農業は食料を生産するだけでなく、国土の自然環境と景観を維持していることを忘れてはならない。

 わが国の農業はコメ作りが中心で、耕地の半分は水田である。この水田が集中豪雨、台風や旱魃の被害を緩和してくれる。梅雨と台風のシーズンに集中して降る豪雨の遊水池になり、その湛水量は全国の治水ダムの総貯水量の3分の1にもなる。そして水田から蒸発する多量の水は酷暑を和らげるクーラーの役目をする。また、河川につながっている水田は魚類の稚魚や水生昆虫の住処である。水田から収穫されるコメの年産額は2兆円であるが,稲作が洪水防止、水資源涵養に果たす役割は5兆円にもなると評価できる。

 農作物は昼間、二酸化炭素を吸収して光合成を行うので、1ヘクタールの耕地当たり年間15トンの二酸化炭素を吸収する。全国500万ヘクタールで農業を続ければ7500万トンの二酸化炭素を吸収できる。全国の家庭から排出される二酸化炭素の約半分が吸収できるのである。また、耕作地には1ヘクタール当たり5トンのたい肥が鋤き込まれるから、500万ヘクタールの農地は2500万トンの有機質ごみの処理施設になっている。傾斜の激しい中山間地の畑では耕作を中止すると土壌浸食が激しくなり、土壌の流出や地滑りが起きる。

 黄金波打つ広い田圃や耕して山頂に至る千枚棚田の美しい景観は都会暮らしの私たちに大きな安らぎを与えてくれる。とくに、中山間地には日本の農地の4割が点在し、115万戸の農家が家業として耕作を続けている。そこで生産される農産物は全国の3割に過ぎないが、これら小規模農家こそが日本の自然景観と昔ながらの民俗習慣を守っているのである。このような農村の社会価値は金額で計算すれば3兆円にもなるという。

 高度経済成長を済ませ、持続可能な経済社会に転換しようとしているわが国にとっては、農業と農村が果たすこれらの社会価値は大切にしなければならないものである。

 長らく愛読していただきました農業問題に関する講話はこれで終わり、次回から食の安全、安心の話題を提供します。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンボ

  さん

里山と中山間地の田んぼ 私の故郷は盆地ですので、よく見られる光景で
ノスタルジアを感じさせられます。
確かに、景観としては素晴らしいのですが、住むには快適とは言えません。
親は里山に住んでいますが、その子供さんは町に住んでいます。
里山に住んでいては、"嫁”のきてがないし、病気になっても病院も近くにあ
りませんから・・・

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ぴー

  さん

農業は食を豊かにするだけでなく、食料自給率への貢献だけでもなく、環境にも大きく影響しているのですね。
大切に食べていきたいと思うとともに、
農家を営んでいる皆様に感謝します。

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トーテム

  さん

農業が減ってくるとさまざまな弊害が起こるのですね。

農業は儲かる!といった世の中の傾向になればもう一度農業も盛り上がってくれるのでしょうね。

安い外国産に負けないような施策がなにかできればなぁ。

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Shozzy

  さん

水田は人工物なのにどこか安らぐところがありますね。あまり田んぼとは縁が無い場所で暮らしてきましたが、日本人の意識として刷り込まれているんだと思います。

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RYU

  さん

農業は、、色々な効果があるのですね。。

将来的には、

日本で農家をしていく方がまた増えていくよに
国で対策をしてほしいですね。。

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オサム

  さん

田園風景や棚田を自然環境と見るかは
意見が分かれるかもしれませんが
日本人の原風景というとらえ方はありますね。
バリ島の棚田の風景が
どこか懐かしさを感じさせるのも
そういう理由からだと思います。
 
うまく先端科学技術と融合して、
エコな機械化で生産性が高まれば
残していけるかもしれません。

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