立春も過ぎ、少しばかり寒さも緩み穏やかな日々が続いています。
さて、立春の前日は"節分"(季節を分けることを意味する)でしたね。
季節の変わり目には邪気が入りやすい(鬼が生じる)とのことで、それを追い払うために豆まきを行ないます。
この他にも、節分にはイワシの頭とヒイラギを戸口に挿す、年の数だけ豆を食べる、イワシを食べる、恵方巻きを食べるなどの風習があります。
さらに、山口県では"クジラを食べる"という風習があります。これは、大きいクジラにあやかり"志を大きく"とか"大きく成長するように"という願いが込められているようです。
《クジラとの関わり》
島国である日本は、昔から海に食資源を求めてきました。その一つにクジラがあげられ、鯨食文化は日本の食文化の一つとして位置付けられるものです。
クジラは、"一頭捕れば七郷潤う"と言われるほど大きな恵みをもたらし、肉だけでなく内臓や油、皮や骨に至るまで余さず利用することで感謝の念を表わしてきました。
山口県は、近世期の捕鯨基地であった長門と、南氷洋の近代捕鯨地として栄えた下関があり、古くからクジラ料理が定着し、行事食・郷土料理として伝承されています。
私たちのような"鯨で育った世代(クジラ世代)"には、学校給食での鯨の竜田揚げや鯨カツ、家庭料理での鯨のステーキや鯨の味噌煮、鯨ベーコン、さらしくじらの酢味噌かけなど、忘れられない味として記憶に残っています。
近年は、調査捕鯨で捕獲した鯨肉、国際捕鯨委員会(IWC)管轄外(日本近海)で捕獲した鯨肉、他の捕鯨国から輸入された鯨肉が流通しているようです。
今でも、スーパーの鮮魚コーナーに並んではいるものの、その価格はビックリするもので、希少価値のような存在になり、庶民の食卓から遠のいてしまいました。
そんなクジラですが、節分の日には特設コーナーが設けられ、鯨肉とその加工品がズラリと並びます。まるで"鯨まつり"のようです。
次の写真は、2月3日朝刊に入っていたスーパーの広告(抜粋)です。
《クジラ料理あれこれ》
前年度のゼミで、クジラに関わったことは5月2日のブログで紹介しました。
"新しい鯨肉料理の考案とその嗜好性について"というテーマで鯨肉料理を考案し、官能検査にて評価しました。
ここで、前年度ゼミ生が考案・調理した鯨肉料理(定番含む)の一部を紹介しましょう。
クジラの部位は本皮と赤身肉を用いました。
まずは、本皮を用いた料理です。
定番 酢味噌かけ 定番 味噌煮(赤身でもよい)
炊き込みごはん 中華風和えもの
次は 、赤身肉を用いた料理です。
チンジャオロースー風 ギョーザ(本皮を混ぜてもよい)
三色丼(鯨肉そぼろ) ドライカレー
つくね風(和風ハンバーグ) *器に注目
クジラ(肉・皮)は独特の臭みがあるため、ひと工夫が必要です。
生姜やにんにく・葱などの香味野菜や香辛料・濃厚な調味料を用いて 臭みをカバーしたり、熱湯をかける(特に本皮)、酒で下味をするなどの下処理を すれば臭みが抑えられます。
定番料理でもある味噌煮や酢味噌かけのように味噌との相性が良く、ポン酢など柑橘の香りと酸味とも よく合います。
さて、紹介した料理に用いた和食器(*印および洋食器除く)は、全て"うつわ"という器屋さん(1月4日ブログで紹介)で購入したものです。
*印の器は、私が作った萩焼の器です。 前年度の研修旅行(2年生)で、津和野・萩方面に出かけた折に、萩焼体験が組み入れてありました。
私が、"どこから見ても形が違う(法則性がない)器づくり"に熱中していた時、"あっ~!先生、遊んでる~"という学生の声が...。そこは、"芸術を理解してほしい!"と言って切り抜けたものの、鯨肉料理のつくね風を盛り付ける段階においても、"え~っ! これに盛るんですかっ?"と、またもや芸術を理解していない言葉が...。
しかし、どうでしょう。 何も言わなければそれなりに見えませんか...?(笑)
《おわりに...そして 次へのつなぎ》
鯨肉料理の考案をしていると、無性に食べたくなってきたものです。やはり、クジラ世代だからなのでしょう。ゼミ生が考案・調理した料理は、ゼミ生の親世代(同じクジラ世代)には受け入れられたようです。
学生の中には、"鯨肉特有の臭いが気になる"人もいました。それは、食体験がないからだと思っていると、意外にも、学校給食で鯨肉の竜田揚げを食べたという学生が多かったのです。(ゼミの一環で実施した「鯨肉に関するアンケート調査」結果より)
学校給食での食体験は、調査捕鯨の鯨肉(調査副産物として)の流通が、公益用、市販用、加工用に分けられ、公益用の中に学校給食枠が含まれているからだと考えられます。(公益用は、地方自治体、啓蒙活動用、医療用なども含まれます。)
また、調査副産物は公的な性格を持つことから、販売価格が調整され、販売によって得られる取得金は翌年度の鯨類捕獲調査費用に充当されるとのことです。
このように、鯨肉料理の考案を通してクジラについて様々なことを学びました。
