは講義ノウハウの指導があるようである。

教員は、学生時代の授業を思い出しながらそれにそって進めるようになる。学生時代に受けた実験、講義のやり方をまねしてきたような感じがする。

 

たとえば、食品学実験や化学実験のやり方はこうである。実験のためのテキスト、あるいはプリントはその授業のはじめに既に学生に手渡してあるが、その日に行なう実験の説明は、その前週の実験の説明の中で行なう。したがって当日の実験は、その前週の実験日に行なった説明に基づいて進める。まずグループ(5−6名)毎に学生を集め、そのグループの輪の中に入り、本日の実験の目的、方法等を一人一人に説明させる。試薬はどのような目的で使うか、加熱の意味は何であるか等である。うまく答えられない場合にはそのグループを自席に追い返し、グループ内でデスカッションさせる。その間、別グループに対応し、その説明が夫々できるようになって初めて実験させるようにした。グループは待ち時間が生じるが、その間、よくグループ内で実験の内容をチェックさせる。

 

早く実験に取りかかりたいので、各グループは夫々真剣になる。うまく説明できない学生は、他の学生の手前真剣にならざるをえない。

 

説明できたグループに試薬、試験器具等を手渡し実験させた。こうすると事前に学生達の目の色が代わり十分に準備してくるようになる。できないときには時間内で実験が終わらぬこともある。

 

講義(1クラス、約40名)は、というと、

講義はマイクを使わずに肉声でやる。スライドは使わない。参考書は座右に置かせる。講義の大切な所はゆっくり何回もしゃべり、ノートに書かせる。文字の書きにくいときには白板に大きく書き、ノートをつくらせるやり方である。これは学生時代にニコニコ笑っていた文学の教授の授業だった。

 

大学時代のゼミの松田先生の授業が今でも興味深く思い出される。先生の授業の中では教え子(院生)の実験データーを講義の中にどしどし入れて、これは誰々君のデーターだといいながらそれがどの雑誌にでて、学問的にどの様な意味があるのかまで説明された。教科書に出てくるデーターと我々の目と先にいる先輩たちの仕事との関連なると、授業は面白く、刺激的であった。

 

小型のIC RECORDER(録音機)があり、長時間記録できる。授業を全て録音し、後で聞くことにしている。こうすると、自分のしゃべり方、スピード等をはっきり反省することができる。自分の授業を聞くべきである。