突然、モチ小麦デンプンの話になります。
"Starch" (ドイツの雑誌)からデンプンに関する当方の論文の纏めを求められました。ここに自分の仕事を思い出しながら書く予定です。

この仕事に関する思いつきやら、話の展開をさせていただき、パン、ケーキ等のベーカリーの研究の一端とさせていただきます。

ウルチデンプンにはα-1,4結合からなるアミロース(30%)とアミロースにα-1,6結合を介してα-1,4結合からなるアミロースの枝の生じたアミロペクチン(70%)からなります。モチデンプンはアミロペクチンのみからなっており、普段我々が食べる米、パン、麺などは全てウルチデンプンですね。

穀物はウルチ、モチデンプン両方あるのが普通ですが、最近まで小麦にはモチはありませんでした。

小麦の場合、ゲノムの関係から、その組み合わせが複雑(六倍体作物)で、パン小麦に
はA, B, Dの3種類のゲノムのセットがあり、何れもアミロースを作る遺伝子(同祖遺伝子)があり、各セットの中には存在するものだから、天然界ではたまたまそれが外れた(遺伝子の変異したもの)組み合わせの小麦は確立が低くて、モチは自然界にはなかったのです。

一粒系小麦(AAゲノム)、くさび小麦(BBゲノム)、その二者の合体、二粒系小麦(AA, BBゲノム)これはパスタ用デュラム小麦、 そして更にタルホ小麦(DDゲノム)が天然界にあり、その三者が合体してパンコムギ(AA,BB,DDゲノム)となり、何れのゲノムにもアミロース合成酵素を作る遺伝子欠損があるが、3者の中全て同時になくなるケースという確立が極めて低く、そのために天然界にはモチなかったというわけです。
 
これを日本の研究者が、この遺伝子に劣性突然変異をさせモチ性とし、しかも3つの遺伝
子ABDで全て同時に起こさせて、モチコムギを作ったのです。

こうして生まれたもち小麦がアメリアのAACC大会で山守 誠先生により発表された時、
小生もその場面にいて、研究者たちの興奮と、彼に対する賞讃の雰囲気を感じ、アメリカ
の学会はいいなと思いました。

そのきっかけは、やはりオーストラリア産の小麦で色が白くて、ねばり気のあるうどん用コムギASWが生まれ、日本のうどん用コムギが蹂躙されかかっている心配からこのようなものが生まれたと言われています。

しかし実際に出来たモチコムギはそれほど効果的はなく、ASWに負けています。失地回復には至っていないというのが現状です。アメリカの研究者などはこのモチコムギをさらに化学修飾を行なって新しい利用面を開拓しようとしています。
アメリカの研究者とはキャンサス州立大学のSeib先生です。Seib先生は温厚ないい先生ですが御高齢です。



彼(山守先生)から後日、モチ小麦のサンプルを少々いただきました。今から10年以上前の話です。



つづく

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