よって、次回はクジラの続編を考えています。
ヒラリン
さんコメントありがとうございます。
結局は、くじらにハマっておられるご様子ですね。
昔は、“酢味噌かけ”は、魚の刺身に替わるほどの存在でしたよ。
私の職場には、赤い鯨ベーコンが懐かしいという世代が多くいます。硬い?(なかなか噛み切れない)のだけれど、脂があって、また食べてみたくなる味なのです。
ヒラリン
さんコメントありがとうございます。
クジラ料理を懐かしく思う人が増え、感激です。
食習慣と言うのは、やはり大切なものですね。
“何が食べたいか?”は、やはり、その人の食歴が大きく左右するということですね。
ダンボ
さん日本各地にクジラにまつわる文化・伝説があるようですが、山口では節分にいただくのですね。
クジラの竜田揚げは子供の頃食卓に上ることがありましたが、あまり美味しいと思ったことはありません。たぶん、揚げ過ぎて肉がカスカスになっていたためだと思います。
しかし、お酒を飲める年になってから、生姜醤油で食べた刺身、本皮の酢味噌かけこれはこれは癖になる美味しさです。
iso
さん山口県は、鯨を食べるんですよね。
今では、なぜ鯨を、と思う人が多いかもしれませんが、日常的に鯨を食べていたものです。
昭和の時代、魚屋さんが車で営業し、近所にも来ておられました。車の荷台をのぞくと鮮魚とともに鯨肉がありましたね。
それが普通の時代でしたから、食べられなったことが残念です。
ヒラリン
さんコメントありがとうございます。
今年の節分は、目ざしとおばいけ(さらしくじら)の酢味噌かけを食べました。豆は1月に食べてしまっています。(笑)
実は、私も時々、鯨ベーコンが食べてみたくなるのです。懐かしさもありますが、結構おいしかったと記憶しています。
ヒラリン
さんコメントありがとうございます。
鯨肉料理を食べたことがない…とコメントをされた方が複数あり、ちょっとビックリです。
やはり、山口県だからこそ、学校給食でも提供されているのでしょうね。
ヒラリン
さんコメントありがとうございます。
山口県には、鯨肉料理のフルコースを提供するお店もありますね。
海の生物独特の臭みがあります。海の生物でありながら(魚介類ではなく)肉類として扱うというのも面白いですね。
これからの長い人生の中で、クジラ料理に巡り会うこともきっとあるでしょう。
ヒラリン
さんコメントありがとうございます。
時代が変わると、食材も変化し、食体験も異なってきます。
今の時代に、鯨肉を無理に食べることはないと思いますが、食体験がある者にとっては、やはり懐かしいのです。
食品群においても、今は肉類と表現していますが、昭和の時代までは獣鳥鯨肉類と表現していました。
このようなところにも、変化が生じてきているのです。
ヒラリン
さんコメントありがとうございます。
商業捕鯨が中止されたことにより、鯨肉の流通量が減りました。今は調査捕鯨用の鯨肉(副産物)などが流通していますが、量は少なく、また販売価格が調整されています。ということで、以前のように安価になることはありません。
国際問題もありますが、せめて食文化の伝承はしていきたいものです。
ヒラリン
さんコメントありがとうございます。
クジラは海の生物なので、やはり臭みが気になりますね。
竜田揚げはおいしいですね。酒の肴にも合いますが、ご飯も進みます。
RYU
さんうちに親父(60歳)が、昔給食で
クジラを食べたって言ってました。。
最近も厚く切ったクジラのベーコンが
食べたいって言ってます。。
今年の節分・・・
帰宅が遅くて、、豆まきもしてないし・・
豆も食べてない・・・
mottei
さんくじら料理は食べたことが有りませんが
ブログを読んで、こんなに色々な料理にできることを
びっくりしました。
近くのスーパーでもクジラ祭りをしていたら1度食べてみたいですね
ちろ
さん山口では、節分に鯨を食べるというのは
初めて知りました。
私の地域では、給食に鯨はでてこなかったように思います。
あまり食べた記憶がないので、味もわかりません。。
鯨肉を使った餃子、食べてみたいです。
りんご
さん小さいころ
両親が「昔は食べたんだよ~」といって
鯨料理を夕食にだしてくれたことがありました。
私はなんだか皮が苦手だな~
という印象だったのですが、
三食丼なら食べられそうです!
オサム
さん今は懐かしいクジラの味ですね。
滅多に口にすることは無くなりました。
食文化について外国から文句をつけられるのは
良い気がしませんし、ヒステリックになっている
愛護団体に迎合する気もありませんが、
こんなに高いのにわざわざ食べようとは思いません。
おいしいと感じていたのは
子供のころの思い出にしておきたいものです。
いま食べると期待の方が先に立ち過ぎて
こんなものだったかなと感じてしまう事が多いですね。
K
さん子供の頃は苦手給食の一つであった鯨の竜田揚げでしたが、今は居酒屋でよく注文し美味しく食べています。鯨は大人の味なのかもしれませんね。