乳成分の性質

粘度

水和、膨潤、ポリマー-ポリマー相互作用のため、濃度15%以上でカゼイネートは高度の粘度溶液となり,20%タンパク質以上含有溶液では高温度下でも粘度は非常に高くなり加工しにくくなる。カゼイン/カゼイネートの粘度への溶液条件の効果は微妙である。Naカゼイネートの粘度は強くpHに依存し、pH7.0で最少である。

アンモニアカゼイネートはNaカゼイネートよりもpH6-8.5の間でより粘性である。Naカゼイネートと比較すると、カルシウムカゼイネートは同じ濃度、pHではより低い粘度を示す。その理由は、Ca カゼイネート粒子のCaカゼイネート分散液中での構造と、Naカゼイネート溶液中のNaカゼイネート会合体との間の違いにある。いろいろな製造条件も又、カゼイン/カゼイネートの粘度に影響する。カゼイン製造の前に過剰のミルクへの加熱をすると、あるいは乾燥中カゼインカードの過剰加熱をすると、このカゼインから調製したカゼインネートの粘度は増加する。正常のpH値より低いpHで沈殿させると(例えば3.8)、さらに特に高いpH値(例えば5.05)でも又カゼイネートの粘度は増加し,一方ローラー乾燥のカゼイネートの粘度は又、噴霧乾燥したカゼイネートのそれよりは高い。可溶化したこれまでの共沈殿物はNaカゼイネートより粘度が高い、さらにそれらの粘度はCa濃度が増加するにともなって増加する。低Ca共沈殿物は、酸カゼインのそれに類似の粘度であり、一方中間、および高カルシウム共沈殿物の粘度は、相対的にpHが約7.0以上のときに高い。全ミルクタンパク質の溶液は、Na-カゼイネートとこれまでの共沈殿物のそれらの間の粘度を示す。カゼイネートの粘度は、明らかにSS還元及びSH-阻害剤処理で低下する。しかしながら用いた試薬の為、それらのカゼイネートは食品産業でちょっと興味が抱かれるだろう。

コンパクトな球状構造系のため、未変性ホエータンパク質溶液は、カゼイネート溶液よりずっと粘度は低い。それらは最少の粘度を等電点(pH4.5)付近で示し、水に関してそれらの粘度は30-65℃で低下し、タンパク質変性により増加する。85℃以上でさらなる粘度上昇が,タンパク質会合結果で見られる。加熱変性ホエータンパク質は、その二次構造の殆どは保持するが、共に結合して、変性と測定中の状況により、天然の球状タンパク質の普通に見られるホエータンパク質では1gタンパク質当たり0.2gの水なのに比べて、タンパク質1g当たり10g以上の水を受け取ることができる。

25-40%の全固形物範囲のホエー濃縮物粘度は,強くホエーの成分と加熱前処理に依存する。更に食品加工では、タンパク質溶液はしばしば高程度の剪断と極端な温度にさらされる。変性したホエータンパク質の分散に働く剪断は,大きな会合体を破壊し、粘度の低下になる。

乳化--起泡

可溶性カゼイネートは、会合カゼインよりも乳化力がずっと大きく、会合カゼインはより高い粘度をもつ乳化物を与える。一般にカゼイネートは、ホエータンパク質濃縮物よりもはるかに乳化的性質が大きく、それは多分露出された疎水性と親水性域間のより好ましいバランスのためであり、それらに界面活性剤の様な性質を与える。乳化の間、カゼイネートはホエイタンパク質濃縮物とは全く違う様に働く。乳化物形成の間、カゼイネートタンパク質は新しい表面が形成される際バルク相から吸収され続けるが、一方ホエータンパク質濃縮物では、バルク溶液からのさらに新たに吸着して表面を形成するより優先して、既に吸収されているタンパク質が、表面上に広がり、あるいはほどけて広がる。最も相関的要因でホエータンパク質の乳化力に影響するものは、タンパク質濃度、タンパク質溶解性、pH、塩、他の溶質の存在、温度である。ホエータンパク質濃縮物系中のオイルの均質化は、ホエータンパク質濃度が10倍まで増加する時に油滴サイズを低下する。ホエータンパク質のオイル/水乳化を安定化する力は、特に水相のイオン強度、pHにより影響されるようだ。明らかに等電点付近での静電気的相互作用は、タンパク質会合に関係あり、その結果、タンパク質は柔軟性が弱く、そこでしっかりした界面膜を作りにくくなる。乳化プロセスの際(pIの外側)、塩の存在はその構造と溶解性に影響する事で恐らくホエータンパク質の乳化活性に影響を与えるであろう。温度は別の要因でホエータンパク質の乳化力に影響する。特に、新たにできた表面に拡散するスピードは吸着と解散のスピード同様、温度増加にともなって増加する。

