本学に山根教授が来られたとき、旭化成(株)研究所におられた彼は、会社のかわったセルロース食品素材を紹介してくれました。

その中には粒状セルロース、クリーム状セルロースなど面白いものがありました。

何かこれらを製パンに応用ができないものかと興味を抱きました。特にセルロース粒を製パンに入れてみるのが面白そうでした。

しかもセルロース粒は、保存性のきくことが興味深かかったのです。

彼の紹介したセルロース粒には細かなもの、6マイクロメーターから、大きいもの、650マイクロ?ターまでありました。顕微鏡でみると形の違うのもありました。

セルロース粒の作り方にはいろいろある様ですが、強アルカリにセルロースを解かし、溶けたセルロース溶液を小さな穴から酸溶液中に押し出して中和して、もとの固体に戻るという原理です。あとは水洗です。この穴のサイズをいろいろ変化させると、粒サイズがバリアブルになるわけです。

ゼミ生諸君にはグループを作ってもらって、翌年のゼミ生にも担当してもらって、セルロース粒を小麦粉にブレンドした製パン試験を片っ端から行ないました。


その結果、製パン性(パン高、比容積)の結果はバラバラでした。


そのたくさんのデーターを纏めて、そこから何が言えるのかという事です。こうしてまずスクリーニングを行なったのです。


その結果、セルロース粒子サイズと製パン性との間に関係がありました。ある粒子サイズではセルロース粒ブレンド量を増やすと次第に製パン性(パン高、比容積)が低下していきました。別の粒子サイズではブレンド量を増やしても、ある程度までなら製パン性が保持されるという塩梅でした。

これら全体を一枚の紙に整理して書いてみると、傾向のあることがわかりました。10%?20%ほどのブレンド量で、セルロース粒子サイズが細かくなるにつれて製パン性は低下し、ある粒子サイズ(154マイクロメーター)以上になると製パン性は低下せずにコントロール(セルロース未添加)と同じであるというものでした。コントロールが望ましいのです。パンは膨らまないといけません。

セルロース粒は製パン工程の中でかなり激しく撹拌、加圧されますが、粒の破壊は生じませんでした。このセルロース粒は後から分析してわかったのですが、結晶化度が55.2%、重合度199というものでした。一般に結晶化度が50%以上あると粒子は強くて安定です。パンとして食べ、口の中での咀嚼、体の中での激しい蠕動運動など受けても壊れないという事です。

こうしてセルロース粒サイズと製パン性との間に大きな関連のある事がわかり、食品素材としては大いに興味深いものでした。

ここでの大きな発見は、一般にセルロースを小麦粉にブレンドして低カロリーパンを作るとき、なるべくセルロースを細かく砕いて小麦粉にブレンドするのが人情です。そんなことを考えずに実験を行なっていたという事です。これがよかった。


つづく

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