3-1.豊かな食生活が化石エネルギーを浪費している

 食料の無駄使いだけでなく、食料の調達にも化石燃料が浪費されている。化石燃料や天然資源の節減が世界規模の課題になったのは、1972年に世界的なシンクタンク、ローマクラブが「成長の限界」という報告書を発表して、人口増加、資源の浪費、環境破壊がこのまま続けば、百年以内に人類の成長は限界に達すると警告してからである。我が国では、それに歩調を合わせたように昭和48年(1973年)に起きた第一次石油危機がきっかけになり、産業界での省エネルギー、省資源への取り組みが始まった。

 食料の生産、輸送に伴う化石燃料の無駄遣いが問題になったのはこのころからである。日本では多量の食料を海外から輸入しているから、その長距離輸送に使う石油燃料が莫大な量になる。海外から日本に輸入する食料の重量、5800万トンにその輸送距離を掛け合わせて集計した「フードマイレージ」は5000億トン・キロメートルになる。アメリカは食料が国内で自給できるので海外からの輸入は少なく、フードマイレージは日本の3分の1で済む。フードマイレージが大きいということは、食料の輸送に化石燃料エネルギーが多く必要だということを意味する。国民一人当たりで較べてみると、日本はアメリカの8倍もの化石燃料を使って食料を輸入しているのである。     

 海外からの食料輸入には航空機、船舶、トラックなどを状況に応じて使うので、消費する石油燃料を正確に計算するのは難しいが、少なく見積もれば年間で600万トン、多めにみると3000万トンであると推計できる。すると、排出される二酸化炭素は1800万トンから9000万トンになる。これは全国の家庭から1年間に排出される二酸化炭素、1億9千万トンの1割、多めにみれば5割に相当する。食料がすべて国産であれば、この半分で済む。                        

 昔は食べ物を通じて季節の移り変わりが感じられたのであるが,今ではそのようなことは少なくなり,季節や地域に関係なく年中いつでも同じものが食べられる。特に野菜類は ハウス栽培と長距離輸送によって年間を通じていつでも同じものが供給されるようになった。東京都中央卸売市場の季節別取扱量をみてみると、昭和40年ごろまではどの野菜も旬の季節の入荷が多かったのに,今では年中平均して入荷するようになり,それも、北海道や九州,四国など遠隔地から出荷されてきたものが過半数を占めるようになっている。だから、鹿児島県のスーパーで長野県産の高原レタスが売られていても、だれも不思議に思わない。遠距離トラック輸送による化石燃料の消費は大きく、例をあげるなら高知県産の農産物をトラックで神戸中央卸売市場に運ぶのは、輸送距離が4倍もある中国の山東省で採れた農産物を神戸まで船で運ぶのと消費燃料は同じである。また、オーストラリアからアスパラガスを5本、約100グラムを輸入すると453ミリリットルの石油が消費されるから、アスパラガスが石油漬けになって送られてくるようなものである。