泡はコロイドシステムと定義でき、そこでは空気泡が水連続相に分散している。タンパク質ベースの泡の形成に対する不可欠なものは、タンパク質の空気--水界面への素早い拡散であり、それは表面張力を低下し、続いてタンパク質の部分的ほぐれによる。最も重要なタンパク質の起泡性は、泡容積(%オーバーラン)と泡安定性である。最適タンパク質濃度とホイッピングタイムでは、NaCaカゼイネート両方はホエータンパク質濃縮物より高いオーバーランを与えた。Southward Goldman (1978)は、Naカゼイネートは僅かに卵アルブミンより低いオーバーラン値を示したがしかしNaカゼイネートの泡は安定性がわずかに低かったと報告した。安定性は砂糖添加で増加した。工業的に調製されたホエータンパク質製品のホイッピング性は幾つかのファクターで影響される。最もそれらに関係のあるものは:ホエータンパク質の濃度と状態、pH、イオン状況、加熱(前--)処理と脂質の影響。ホエータンパク質濃度が増加するに連れて、泡は濃くなり、より均一で細かなテクスチュアを与える空気泡になる。一般にオーバーラン(泡容積マイナス初期溶液容積)はタンパク質濃度で大きくなり、最大値になったあと再び低下する。実際には、カゼインは非常に良い乳化材で、簡単に起泡するが一方、できた泡は安定性が非常に低い。2つの泡の巨視的過程は、タンパク質安定化泡の安定性、ラメラからの液体排水スピード、及びフィルム破裂に影響する。これら2つの過程のスピードは、タンパク質膜の物理的性質とラメラ自体の物理性に基づくものである。Cayot and Lorient (1997) は、又泡安定性の改良が密着膜形成のタンパク質の能力に関係する事を示した。タンパク質のポリペプチド鎖の柔軟性は、泡生成に不可欠であるが、逆に泡安定性には悪い効果である。事実、泡をうまくたて、泡を安定化するため、タンパク質にとり、空気/水界面で柔軟性と堅牢さの適当なバランスを示す事が大切である。

Southward and Goldman (1978)は、可溶性の高--、及び中--Ca共沈殿物両方が良い乳化--安定化の性質を示す事を見出した。可溶性酸共沈殿物は、調べた共沈殿のものの内でも最も低い安定能をもち、しかしそれは市販のNa-カゼイネートとはうまく比較できた。更に、全ての共沈殿物はそれだけで泡だてた時、あるいは砂糖と泡立てた時、相当するNa-カゼイネートの泡よりも大きな泡容積と安定性を示した。

グルテンフリー食品への乳成分の応用

グルテンの置換は、大きな技術的な挑戦であるが、グルテンは不可欠な構造形成タンパク質であり、多くの焼き物製品の、みてくれや、クラム構造に寄与するためである。非常に多くの研究技術が基本的なメカニカル/レオロジカルなグルテンの性質の理解に開発され、そこには小、大の変形試験、温度、繰り返しスイープ、泡膨張、顕微鏡、更にそれ以上ある。グルテンフリー焼き物製品のレオロジーに関する研究が最近行われ、この分野は素早く進んだ。長年にわたって、多くのプロジェクトはグルテン置換よりむしろ乳製品による小麦粉の強化/供給のために行われて来た。他成分(この本の他章でレビューされる)もグルテンに置き換えに用いられるが、そこにはデンプン、ガム、ハイドロコロイドが食物繊維同様に含まれる。

2−3年前までは信じられなかったが、それらの性質のためミルクタンパク質がベーカリー製品中グルテン代替えに用いる事ができたことである。しかしながら、栄養的供給、それらの機能的効果としての利用は受け入れられてきた。栄養的価値はCa、タンパク質含量の増加を含み、不可欠アミノ酸供給も同様に含む(例えばリジン、メチオニン、トリプトファン)。最近グルテンフリーパン仕込みに乳製品の添加が一般的な事として行われてきたが、水分吸収増加とバッターのハンドリング性質の強化目的で有る。更に栄養的価値及び水吸収増加に加えて、老化速度の低下、クラスト色の増加が多少乳製品の製パン性における長所である。

Gallagher et al., (2003b) はグルテンフリーパン仕込みに7種の乳粉を応用した。一般に高タンパク質/低ラクトース含量(例えばNaカゼイネートと分離ミルクタンパク質)の粉を添加すると、しっかりしたクラムテクスチュアと同様パンでは全体的な形、容積に改良が起こった。パンは又、良好な概観(白いクラム、褐色のクラスト)と官能的に点数の高いものであった。粉と添加物レベルによってパン容積の相違が観察された。乳粉の含有はパン容積を約6%まで減らし、これまでのデーターをはっきりさせた、しかしながら甘いホエー、Naカゼイネート、ミルクタンパク質分離物の含有レベルを挙げると、パン容積は増加した。反対の効果は認められたのは、脱塩ホエー、フレッシュミルク固形物、スキムミルク粉を用いた時である。全体的にこの仕事は、乳製品の応用がパン容積への悪い効果は別として、コントロール仕込みよりもパネリストにアピールする製品を与えることができることを明らかにした。

