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第15回国際蕎麦シンポジウムの報告

国際蕎麦シンポジウム(ISB)という蕎麦学者の国際的蕎麦研究の学問的集いが、国際蕎麦学会(IBRA)の下で1980年以来開催されて来ています。今年7月3日~8日に第15回ISBがポーランドのプワヴィで開催されました。筆者・池田清和はシンポジウム事務局から基調講演を依頼され、出席しました。

元々スロベニアの著名な蕎麦学者イヴァン・クレフト教授(コミック「おいしん坊23巻」に登場する人物です)が、世界の蕎麦学者が集う蕎麦学会IBRAを創設しようと呼びかけ、IBRAの下で国際シンポジウムISBの開催を提唱(1980年)し、爾来3年毎に開催されて来ております。約半世紀におよぶ歴史をもつ国際学会IBRAと国際シンポジウムISBに進展して来ました。この学会では、「蕎麦」という共通文字の下に世界各地から一堂に会して、遺伝学、育種学、栄養学、医学、食文化学などすべての研究領域から考察し合い、「人類の重要な食物である蕎麦の科学」を発展させること願って来ております。

第15回シンポジウム(15ISB)が、上述の通り開催されました。初日7月3日に全体会議が開催され、3つの基調講演が開催されました。

(全1)イヴァン・クレフト教授(スロベニア・リュブリャナ大学教授):

健康と栄養的品質向上を目指した蕎麦の遺伝学・育種学

(全2)池田清和(日本・神戸学院大学名誉教授):

 蕎麦の歴史と、ヒトの健康への貢献

(全3)ニキル クラングー(インド・ウエスト・ヒル大学教授,現IBRA会長)

 国際蕎麦学会の活動報告

全体会議の後、下記の8の各分化会に分かれて報告が続きました。

 (分1)遺伝学および育種学

 (分2)生殖細胞とその資源

 (分3)生化学

 (分4)生理学

 (分5)培養技術

 (分6)医学的品質と栄養学的価値

 (分7)食品加工技術

 (分8)ポスターセッション

筆者の興味を惹いた研究としては次の研究などがあげられる。(1)マテヤ・ゲルム教授(スロベニア・リュブリャナ大学):蕎麦は、異なる環境をどのように応答するか、(2)ダグマル・ヤノブスカ博士(チェコ・穀類研究所):エコ育種学的視点から見る蕎麦遺伝資源の評価、(3) 本田 裕(日本・NARO):日本のNARO(農研機構)のジーンバンクの報告、(4)鈴木達朗(日本・NARO):九州・沖縄農業センターにおける蕎麦の育種、(5)ブランカ・ボンベルガー教授(スロベニア・マリボー高等カレッジ):健康時及び食事制限時における蕎麦食の提言、(6)周美亮(中国,次回IBRA会長):蕎麦ルチンの代謝及び環境変化に対するマルチ-オミックス解析 など

これらの研究は、近未来の蕎麦学発展に大きく寄与すると考えられ、楽しみであります。次回、第16回国際蕎麦シンポジウム(16ISB)は、2026年夏に中国(おそらく北京)で開催されることが、今回のIBRA Meetingで決定しました。

ポーランドは永年シンポジウムの自国での開催を強く希望されていましたが、新型コロナウイルスの蔓延や、ウクライナ戦争のことがあり、当初予定より1年延期してでの開催でした。筆者は、今回の開催を大変うれしく存じ、関係者の1人1人に心からのCONGRATULATIONを申し上げました。ポーランドは、大変美しい国で、特に帰国に訪問できた旧首都クラクフは日本の京都のように伝統に満ちた極めて良い街に思いました。

以上が、第15回国際蕎麦シンポジウムの報告です。

神戸学院大学名誉教授

国際蕎麦学会・名誉編集長 

池田 清和だい

  
  
  
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