1.1日に摂取る農薬と食品添加物

食品中に残留する可能性がある化学物質は、農薬、食品添加物のほかに、畜産や養魚用に使用する飼料添加物や動物用医薬品がある。 近年では家畜を狭い場所に集めて飼育し、濃厚飼料を与えて短期間で肥育するのが普通であり、漁業でも狭い生簀の中での密集養殖が行われる。 家畜や魚の生態を無視したこのような飼育環境では、家畜や魚はストレスが増え病気に罹りやすくなる。 そこで、抗生物質や抗菌剤、駆虫剤を使用し、また肥育を促進するために合成ホルモン剤を使用する。 それが畜肉や魚肉、牛乳、卵などに一部残留して、消費者の健康を脅かすことになる。

もちろん、化学合成農薬や除草剤、飼料添加薬品、食品添加物などは使わずに済むのであれば使わないのがよい。 しかし、わずか435万ヘクタールの農地と136万人の農業者、18万人の漁労者で1億2400万人の食料を賄うには使わざるを得ないのである。 農薬、除草剤を使う機械化農業、多頭飼育による畜産業、養殖漁業でなければ、日本の食料生産は労力的にも、経済的にも成り立たない。 大量に流通、消費されている便利な加工食品の衛生状態を守り、品質を保証するには食品添加物の使用が不可欠なのである。 しかし、そのことが都市に住み、スーパーやコンビニで日々の食べ物を購入している消費者には理解されていない。

もとより、農薬や食品添加物は農作物に散布したり、加工食品に添加するものだから,当然私たちが毎日、口にすることになる。現在では、全国各地から、そして海外から運ばれてくる食材や食品、名前も知らぬ食品会社が製造した加工食品や総菜、弁当などを食べている。しかも、家庭で調理をすることが少なくなり、外食店を利用することが増えている。いわば、見知らぬ生産者の作ったものを食べることが多くなっているから、農薬が残留していないか、危険な食品添加物が使われていないか、と心配をしなくてはならない。 そこで、農薬や食品添加物、飼料添加薬剤などは厳重な安全性試験をパスしたものを、使用時期、使用量などを制限して使用するように安全使用基準や残留基準が定められていて、違反した生産者、加工業者を摘発する検査制度も整備されている。

国立医薬品食品衛生研究所では、日本人の残留農薬や食品添加物の摂取実態をマーケットバスケット方式で調査している。 食事の献立にしたがって食材をマーケットで購入して、食材ごとに1人1日あたりの平均摂食量を秤り採り、そこに含まれている残留農薬や食品添加物を分析するのである。 20年前、平成12年度に調査した結果によると、私たちは1日に天然にはない化学合成の食品添加物を37種類、合計33ミリグラム摂取していたが、そのうちの29ミリグラムはソルビン酸とプロピレングリコールであった。 プロピレングリコールは生麺、ギョウザの皮などの乾燥を防ぐのに使われ、ソルビン酸はかまぼこ、ちくわ、ハム、ソーセージ、佃煮などの腐敗を防ぐ保存料として広く使用されている。 しかし、その摂取量を体重58キログラムの成人の1日摂取許容量(ADI)と比較してみると、プロピレングリコールは摂取許容量の0.7%、ソルビン酸は1.2%を食べているに過ぎず、その他の合成添加物はそれよりずっと少ない摂取量であるから健康危害はないと考えてよい。 また。 1日の食事で体内に入る農薬は17種類が検出されたが、その摂取量はどの農薬もせいぜい数マイクログラムであり、それぞれの1日許容摂取量(ADI)に比べて多いものでも5%、大多数は0.5%以下の摂取であった。 マイクログラムとは百万分の1グラムのことである。 ここれらの調査結果をみる限り、日本人が1日の食事で摂取することになる農薬と食品添加物はごく僅かであり、過度に心配することは要らないといえる。