RSM (応答曲面法)が、最近最適の乾燥ミルクとホエータンパク質濃縮物のグルテンフリーパン仕込みの決定を得るために用いられた。7.5%大豆粉、7.8%乾燥ミルクをこれまで進めて来た仕込みに添加すると、タンパク質含量1から7.3%に増加し、僅かだが結果としてパンへ官能品質を修飾した。米粉、ポテトデンプン、脱脂ミルク粉を含むグルテンフリーパン仕込み中、RSMで最適量の水、ハイドロプロピルメチルセルロース(HPMC)量が用いられた。

ベーカリーおよびグルテンフリー製品に乳成分を用いるもう一つの重要な意義は、シェルフライフを伸ばす点である。Gallagher et al., (2003b) は、ミルク粉添加がグルテンフリーパンの中間期、長期のシェルフライフへの老化プロフィールの仕込みをテストするために一定の変更された大気下に放置して評価した。彼らは分離したミルクタンパク質添加で、パン容積を増やし、見てくれのよい、しかも受け入れられるパンを作り、最終的には老化速度の変化しないパンを作れることを見出した。最近、Moore et al., (2004) は2レシピーを用いてグルテンフリーパンのテクスチュア研究の仕事をし、その1つは37.5% (乾物) スキンミルク粉を入れたレシピーであった。結果は、市販に利用されているグルテンフリー粉を用いて得たものと、普通の小麦パンで得たものと比較した。ベーキング試験は、コムギパンと市販利用されているミックスとは、はっきりパン容積が大きかったが、一方全てのグルテンフリーパンは2日貯蔵後苦みがあった。しかしながらこれの変化はスキムミルク粉を入れると少なく、このことは乳製品添加でプラスの効果のあることを示した。共鳴レーザー走査型顕微鏡を用いたところ、乳製品ベースのグルテンフリーパンのネットワーク構造に、小麦パンクラムのグルテンネットワークに似たものが含まれていることが示された。

Naカゼイネートと異なるハイドロコロイドとのコンビネーションの効果が最近研究された。そのパン品質への影響のタイプと程度は、用いた特異的ハイドロコロイドとその添加レベルによるものであった。

グルテンフリー穀物製品中の乳製品の取り込みの問題

最近多くのグルテンフリーパンがマーケットにでているが、貧弱な品質とフレーバーであり、多くのものは乾燥してもろいテクスチュアである。グルテンは製パン時の"構造"タンパク質と考えられ、その欠除は時にはベーキング前、ドウよりも液状バッターとなる。多くのグルテンフリー製パンはもろいテクスチュア、色が貧弱で焼いた後の他の品質にも欠点有る。グルテンは泡として広いタンパク質のネットワークを作り、ドウ中での水の移動をゆっくりすすめ、クラム構造を柔らかく保つ。グルテンフリーバッター中では、グルテンがないのでクラムからクラストへの水の移動の増加が起こり、その結果よりかたいクラムと柔らかいクラストになる。グルテンフリーパンの更に問題点は、クラスト色がより明るくなることである。

最近乳粉の混入がクラスト色を暗くするのが、多分メーラード褐変とカラメル化反応によるためであろうと示された。しかしながら殆ど各ミルク区分はパン容積を憂鬱にするものだが、 ここで重要な事は乳成分の適当量を決める事であり、それが色を濃くするが最終のパンの容積を減らす事無く色を濃くできる。

グルテンフリー仕込みで乳製品をベースに改良する時、考慮せねばならない重要な面は、粉中の乳糖含量である。セリアック病の人々は、乳糖不耐性であると報告されていて、そのため高乳糖含量の製品は彼らにとって適していないが、それは絨毛で作られるラクターゼ酵素が無いためであり、グルテンフリー仕込みに関与するもう一つの問題は、選択されたデンプン源である。いろいろな乳製品のタイプの如何に関係なくグルテンフリーレシピーに用いられるデンプンは、小麦デンプンである。それらには当然グルテン、グリアジンを含まない。しかしグリアジンを完全に除去するのは非常に難しく、アレルゲンタンパク質の僅かな量は残るであろう。グルテンフリー食品中のグルテン含量穀物の検出方法は進んでいるので、選ばれたデンプンのグルテンフリーの状態もチェックされるべきであろう。

これからの方向

現在信じられている事は、遭遇する障害はあるだろうが、グルテンフリーパンのレオロジー、あるいは官能的性質にマイナスの影響を与えることなく、グルテンを(1種あるいはそれ以上)の機能性乳製品に完全に置き換える事は可能であろうということである。現在、ガム、ハイドロコロイド、乳タンパク質製品の混合が、最も人気のある方法である。グルテンフリー粉、分離大豆タンパク質の混合物に、ガム類(ローカストビン、グア、コンニャク、キサンタン、HPMC)と食物繊維の組み合わせ、更に機能的乳製品を加えて、次世代グルテンフリーパンの存在として期待されている。

最近の研究目的は、完全にグルテンを機能性カゼインベース成分で置き換える事である。この研究の原理は、Ca濃度をカゼイン/カゼインネート成分の最適レベルまで上げ、正しいpH、イオン強度条件下にすることで、小麦ドウ中の高度に機能的(共有)S-S結合をカルシウム(コージネーション、調整)結合にうまく置換することが可能となるというものである。