ホットケーキを指で押したときの弾力性、食べたとき口腔内での弾力性は、この改良研究で重要なポイントであった。ホットケーキを焼いて、指で押してその弾力性を見るのは感覚的なものであるが、正確で再現性もある。これを何とか機器を用いてデーターにして客観的にしたい。ホットケーキを上から押し付けて、立ち戻るその力をレオメーターの様なもので測定したかった。しかしホットケーキは直径15 cm、深さ2.5 cmの円盤状の鉄皿にバッターを流し込み、そのままオーブン中で焼くものであり、生じたCO2でホットケーキが膨らむ。できたホットケーキは中心部が最もよく膨らみ、周縁部に向かってふくらみは低下するもので、包丁で縦に切ってみると、気泡はホットケーキ中心部に向かってふくれているのがわかる。切断面の気泡の大きさはバラバラで小さいものから大きな気泡まである。パンなど気泡の大きさに均一性のあるものの弾力性を測定する場合には、小さく切断したパンを測定器のステージ上に乗せ、それを上から加圧してデーターを再現性よく求めることは可能である。しかしホットケーキの場合、その小さく切断したサンプル中の気泡の大きさもバラバラであり、切った場所によってもかなりばらつきがあり、同一ホットケーキから得たいくつかのサンプルでも、場所によってデーターは変化し再現性がなかった。数個のホットケーキを同条件で焼くと、常に再現性ある感覚評価をすることができるが、これを切断して機器で測定すると再現性がよくなく、正確なデーターは得られなかった。そこでホットケーキを小さく切断せずに1個そのままの測定データーを求めれば気泡のばらつきも消えるはずである。

 1cm2当たり29.38gの重さを加えると、ホットケーキ全体では5.19kgとなり、この重量をホットケーキ全体にかけたい。重量はレンガを用いた。ホットケーキの焼いて(1分後)まだ熱いうちに菜種置換法(この分野では世界中で利用している)で容積をはかり、測定直後直ちにホットケーキ全体の上から5.19kgのレンガを置いた。30秒間そのまま放置し、以後レンガを外し容積を測定した。加圧後のその容積の回復を見た。同条件で焼いたホットケーキ数個をこの方法でやると再現性よく数値化でき、以後この方法でホットケーキの弾力性を計ることができた。

 食品のおいしさ,食感は人の感覚である。食品研究の場合、これを一般的な分析機器で数値化することは極めて難しい。しかし研究者は何とかこの感覚的なデーターを数値に置き換えたい。各研究者は手作りの実験法を編み出して測定する必要がある。むつかしく面白いところである。