和食には漬物が付きものである。もともと、漬物は野菜や果物を塩漬けにして保存したことから始まった。平安時代に編集された「延喜式」には瓜、茄子、大根などの野菜、なずな、わらび、あざみ、芹、蕗などの山菜の漬物が記載されている。塩漬だけではなく未醬漬、粕漬もすでに作られている。鎌倉時代から室町時代にかけて精進料理、本膳料理、懐石料理が発達するに伴い、漬物は料理の口直しをする「香の物」として日本料理に欠かせない1品になった。

江戸では白米を常食していたから多量に出る米糠を使って糠漬けが生まれた。米糠と塩、水をよく練り合わせた糠床が乳酸菌で発酵すると、ほどよい酸味とさわやかな香りを生じ、ビタミンも豊富になる。胡瓜や茄子の糠味噌漬けは家庭で漬けたが、干し大根を塩と糠で数か月漬ける沢庵漬けは近郊の農家が漬けたのを購入した。沢庵漬けは1本がもりそば1杯と同じ16文であった。大根を米麹で漬ける甘いべったら漬はえびす講の前夜に開かれる漬物市で売り始めるのが恒例になっていた。梅干しは鎌倉時代から利用されてきたが、赤紫蘇を使って赤く着色するのは江戸時代に始まったことである

漬物は元来、季節の野菜を保存しておくために家庭で漬けるものであったが、今では市販されているのを買うことが多い。近年は消費者の健康志向が強いから塩分の多い梅干し、たくあん、白菜漬けなどは嫌われているが、塩分を23%に減らした漬物は保存が効かない。塩分の少ない一夜漬けや浅漬けは新鮮な野菜の風味が残っているので和風サラダ感覚で食べられるようである

近年はパン食が広がり、ご飯を食べることが減ったために漬物の出番は減っている。600種類はあると言われている漬物の年間出荷量は20年前より30万トンも減少して80万トンになった。浅漬け、調味液漬けやキムチが増えて全生産量の4割を占め、かつて漬物の代表格であったたくあん は1割ほどに減った。調味液漬けのヒット商品,「きゅうりのキューちゃん」は年間7000万袋も売れたことがある。白菜をトウガラシ、ニンニクなど薬味を加えて漬けるキムチは朝鮮半島の漬物であるが、日本で売られているのは発酵させずに調味液に漬けたものが多い。欧米風の酢漬けのピクルス、オリーブの塩漬け、発酵キャベツなどの消費はまだ少ない。