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1。外食店や持ち帰り弁当、総菜を利用する

 調理にかける時間と手間を省くため、生鮮食材よりも加工食品、調理済食品を使うことが多くなり、昼食はパン、ファーストフード、弁当、持ち帰り惣菜などで済ますようになった。そして、食事をする楽しみはレストラン、飲食店での外食に求めるようになっている。

 50年前ごろまでは家族揃って家庭外で食事をすることはほとんどなかったが、大阪万博が開かれた昭和45年、外資系のファーストフード・ショップやファミリーレストランが相次いで進出してくると、日曜日にはマイカーで家族ドライブを楽しみ、帰りにファミリーレストランに寄って食事をすることが流行した。高度経済済成長の恩恵を受けて生活に余裕ができ、食事のレジャー化が始まったのはこの頃からである。それから50年経って最近では外食をすることはレジャーでなく日常のこととなり、月に2-3回は家族そろって夕食を外食店で摂ることが珍しくなくなった。20歳代の独身者なら週に2回は外食店を利用している。外食の市場規模は平成9年には29兆円にまで拡大しているのである。

 朝の通学や通勤途中にカフェかコンビニに寄りテイクアウトしたサンドイッチを会社についてから食べ、カップコーヒをすする。昼はコンビニで弁当とお茶を買い職場で食べる。夜は帰り道のスーパーでパック詰めの揚げ物、煮物とサラダを買い、家で冷凍のパックご飯を温め、インスタントみそ汁にお湯を注いで食べる。このように外食ではないが、調理らしい調理をせずに食事をする機会が増えている。家庭の外で食べる外食ではないが、家庭内で調理して食べる内食でもなく、その中間に位置する「中食」が増えて、食事は家庭で用意するものというこれまでの概念が大きく変わってしまった。持ち帰り弁当屋、コンビニ、スーパーなどで販売されている弁当、総菜、調理パン、おにぎり,寿司などの持ち帰り食品はビジネスマンや学生、高齢者などの昼食、夕食に重宝がられている。彼らがよく利用するコンビニの店舗数は平成の時代になると2万店舗から急増して5.7万店舗になった。中食の総売上高も最近の30年で急増して現在6兆円になっている。

 平成23年度の家計調査によると、家庭の食費の12%が中食に使われ、20%が外食に支出されている。両方合わせると32%にもなるが、50年前の昭和40年には家庭で調理して食べるのが普通であったからこの比率は10%であった。今では日常の食事の30%は家庭で調理をしないで食べているわけで、若年単身者なら70%にもなるという。単身世帯では食事を作ってくれる人がいないから、調理済み食品を購入するか、外食店で食べるのが多くなるのである。単身所帯は昭和45年には614万所帯であったが、現在では高齢化が進み、若い人たちが結婚をしたがらなくなったので、1680万世帯に増えている。3世帯に1世帯は単身世帯なのである。   

 生鮮食材を毎日買いに行き、長時間台所に立ち調理をするという家庭での食事つくりは、電気冷蔵庫、冷凍庫、電子レンジの普及と加工食品、特に冷凍食品、レトルト食品を利用することにより著しく軽減された。かくして、食費の42%が加工食品の購入に、32%が中食や外食店の利用に当てられるようになった。食事作りの実に70%が外部に任せられるというようなことは日本の食生活史上はじめてのことである。忙しい現代の生活であり、夫婦そろって職業を持つことが普通になっているのだから、当然の結果かもしれないが、家庭での食事作りが少なくなるのと引き換えに、おふくろの味や食事時の家族の団欒など失ったものも多いのである。家族とは料理をする存在であると言われるように、家庭料理の個別性こそがその家族のアイデンティティを示すのである。何から何まで手作りすることは出来なくなった現代ではあるが、さりとて家庭の食事作りをこれほどまでに人任せにしていてよい訳がない。

 

  
  
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