セルロース粒を炭化して、食品合成色素の吸着を見たところ8種類のうち、3種類の合成色素の吸着が認められました。

実験は直径 0.4mm、長さ11cmのガラスのカラムにこの炭化セルロース粒を詰めて、カラム法で行ないました。3種類の赤色色素は何れもよく吸着し、炭化セルロース粒1g当り3-5mgの色素が吸着しました。

3種類の赤色色素とはエリスロシン、フロキシン、ローズベンガルです。これらの色素がどのようにしてこの炭化セルロース粒に吸着したのか、そしてなぜセルロース粒を炭化しないと吸着しなかったのかが知りたくなります。


田原さんは、3種類の赤色色素のうちエリスロシンを用いて吸着のメカニズムを調べました。


炭化セルロースカラムをはじめにイオン性物質(NaCl, NaOH, KCl ), 非イオン性物質(エタノール、シュクロース、グルコース)、1分子中に親水基と疎水基の両方を持つ両親媒性物質(ショ糖脂肪酸エステル)の3種類に夫々浸漬し、つづいてエリスロシンを吸着しました。その後水で洗浄しました。

イオン性物質に浸漬した場合、水でカラムから色素は殆ど溶出しました。両親媒性物質の場合も溶出しました。しかし非イオン性物質の場合には水で全く溶出しませんでした。

この事は何を意味しているのでしょうか。

イオン性物質、両親媒性物質で炭化セルロース粒への色素の吸着は阻害されましたが、非イオン製物質の場合、吸着は全く阻害されなかったということです。

そのキサンチン系色素の構造式を眺めると、3種類の色素はいずれも陰イオン性物質です。一方、炭化セルロース粒表面をESCA (Electron spectroscopy for chemical analysis) という機器ではかると、この炭化セルロース粒表面にアミノ基によるNが突出している事がわかりました。この陽性を示すアミノ基にキサンチン系色素の陰性が吸着されたのです。イオン結合です。

ショ糖脂肪酸エステルのうち脂肪酸部位が炭化セルロース類に吸着したのでしょう。その証拠としてこのショ糖脂肪酸エステルの吸着した炭化セルロース粒をソックスレーでエチルエーテル抽出したら、ショ糖脂肪酸エステルはエチルエーテル抽出されたのです。

これは色素が炭化セルロース粒表面に疎水結合で結合した事を示しています。


セルロース粒表面の疎水性は、キサンチン系色素分子の何処に結合するのか?という事です。


キサンチン系色素の構造をよく眺めてみると、この色素は3種類ともいずれもハロゲン元素(I、Br、Cl) が分子内に存在しています。このハロゲン元素は疎水性を示します。


炭化セルロース粒表面の疎水基にこの色素のハロゲンが引き合ったのでしょう。

炭化セルロース粒は、炭化で表面に飛び出したアミノ基から来る陽性と表面の疎水性の2つの性質と、このキサンチン系色素の持つ陰性、疎水性との間で結合したのでしょう。

この田原さんの仕事は、BBB (Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry) 誌に間もなく掲載されます。



つづく

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